異世界でデスゲーム~この世界で神になる~
謎の力
「まずな、お前等が勝つなんて事は万の一つも無いんだよ。この世界はレア度で優劣が決まる。俺の武器はURの天使が元だからな」
余裕を見せ、力も入れずに男性はひたすらに刀を振るった。軽い音と共に繰り出される一方的な斬撃に翼の羽は削がれ、覗かした背中は無惨にも斬られてゆく。
赤い血が飛び散る中で、ララエルは腕に力を入れマスターを押し付けて圧迫しないようにと体制を起こした。
「そんな事は……関係……なッ」
「くねぇんだよ」
綻んだ言葉と共に背中を踏みつけ、再び押し付け、切っ先を頭に突き立てる。
「それに、俺は三枚のカードを重ねがけ出来る。最初から、貴様達に勝ち目はねぇんだ」
「だとしても……せめて、マスターだけでも……」
「あーあ、そーゆのもういいから」
「……あっぐ……」
ララエルの吐息を荒らげ痛みに耐えながらも意思は揺らぐ事無い。だが、変わらない戦況に嫌気がさした男性は、頭を掴むと持ち上げた。
宙に浮かび重心がかかる首は千切れそうな程に痛く痺れる。
顔は歪み、もはや目をぱっちりと開けておく事すら難しい。それでも、ララエルが口にする事は決まっていた。
「私は……私が、マスターを御守りするん……す」
「力も無いお前が守る?馬鹿馬鹿しい。どこの世も、力がある者が権利を握る。財力・知力・権力。全ては力なんだよ」
「それは、貴方の卑屈な考えで、す」
「勘違いするなよ? 今において貴様が俺に口答えする権利はねぇ!!」
頭から手を離し、落ちるララエルの腹を回し蹴りでめり込ませて岩肌に叩きつける。
満身創痍だったララエルにとって防ぎようのない一撃は内臓に多大な負荷を与え、器官からは大量の血が吹き出した。
「グッ……マ、マス……」
剥がれた岩と共に地に崩れ落ち、掠れた視界で見る光景は酷いものだった。
頭から血を流す琉璃、腕があらぬ方向に曲がり気を失っているマスター。
ララエルは、ろくに動かない体を幾度となく体制を崩しながらも足に力を入れて起き上がる。
「ここ、は……私が、絶対」
「はあ、うぜえよ。コイツがそんなに大事か??」
マスターの頭を踏みつけ、泥濘に顔は沈んでゆく。
「貴様!! マスターに、触れるなッ!!」
覚束無なかった足で地を踏みしめる。
無我夢中だった。アドレナリンは一瞬でも痛みを消し去り気が付けば男性を押し飛ばしマスターの前に再び立つ。
男性は、一瞬唖然とした表情と共にララエルの手が触れた鎧を見やるが、すぐ様に顔を崩し嘲笑う。
「じゃあ、お前が先に消えるか?」
悍ましい声と共に今初めてララエルに殺意を向けた。
物凄い圧迫感に生唾は喉を通らない。それに、倒れそうな体を支えるので精一杯だ。
間違いなく死ぬ。でも男性が目の前で、刀を振り上げ感じたのは死ぬ恐怖でも何でもなかった。
「マスター……早く目をお覚ましください……そして逃げてッ」
「と言うか、お前? 中々良いもん身につけてるじゃねえか。
なんだよ、今日は運がついてやがる」
目の前に立つ男は、ララエルの胸元を見てボソッと吐露した。
そして、刀を持つ右とは逆の手で手を突っ込む。
「い、いやっ……」
「あー、うっせ。騒ぐな」
刀の柄でコメカミを殴りつけた。容赦無い打撃に視界は揺れ、今迄蓄積されたダメージが一気に吐き出される。
意識は遠のき、唯一聞こえるのは男性の高笑い。
「カカカっ! なんだよこれはよお?! レア度しか分かんねぇ! 完璧なシークレットじゃねぇか!!」
「やめ、ろ……。それは、マスター……に」
掠れた視界に写る男性の足に手を伸ばし、ララエルは掴む。
「はあ? お前等には勿体ねぇーッて言ってんだよ」
手を蹴り払い、男性は明星ノ一雫を仰ぎ見る。
「それは……私が……マスターに……マスターが……」
「ああ、もういいから。どーせ貴様らは此処で死ぬんだからよ」
無機質な瞳で見下し、刀を振り上げ、風を斬りつつララエルの体目掛けて振り下ろす。
だが、そんな中でララエルが感じていたものは恐怖でも後悔でもなく、強い意志だった。
「それは……。その宝石は……お前が触れていい代物じゃない!!」
ララエルを中心に白銀の渦が吹き荒れる。
男性が顔の前に手を翳し、風を遮る中で起きた変化はララエルだけでは無く手に持った明星ノ一雫もだった。
熱を持ち、青さは増し強く発光する。
「な、なんだ!? 何が起こったと言うんだ?! それに、コレは……」
明星ノ一雫は、自ら男性の手を離れ渦に吸い込まれてゆく。
距離を取り竦然としきった表情で、天高く伸びる渦を見つめ、
「こ、こりゃあ……すげぇ」
次第に渦は中心核であるララエルに収集し始め、莫大な風圧と共に消し飛んだ。
「お前は、私が絶対に許さない。あの宝石はマスターが、私を信じて託してくれた大切な物。
そして、初めてマスターの手で施してくれた掛け替えのないもの」
四枚の真っ白い翼。頭上に展開した、歯車のような天使の輪。額には、宝石が埋め込まれ光っている。
「その双方を愚弄し、剰、奪おうとしたのだ」
桜色をした瞳は、銀色に変わり長く伸びた髪や服は下から舞い上がる覇気により踊る。
怒りを乗せながらも声は冷静を保ち、男性の鼓膜に冷たく突き刺す。
「だが、マスターは無駄な殺しを好まない。だからこそ、一日に討伐する数は四体と決まっていた。……例外は、あったが……。故に選ばせてやる」
宙に浮かび、翼を翻しながら言った。
舞い散る白い翼は、地に落ちる度に優しく光て粒子になり弾けて消える。
そんな中で、男性は肩を揺らす。
「ククク……。選ぶ? 何をだ? 生きるか死ぬかッてか?
馬鹿にするなよ? 傷が癒えて変化をしようがレア度は変わってねぇ。即ち、力は俺が絶対なんだよ」
「そうか。ならば、致し方あるまい」
「嘗めるな、化物が!! 燃え尽きろ!!」
男性は、炎を纏いし長刀を己が体から放出される風に乗せて解き放つ。
だが、ララエルは実に落ち着いていた。
「下らん」
自信の塊とも言える大火をララエルは翼の翻した時生じる風のみで押し返す。
大火は、素直に消えること無く男性に襲いかかり、一瞬の内に火の渦と化した。
「アホだな。己が纏った風に食い荒らされるとは」
「ふざ、けるな。まだ、終わっちゃいねぇえ!!」
纏った風を膨張させ、体に密着していた風を外側へと転換。
火の渦を纏ったまま男性は近づいてくる。
「なら、この森ごと燃やし尽くしてやるぜ。後悔しやがれッ」
「残念だが、それは叶わない」
ララエルは、翼の羽を一枚抜き取ると男性目掛けて息吹と共に飛ばす。
羽は眩く光、閃光を描き渦へと飛翔した。
光の一線が徐々に消え、導火線の如く男性の元に行き着いた頃、風は収まり両膝を付いていた。
「ぐふっ……。まざが、ごんな……」
ララエルの羽は喉に突き刺さり、口からは飛沫が飛び出す。
「貴様は、地に体を付けることさえ許さぬ。宙で散り散りになれ」
風の球体に隔離され、宙に浮かんだ男性は断末魔を響かす事も無く、血の一滴すら雨として降らせる事も無く、粒子になり消えるその時まで鋭利な刃物と化した風の玩具にされていた。
「人間は、実に下らん。此処で眠る奴らもだ。全員、私が殺してやる」
男性を宙に浮かせ、翼の羽を四方に囲う。
「消え──」
「はぁ、はあ、ララ……エルか?」
「な、なんだ貴様! 気安く私の名を」
「良かった、無事で……。ごめんな……俺、もっと強くなるか……」
再び意識を失った男性の細い瞳の奥に見た優しさに、ララエルの頭は激しく痛む。
眉頭に皺を寄せ、自我を保つので精一杯。そんな中で響き繰り返される言葉、それは、
「マス……ターッ……??」
刹那、ララエルの視界は暗転した。
余裕を見せ、力も入れずに男性はひたすらに刀を振るった。軽い音と共に繰り出される一方的な斬撃に翼の羽は削がれ、覗かした背中は無惨にも斬られてゆく。
赤い血が飛び散る中で、ララエルは腕に力を入れマスターを押し付けて圧迫しないようにと体制を起こした。
「そんな事は……関係……なッ」
「くねぇんだよ」
綻んだ言葉と共に背中を踏みつけ、再び押し付け、切っ先を頭に突き立てる。
「それに、俺は三枚のカードを重ねがけ出来る。最初から、貴様達に勝ち目はねぇんだ」
「だとしても……せめて、マスターだけでも……」
「あーあ、そーゆのもういいから」
「……あっぐ……」
ララエルの吐息を荒らげ痛みに耐えながらも意思は揺らぐ事無い。だが、変わらない戦況に嫌気がさした男性は、頭を掴むと持ち上げた。
宙に浮かび重心がかかる首は千切れそうな程に痛く痺れる。
顔は歪み、もはや目をぱっちりと開けておく事すら難しい。それでも、ララエルが口にする事は決まっていた。
「私は……私が、マスターを御守りするん……す」
「力も無いお前が守る?馬鹿馬鹿しい。どこの世も、力がある者が権利を握る。財力・知力・権力。全ては力なんだよ」
「それは、貴方の卑屈な考えで、す」
「勘違いするなよ? 今において貴様が俺に口答えする権利はねぇ!!」
頭から手を離し、落ちるララエルの腹を回し蹴りでめり込ませて岩肌に叩きつける。
満身創痍だったララエルにとって防ぎようのない一撃は内臓に多大な負荷を与え、器官からは大量の血が吹き出した。
「グッ……マ、マス……」
剥がれた岩と共に地に崩れ落ち、掠れた視界で見る光景は酷いものだった。
頭から血を流す琉璃、腕があらぬ方向に曲がり気を失っているマスター。
ララエルは、ろくに動かない体を幾度となく体制を崩しながらも足に力を入れて起き上がる。
「ここ、は……私が、絶対」
「はあ、うぜえよ。コイツがそんなに大事か??」
マスターの頭を踏みつけ、泥濘に顔は沈んでゆく。
「貴様!! マスターに、触れるなッ!!」
覚束無なかった足で地を踏みしめる。
無我夢中だった。アドレナリンは一瞬でも痛みを消し去り気が付けば男性を押し飛ばしマスターの前に再び立つ。
男性は、一瞬唖然とした表情と共にララエルの手が触れた鎧を見やるが、すぐ様に顔を崩し嘲笑う。
「じゃあ、お前が先に消えるか?」
悍ましい声と共に今初めてララエルに殺意を向けた。
物凄い圧迫感に生唾は喉を通らない。それに、倒れそうな体を支えるので精一杯だ。
間違いなく死ぬ。でも男性が目の前で、刀を振り上げ感じたのは死ぬ恐怖でも何でもなかった。
「マスター……早く目をお覚ましください……そして逃げてッ」
「と言うか、お前? 中々良いもん身につけてるじゃねえか。
なんだよ、今日は運がついてやがる」
目の前に立つ男は、ララエルの胸元を見てボソッと吐露した。
そして、刀を持つ右とは逆の手で手を突っ込む。
「い、いやっ……」
「あー、うっせ。騒ぐな」
刀の柄でコメカミを殴りつけた。容赦無い打撃に視界は揺れ、今迄蓄積されたダメージが一気に吐き出される。
意識は遠のき、唯一聞こえるのは男性の高笑い。
「カカカっ! なんだよこれはよお?! レア度しか分かんねぇ! 完璧なシークレットじゃねぇか!!」
「やめ、ろ……。それは、マスター……に」
掠れた視界に写る男性の足に手を伸ばし、ララエルは掴む。
「はあ? お前等には勿体ねぇーッて言ってんだよ」
手を蹴り払い、男性は明星ノ一雫を仰ぎ見る。
「それは……私が……マスターに……マスターが……」
「ああ、もういいから。どーせ貴様らは此処で死ぬんだからよ」
無機質な瞳で見下し、刀を振り上げ、風を斬りつつララエルの体目掛けて振り下ろす。
だが、そんな中でララエルが感じていたものは恐怖でも後悔でもなく、強い意志だった。
「それは……。その宝石は……お前が触れていい代物じゃない!!」
ララエルを中心に白銀の渦が吹き荒れる。
男性が顔の前に手を翳し、風を遮る中で起きた変化はララエルだけでは無く手に持った明星ノ一雫もだった。
熱を持ち、青さは増し強く発光する。
「な、なんだ!? 何が起こったと言うんだ?! それに、コレは……」
明星ノ一雫は、自ら男性の手を離れ渦に吸い込まれてゆく。
距離を取り竦然としきった表情で、天高く伸びる渦を見つめ、
「こ、こりゃあ……すげぇ」
次第に渦は中心核であるララエルに収集し始め、莫大な風圧と共に消し飛んだ。
「お前は、私が絶対に許さない。あの宝石はマスターが、私を信じて託してくれた大切な物。
そして、初めてマスターの手で施してくれた掛け替えのないもの」
四枚の真っ白い翼。頭上に展開した、歯車のような天使の輪。額には、宝石が埋め込まれ光っている。
「その双方を愚弄し、剰、奪おうとしたのだ」
桜色をした瞳は、銀色に変わり長く伸びた髪や服は下から舞い上がる覇気により踊る。
怒りを乗せながらも声は冷静を保ち、男性の鼓膜に冷たく突き刺す。
「だが、マスターは無駄な殺しを好まない。だからこそ、一日に討伐する数は四体と決まっていた。……例外は、あったが……。故に選ばせてやる」
宙に浮かび、翼を翻しながら言った。
舞い散る白い翼は、地に落ちる度に優しく光て粒子になり弾けて消える。
そんな中で、男性は肩を揺らす。
「ククク……。選ぶ? 何をだ? 生きるか死ぬかッてか?
馬鹿にするなよ? 傷が癒えて変化をしようがレア度は変わってねぇ。即ち、力は俺が絶対なんだよ」
「そうか。ならば、致し方あるまい」
「嘗めるな、化物が!! 燃え尽きろ!!」
男性は、炎を纏いし長刀を己が体から放出される風に乗せて解き放つ。
だが、ララエルは実に落ち着いていた。
「下らん」
自信の塊とも言える大火をララエルは翼の翻した時生じる風のみで押し返す。
大火は、素直に消えること無く男性に襲いかかり、一瞬の内に火の渦と化した。
「アホだな。己が纏った風に食い荒らされるとは」
「ふざ、けるな。まだ、終わっちゃいねぇえ!!」
纏った風を膨張させ、体に密着していた風を外側へと転換。
火の渦を纏ったまま男性は近づいてくる。
「なら、この森ごと燃やし尽くしてやるぜ。後悔しやがれッ」
「残念だが、それは叶わない」
ララエルは、翼の羽を一枚抜き取ると男性目掛けて息吹と共に飛ばす。
羽は眩く光、閃光を描き渦へと飛翔した。
光の一線が徐々に消え、導火線の如く男性の元に行き着いた頃、風は収まり両膝を付いていた。
「ぐふっ……。まざが、ごんな……」
ララエルの羽は喉に突き刺さり、口からは飛沫が飛び出す。
「貴様は、地に体を付けることさえ許さぬ。宙で散り散りになれ」
風の球体に隔離され、宙に浮かんだ男性は断末魔を響かす事も無く、血の一滴すら雨として降らせる事も無く、粒子になり消えるその時まで鋭利な刃物と化した風の玩具にされていた。
「人間は、実に下らん。此処で眠る奴らもだ。全員、私が殺してやる」
男性を宙に浮かせ、翼の羽を四方に囲う。
「消え──」
「はぁ、はあ、ララ……エルか?」
「な、なんだ貴様! 気安く私の名を」
「良かった、無事で……。ごめんな……俺、もっと強くなるか……」
再び意識を失った男性の細い瞳の奥に見た優しさに、ララエルの頭は激しく痛む。
眉頭に皺を寄せ、自我を保つので精一杯。そんな中で響き繰り返される言葉、それは、
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