憤慨
1.夏(プロローグ)
聞きなれた調理タイマーが鳴る。揚げたてのフライドポテトから滴る油が今日の暑さに追い討ちをかける。かれこれ一年と続けたファーストフード店のアルバイトも、楽しく働くのも邪魔くさい位に日常の一部になっている。客席で死んだ魚のような目をしながらチーズバーガーを貪り食う名前の一文字も知らぬ他人をぼーっと見つめる日々。洗濯のしすぎで少し色落ちし始めた制服が、きっと何者にもなれない自分にぴったりだと思い少し気に入っている。
大学生になり成人を迎えたからと言って別に何も変化はなかった。これまで通り学校に通い放課後と土日はアルバイトに行くだけ。バイトのない日は家でテレビを見る。恋愛だって人並みにはしているし特に不満もない。湿気た毎日だ。退屈な日々も蚊を殺すように淡々と消化していけば不満を感じることもない。田舎生まれ田舎育ちの自分には慣れたことだ。
暑い。
誰のいたずらなのか知りたくなるほど照りつける太陽。何に不満なのかやたらと横暴で無愛想に去っていくドライブスルーの車たち。親の顔が見たいくらいである。
「斎藤くん、三時で退勤やんな。ゴミ箱だけ替えて上がって!」
「はーい。」
独特の濃い油の匂いに鼻が刺激されることはもうなくなった。ゴミの山に夏の暑さへの苛立ちをぶつけるかの様に袋の中にゴミを押し込み、その無駄とも言える感情とともにゴミ捨て場に投げ入れた。
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