邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜

クロシヲ

第三百四十四話 自己定義

8章 復活儀式


思い返せば、違和感を感じるところはいくらでもあった。

何故、人間の悪性を象徴する貪欲の悪魔にして堕ちた太陽神に施された封印が封印されていても他者に干渉出来るような極緩い封印のみだったのか。
この、封印・・というのは、他の者たちにも当てはまる。
人の尊厳を手玉にとって弄ぶ極悪非道にして最悪の所業を行い、人間を単なる玩具としか考えていなかったロキは、本来ならば盲目たる戦神ヘズを誑かし、ヤドリギの枝でもって殺害したことにより神々に捕縛されて巨岩に息子の腸で縛り付けられ、そこで妻たるシギュンに助けられながらも毒蛇の毒液を浴び続けているはずである。

ロキの言動から察するにロキはニャルラトホテプと親交があったようであった。
ロキが何故ドイツのディートリヒ伝説に由来する神器ブルートガングを所持していたのか、かの剣は誤記によって北欧神話にも登場しているが、それも天の喇叭ギャラルホルンを吹き鳴らし終焉ラグナロクを告げる天の神ヘイムダルの剣ホウズと混同されたがための誤訳としてであり、そうしたもおを含めないならば出典の違うブルートガングとロキに関連する文献、神話情報などは存在しない。
そして、最もおかしいのは、フェンリルを縛る妖精の紐グレイプニルの束縛が緩んでいたことである。
本来ならばフェンリルは世界の終焉たる神々の黄昏ラグナロクまでグレイプニルと重石ギョッル足枷ゲルギャによる戒めとともにつっかえ棒とされたつるぎに刺さらないために口を開け、その口腔から涎を文字どおり濁流のごとく垂れ流していなければならないのである。

人間の欲に狂わされ悪魔へと堕ちた太陽神は、何故哀れなる犠牲者を深淵の奥底へと勾引かし、自らの依り代へと仕立てあげることができたのか?
地の底に封じられ蛇の毒液をその身に浴びる狡智神は、なぜ地上に現出していたのか?
フェンリル、ロキ、そしてアドラメレク、神話という物語の登場人物に課せられた回避しようのない運命、絶対遵守されるはずの神々の物語が、なぜ改変されているのか?

自らの物語。
それは神話という物語から生まれた神々にとって唯一改変することのできないもの。
なぜなら、『自己』の定義がずれてしまうから。
『愛の神』はそれに準ずる物語があるからこそ『愛の神』なのであり、話を改変してしまっては神としての神格や記憶すらもが不鮮明になり、ついには消滅してしまう。

しかし、それをなし得る存在はいたのである。


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