異世界でデスゲーム~この世界で神になる~
不穏
孝介・ララエル・琉璃が森淵の闇・アーテルに向かっている時、同じくしてアーテル内部でも動きがあった。
「いやあ、態態六階層から降りてきたと言うのに何もありゃーしねぇな? お前も思うよな」
日も通さない鬱蒼とした深い森に男性の太い声は響く。
「三枚、カードが装備出来ても行き詰まっちゃあ、意味が無いからなあ……」
深紅の鎧武者と言った装備を纏う男性は、身の丈程もある長刀で生い茂った草を斬りながら道無き道に無理やり路を作りながら歩いていた。
「UR・琥珀ノ真実なんか本当にあんのかよ……」
「汝が踏み入れて良い場所では無い。早々に立ち去れ。然もなくば……喰らう」
荘厳たる、厳つい声。動物が竦み上がり、声だけで畏怖すら感じてしまうだろう。
しかし、男性は表情一つ崩さず。否、怪しく微笑みながら口走る。
「そりゃーいい。貴様をぶっ殺してやる」
****
「しかし不思議だな」
ふと心情を吐露し、膝下にも満たない琉璃を見つめる。
てくてくとリズミカルに、足を運ぶ姿は正に狐だ。
あの後に、煙幕と共に変化をして見せたのだからびっくりせざるを得ない。
「あー、私も猫や犬に化けたいなあ……。羨ましいですねっ」
いや、お前は化けて調子乗って、なりきって、道に迷うか、屋根から落ちるか。
悲劇的な結果が目に見えてるから止めた方が良いかと。
だけれど、それもそれで面白そうだな。
「なっ! マスター!? なんですか? その冷やさな目は!」
ムッとした表情を作り、桜色の瞳はグッと狭まる。
あら、怒ったのかしら。しかし、俺の表情に一々反応するとか、どんだけ見てんだよ。考えたら恥ずかしくなってきたじゃねぇか。
「いや、べつに気にするなっ」
「気にしますよ! そーやっていつも揶揄って楽しいですか!!」
楽しくなきゃやらんでしょ。と言うか、手を引っ張るのやめて下さい。暖かいし、恥ずかしいし、もう純情な心を弄ばないで!!
「し、知らん!」
「あれ、マスター?顔が赤いですよ」
じゃかましい!!
「まあ、そー言うでない。この格好、ういは好かぬのじゃ」
やり取りを無視して、琉璃は琉璃で己が考えを訴える。流石と言うべきか……。
「そーなんです?」
そーや、出逢った時も人の形を模していた。淡々と答える琉璃であったが、なるほど。
そこに琉璃の本質があるのかもしれない。
小首をかしげるララエルが作った間に割って入り問いかけた。
「だから、人の形をしていたのか?」
琉璃は、一度振り向いてから尻尾を二振りし反応を示す。
「ふむ、そーじゃな。人は実に面白い。強欲でありながらも、理性を用いて秩序を守る。一線と言う境界にいつも脅えておる。それが面白い。ういは人の進化や、造るモノが好きなんじゃな……きっと」
堕天使ルシファー、十二枚の翼を持ちし元・大天使ルシフェル。彼にもある説があった。
神は進化をしない。しようともしない。発展を、進展を望まない。そして嘘つきだ。
だが、ルシファーは違ったのだ。彼は進化を求めた、未来を求めた。
故に、天界を捨て、堕ちたとも言われている。人間に知恵の実の真実を齎し。欲望を兼ね備え、最も人に近い者だと。そして、人の味方はルシファーだと。『エル』と言う言葉を失っても尚、天界と戦った堕天使。
琉璃もまた、時が止まった古の森から抜け出し進化を求めた故の結果なのかもしれない。
「なら、これからも一緒に見ていこうぜ。俺もこの世界の事が気になるしな」
「それは、アーテルの件が終わってもッてことかや?」
「ああ! そうだ!」
声は落ち着いているが、尻尾はブンブンと振り回していた。
それが正直愛くるしいとも思えてしまう。
「じ、じゃ! 主らが、ういを連れて行ってくれる代わりに、ういは主らの力になる!」
「等価交換ッてやつだな??」
「うんむ! そうじゃ!」
正直、心は踊っていた。天から舞い降りた天使と、古の種族・白狐の琉璃。
彼女達が仲間に加わり、俺は今正に闇の中へと足を踏み入れているのだ。
これから先、どんな事が待ち構えて居るか分からない。だが、分かることは俺の、俺達の物語は始まったばかりだと言う事だろう。
「じゃあ、これから宜しく頼むぞ! 改めて、ララエルと琉璃」
「はい、マスター。私の忠義は貴方の元にいつまでも……」
「うむうむ。任せておけい!」
お淑やかに優しい笑みで答えるララエル。
リズミカルに前を向き歩きながらも、尻尾で喜びを表現する琉璃だった。
それから暫く歩き、立ち止まると琉璃は緑で隔てられた壁を前に知らせる。
「ここがアーテルじゃ。準備はよいか??」
「おうよ!」
「はいっ!!」
俺達は琉璃に先導され、草を踏みしめながらアーテルの中へと進んだ。
さながら、陰と陽の如く一瞬の内に視界は暗くなった。
ヒンヤリと肌寒い風は肌を刺し、不気味なまでの静寂は鼓膜から嫌な予感を思わせる。
鬱蒼とし連なる木々が『不安』を増大させ、心拍数は跳ね上がっていた。
道なんか見当たらず、歩く場所は常に足元が見えにくい。加えて根が生え、蔦が伸び、踏み場が悪い泥濘。
虫や、鳥の囀りが聞こえない空間にネチャリネチャリと足に纒わり付く泥の音が気味悪く響く。
お化けが出てくるならもってこいのシュチュエーションだ。一人だったら間違いなく入れない。
案外、此処がマッピング更新されてない理由って皆がビビってなんじゃね?
「あのっ、マス──」
「ぎゃぁぁぁ!! ……あ? ッて、なんだララエルか……脅かすなよ」
はぁ、まじビビった。死ぬかと思った。心臓止まったは一瞬。
急に肩を叩くなっつーの。
「マスター、正常を装うなら……まず、その表情を直しましょう……。と言うか、何ですか?その格好は」
「う、うるせい!!」
なんなの! なんで、この方々はこんなにも平常心を保ててるの! 暗いの怖いでしょ!!
だが、まさか本当に『しぇー』のポージングを使う時が来るとは思わなかった。
そんな中、一切触れてこなかった琉璃が感情の無い声で言う。
「しかし変じゃ……。余りにも静かすぎる」
「いやあ、態態六階層から降りてきたと言うのに何もありゃーしねぇな? お前も思うよな」
日も通さない鬱蒼とした深い森に男性の太い声は響く。
「三枚、カードが装備出来ても行き詰まっちゃあ、意味が無いからなあ……」
深紅の鎧武者と言った装備を纏う男性は、身の丈程もある長刀で生い茂った草を斬りながら道無き道に無理やり路を作りながら歩いていた。
「UR・琥珀ノ真実なんか本当にあんのかよ……」
「汝が踏み入れて良い場所では無い。早々に立ち去れ。然もなくば……喰らう」
荘厳たる、厳つい声。動物が竦み上がり、声だけで畏怖すら感じてしまうだろう。
しかし、男性は表情一つ崩さず。否、怪しく微笑みながら口走る。
「そりゃーいい。貴様をぶっ殺してやる」
****
「しかし不思議だな」
ふと心情を吐露し、膝下にも満たない琉璃を見つめる。
てくてくとリズミカルに、足を運ぶ姿は正に狐だ。
あの後に、煙幕と共に変化をして見せたのだからびっくりせざるを得ない。
「あー、私も猫や犬に化けたいなあ……。羨ましいですねっ」
いや、お前は化けて調子乗って、なりきって、道に迷うか、屋根から落ちるか。
悲劇的な結果が目に見えてるから止めた方が良いかと。
だけれど、それもそれで面白そうだな。
「なっ! マスター!? なんですか? その冷やさな目は!」
ムッとした表情を作り、桜色の瞳はグッと狭まる。
あら、怒ったのかしら。しかし、俺の表情に一々反応するとか、どんだけ見てんだよ。考えたら恥ずかしくなってきたじゃねぇか。
「いや、べつに気にするなっ」
「気にしますよ! そーやっていつも揶揄って楽しいですか!!」
楽しくなきゃやらんでしょ。と言うか、手を引っ張るのやめて下さい。暖かいし、恥ずかしいし、もう純情な心を弄ばないで!!
「し、知らん!」
「あれ、マスター?顔が赤いですよ」
じゃかましい!!
「まあ、そー言うでない。この格好、ういは好かぬのじゃ」
やり取りを無視して、琉璃は琉璃で己が考えを訴える。流石と言うべきか……。
「そーなんです?」
そーや、出逢った時も人の形を模していた。淡々と答える琉璃であったが、なるほど。
そこに琉璃の本質があるのかもしれない。
小首をかしげるララエルが作った間に割って入り問いかけた。
「だから、人の形をしていたのか?」
琉璃は、一度振り向いてから尻尾を二振りし反応を示す。
「ふむ、そーじゃな。人は実に面白い。強欲でありながらも、理性を用いて秩序を守る。一線と言う境界にいつも脅えておる。それが面白い。ういは人の進化や、造るモノが好きなんじゃな……きっと」
堕天使ルシファー、十二枚の翼を持ちし元・大天使ルシフェル。彼にもある説があった。
神は進化をしない。しようともしない。発展を、進展を望まない。そして嘘つきだ。
だが、ルシファーは違ったのだ。彼は進化を求めた、未来を求めた。
故に、天界を捨て、堕ちたとも言われている。人間に知恵の実の真実を齎し。欲望を兼ね備え、最も人に近い者だと。そして、人の味方はルシファーだと。『エル』と言う言葉を失っても尚、天界と戦った堕天使。
琉璃もまた、時が止まった古の森から抜け出し進化を求めた故の結果なのかもしれない。
「なら、これからも一緒に見ていこうぜ。俺もこの世界の事が気になるしな」
「それは、アーテルの件が終わってもッてことかや?」
「ああ! そうだ!」
声は落ち着いているが、尻尾はブンブンと振り回していた。
それが正直愛くるしいとも思えてしまう。
「じ、じゃ! 主らが、ういを連れて行ってくれる代わりに、ういは主らの力になる!」
「等価交換ッてやつだな??」
「うんむ! そうじゃ!」
正直、心は踊っていた。天から舞い降りた天使と、古の種族・白狐の琉璃。
彼女達が仲間に加わり、俺は今正に闇の中へと足を踏み入れているのだ。
これから先、どんな事が待ち構えて居るか分からない。だが、分かることは俺の、俺達の物語は始まったばかりだと言う事だろう。
「じゃあ、これから宜しく頼むぞ! 改めて、ララエルと琉璃」
「はい、マスター。私の忠義は貴方の元にいつまでも……」
「うむうむ。任せておけい!」
お淑やかに優しい笑みで答えるララエル。
リズミカルに前を向き歩きながらも、尻尾で喜びを表現する琉璃だった。
それから暫く歩き、立ち止まると琉璃は緑で隔てられた壁を前に知らせる。
「ここがアーテルじゃ。準備はよいか??」
「おうよ!」
「はいっ!!」
俺達は琉璃に先導され、草を踏みしめながらアーテルの中へと進んだ。
さながら、陰と陽の如く一瞬の内に視界は暗くなった。
ヒンヤリと肌寒い風は肌を刺し、不気味なまでの静寂は鼓膜から嫌な予感を思わせる。
鬱蒼とし連なる木々が『不安』を増大させ、心拍数は跳ね上がっていた。
道なんか見当たらず、歩く場所は常に足元が見えにくい。加えて根が生え、蔦が伸び、踏み場が悪い泥濘。
虫や、鳥の囀りが聞こえない空間にネチャリネチャリと足に纒わり付く泥の音が気味悪く響く。
お化けが出てくるならもってこいのシュチュエーションだ。一人だったら間違いなく入れない。
案外、此処がマッピング更新されてない理由って皆がビビってなんじゃね?
「あのっ、マス──」
「ぎゃぁぁぁ!! ……あ? ッて、なんだララエルか……脅かすなよ」
はぁ、まじビビった。死ぬかと思った。心臓止まったは一瞬。
急に肩を叩くなっつーの。
「マスター、正常を装うなら……まず、その表情を直しましょう……。と言うか、何ですか?その格好は」
「う、うるせい!!」
なんなの! なんで、この方々はこんなにも平常心を保ててるの! 暗いの怖いでしょ!!
だが、まさか本当に『しぇー』のポージングを使う時が来るとは思わなかった。
そんな中、一切触れてこなかった琉璃が感情の無い声で言う。
「しかし変じゃ……。余りにも静かすぎる」
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