邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜
第三百十九話 墓標
8章 復活儀式
「…………………………………………ここは、元いた場所のようですね」
ジークフリートが死亡したことで周囲の黄金化は既に解除されており、激戦の面影が今も残り、抉れて原型をとどめていない大地や、飛び散った血河、そして、突き立てられた英雄の剣があった。
僅かに吹きすさぶ風を受けながら、シグレはその両の手をゆっくりと握り、そしてゆっくりと開いた。
そしてそれを繰り返し、幾度かの開閉の後に、開いた手のひらを今も地面に突き刺さり直立するバルムンクへと向ける。
シグレが開いた手を握った頃には、立派だがどこか質素な墓が完成していた。
「偉大なる英雄に、敬意と感謝を」
その言葉と同時にシグレはゆっくりとその両の瞳を閉じ、手を合わせ、今は亡き英雄に黙祷した。
数十分続いたその黙祷が終わり、シグレが立ち上がった時には、もう墓と墓石に突き刺さるバルムンクの姿は無く、ただ、そこには荒涼たる平野が地平線の先まで広がっていた。
「さあ、戻りましょうか」
そう言って、シグレは姿を消した。
「違う……違うわ……!こんなものじゃない!こんなまがい物じゃあないのよ!」
暗闇の中で、ヒステリックに喚き散らし、力任せに手にもつレイピアを振るう者が一人。
「私を下したあの男は!私を汚したあの男は!そんなに弱くない!違う!違うのよ!」
血走った目でそう叫びながら、群がる影を叩き斬る。
斬って、斬って、斬って、斬って。
最早声とも呼べぬ咆哮を上げながら、迫る影を切り刻む。
黒く塗りつぶされたレイピアを振るうその手は一秒ごとに加速し、膂力をも増大していく。
今はこれまでで最高の一撃。
次もこれまでで最高の一撃。
レイピアの剣閃はもはや常人なら視認することすら不可能であり、その絶技が尋常ではない訓練と、それを可能にする執念を如実に表していた。
「もっと、もっと、もっと!」
速度が足りない。
全方位から襲いくる影に噛みつかれ、腕を無残に抉り取られる。
その度に回復魔法で無理やり再生しつつ、剣速を上げて影を迎撃する。
至極当然のように肉体の限界は訪れるが、それすらも魔法で無視してさらに剣速を上げる。
狂気の空間での訓練は、終わることなど、なかった。
投稿予約を忘れていました。
すいません……
誤字脱字や作品への意見等ございましたらコメントしていただければ幸いです
(誤字脱字がありましたら、何話かを明記した上で修正点をコメントしていただければ幸いです)
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「…………………………………………ここは、元いた場所のようですね」
ジークフリートが死亡したことで周囲の黄金化は既に解除されており、激戦の面影が今も残り、抉れて原型をとどめていない大地や、飛び散った血河、そして、突き立てられた英雄の剣があった。
僅かに吹きすさぶ風を受けながら、シグレはその両の手をゆっくりと握り、そしてゆっくりと開いた。
そしてそれを繰り返し、幾度かの開閉の後に、開いた手のひらを今も地面に突き刺さり直立するバルムンクへと向ける。
シグレが開いた手を握った頃には、立派だがどこか質素な墓が完成していた。
「偉大なる英雄に、敬意と感謝を」
その言葉と同時にシグレはゆっくりとその両の瞳を閉じ、手を合わせ、今は亡き英雄に黙祷した。
数十分続いたその黙祷が終わり、シグレが立ち上がった時には、もう墓と墓石に突き刺さるバルムンクの姿は無く、ただ、そこには荒涼たる平野が地平線の先まで広がっていた。
「さあ、戻りましょうか」
そう言って、シグレは姿を消した。
「違う……違うわ……!こんなものじゃない!こんなまがい物じゃあないのよ!」
暗闇の中で、ヒステリックに喚き散らし、力任せに手にもつレイピアを振るう者が一人。
「私を下したあの男は!私を汚したあの男は!そんなに弱くない!違う!違うのよ!」
血走った目でそう叫びながら、群がる影を叩き斬る。
斬って、斬って、斬って、斬って。
最早声とも呼べぬ咆哮を上げながら、迫る影を切り刻む。
黒く塗りつぶされたレイピアを振るうその手は一秒ごとに加速し、膂力をも増大していく。
今はこれまでで最高の一撃。
次もこれまでで最高の一撃。
レイピアの剣閃はもはや常人なら視認することすら不可能であり、その絶技が尋常ではない訓練と、それを可能にする執念を如実に表していた。
「もっと、もっと、もっと!」
速度が足りない。
全方位から襲いくる影に噛みつかれ、腕を無残に抉り取られる。
その度に回復魔法で無理やり再生しつつ、剣速を上げて影を迎撃する。
至極当然のように肉体の限界は訪れるが、それすらも魔法で無視してさらに剣速を上げる。
狂気の空間での訓練は、終わることなど、なかった。
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