邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜

クロシヲ

閑話 たった一つの咎と、何百もの善

7章 あゝ神よ


それは、元はただの善良な少年だった。

山の麓ののどかで小さな村の中で、他人に尽くし、村に尽くし、無償奉仕を信条とする。

ただの、と言うには些か行き過ぎたほどの奉仕も行い、皆の幸福を願い、それに自分が貢献することを史上の喜びとしていた。

人を助け、癒し、平等に愛する聖人君子。
見る人を魅了する紅顔の美青年。
知らぬものは無いとまで言われる知恵者。

それが彼だった。

なにか特に理由があった訳では無い。
ただ、苦しむ人を見るのが嫌なだけで、手を差し伸べない自分が嫌で、何より、人の幸福を願っただけ。
それが理由と言うなら理由なのかもしれない。

願わくば全ての人が幸福に生きれますようにと願い、自身もそのために身を粉にして奉仕にいそしんだ。

彼は武人としても才覚を見せ、村を脅かす魔獣を追い払ったり、時には仕留めて無償で村民に肉などを配って周り、年寄りには料理を振舞ったりもした。

そして、破滅の時は近づいてくる。
ある日、彼は村人からの頼みを断った。
それが人を害する頼みだったから。
だが、村人は彼に石を投げつけた。
「なんだよ!俺の幸福のためにやれよ!」と。
彼は言った。それは虚構に過ぎないと、そんなものは本当の幸福ではないと。
しかし、それが村人の耳に届くことはなかった。

それを境に、ぽつぽつと他人を害する頼みが増えてきた。
彼はもちろんその全てを断り、諭そうとした。
しかし意味は無い。
なぜならそれは彼の価値観を押し付けているだけだから。
それは正しいのだろう。
でも、正しいだけだ。
それは間違いなのだろう。
だが、彼にはそれが間違いであるということしかわからない。
そういった歪んだナニカかんじょうが理解できないから、大元がわからないのだ。

だから、彼は疎まれた。

それでも彼は理解できない、性善説を掲げ、周りを説得し続ける。

ある日、彼は魔獣退治の頼みを受け、山の中にいた。
そこは村の宗教では神が住んでいるとされる場所、そのため、警備は厳重であったが、今回は外敵の侵入を許してしまい、その探索に彼は駆り出されていた。

「危ない!」

山の最奥、神を祀る祠の前。
そこで一際大きな魔獣を見つけた彼は、魔獣に自分の剣を投げつけた。

なぜなら、そこには人がいたから。
薬草採取のためにこの山を訪れていた、幼馴染の少女が。

それが、悲劇の始まりだった。


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