異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

61話 1ヶ月後

海斗が塔のアルカナで隕石の落下を止めた。

 「久しぶり俊哉君。
任せてとは言ったけど、僕の壁だと動きを止めるまでしかできないや。
後は任せていいかな?」

恥ずかしそうに頬を少し赤らめながら言う海斗を見て動きだす俊哉たち。
ブラックホールを至るところに用意し準備をするリオンを見て、何をしているのか察した啓吾が巨大な爆弾を用意する。
一分いや、一秒も無駄にできない緊張したピリピリとする空気が続く。
二人の動きを見たあきが草薙剣を出すと、その剣を地面に刺し地面を触手のように操り始めた。
準備が終ると同時に海斗がアルカナを解除する。
再びゆっくりと地上に近づいてくる隕石を啓吾の作った特大な爆弾でも吹き飛ばした。
大きな爆発音と共に地面に俊哉たちを叩きつけるかの如く強い爆風が勢いよく近づく。
爆風をリオンの生成したブラックホールで吸収する。
ブラックホールでも吸収する事ができなかった爆風と隕石の欠片がリオンの生成したブラックホールの隙間から俊哉達をおそう。
あきが地面を触手のように使い俊哉たちを覆うようにドーム状に覆った。
残りの隕石の欠片をあきが操る地面で防ぐ。

ドーム状となった地面の外から酷い音がなり続く。
しばらくし音がやんだ。
地面を元に戻しノアたちの立っていた位置へと向かう。
そこには一つの小さなキューブ落ちていた。
皆の顔を確認し恐る恐るそのキューブに触れると音楽と共に音声が流れ出した。

 「おめでとう。
これを聞いているってことはノア様の攻撃を防ぎきり僕の作ったゲームに触れたって事だね。
そんな君たちにお知らせです。
一ヶ月後君たちと全面戦争をしよう。
場所は、世界の中心、パンドラの箱が封印されている建物。終わりの塔。
来なければパンドラの箱をあける。」

キューブが形を崩し消えていく。

 「ちょっと待てよ。世界の中心ってあの草原だろ?
あそこは沢山歩いたが塔なんて建って無かったぞ!」

俊哉の質問に呆れ返る啓吾。

 「お前本当になにも知らないんだな?
決戦まで一ヶ月有るんだよな?
それまでに俺と晋次でみっちりこっちの世界の事を教えてやるよ。」

気が抜けたからか疲れが一気に俊哉を襲った。
フラフラしていて立っていのがやっとな俊哉が横になり休んでいると颯真が合流した。
颯真と別れる前に話していた事が本当になってしまったことを一番始めに謝ることにした。

 「そうか。全面戦争となったか。」

颯真が思い詰めた顔をする。
だいたい何を考えているのか予想できた鈴華が颯真を止めた。

 「元メンバーなんでしょ?あんた。
やりたくないなら無理にはいいわよ。
能力もバレていて戦力にならないかもしれない。それならいない方が楽!」

思い詰めた颯真を気にかけていた海斗がすぐにフォローに入る。

 「またそうやって!
鈴華はいつも口が悪い!
ごめんね、颯真。
でも、本当にキツそうなら!」

 「いや、すまない。
その事も有るが、それより考えないといけないことがあってね。
戦いは手を貸そう。
情が有るわけではないからね。
あくまで、思想、利害、目的の一致で共にいただけだ。
戦って辛くなるようなほど仲良くはないよ。
それよりも…。」

そういい俊哉のもとへと向かい耳元で何かを話す颯真。
少し悩んだ表情をしたがその後すぐに真面目な顔をする俊哉を見て苛立つ啓吾。

 「おい、みんなおかしいだろ?
どうしてそいつと普通に会話してんだよ。
そいつ元々は敵なんだろ?
何で仲間になってるんだよ!
何で誰も疑わないんだよ?
何で皆信用してんだよ!」

啓吾の苛立ちは止まることなく更に更にと加速する。
苛立ちに負けていた啓吾が無理やり感情を圧し殺すと、晋次と共に現実世界へと戻った。
それを見て続々と解散する。
海斗と鈴華は、置いていかれた事を根に持っていたようで、文句を長々と話して何処かへと去っていった。

 「俊哉君、優花があなたの敵になったのなら私も戦うよ。
それに、私の目的はもう果たせそうだから。
あと少し、あと少しで私は…。
あなたを………異世界から……。
だから…あなたのそばで戦わせてね。」

そう言い残してリオンを連れて帰っていった。
言い残した言葉は所々聞き取れず聞こうにもあきは、こちらを振り向いてくれなかった。

ゴタゴタをものともせず、ため息を一つつき自分の話したいことを話し始める自由すぎる鈴華。

 「これは巻き込まれたと思っていいのよね?
勘弁してよ!
まぁ、いいわ。
あんたに付き合って上げる。
いいわよね?海斗。」

そう言ってくれるのを待っていた。期待していたかのように微笑む海斗。

敵の数、強さ。
誰も巻き込まず、一人で。なんて甘いことは言えない状況だというのは、考えるまでもなかった。
人数は少しでも多い方が嬉しい。
二人に礼を言い解散した。

皆が解散し、さっきまで隕石が落ちてきた事なんて嘘のように静かになる。
このまま終わればいいのに。なんて思いながらも、そもそもの目的へと話を変える。
颯真の帰りにより一つは潰した事を確認した。

冷静になり有ることに気づく。
リッカたちが帰ってこないということに。
ただ場所を確認してもらいに行っただけだ。
一組織潰してきた颯真より遅い訳がない。
いや、そもそもの距離か?
もしかして、失敗したのか?
見つかって捕まってしまったのか?
今帰っている途中なのか?
などと、いろんな考えが頭の中をくしゃくしゃにする。

だんだんと考える事がマイナスになっていく。
そのせいなのか、悪いことが起きそうなそんな予感すらして来はじめた。
颯真に相談しようとしたその時。
遠くから聞き覚えの有る声がした。

 「俊哉さーん。
遅くなります申し訳ありませんでした。
ちゃんと壊滅させてきましたよ。」

声の主はなんとリッカだった。
横には明美もいる。
全てがうまく行きほっとした瞬間だった。
話を聞くと、どうやら明美も能力者らしく明美の能力で壊滅させることができたらしい。

みんなの無事を確認し、再びオークションハウスに向かう四人。
沙羅を迎えに行きこの件の全てを終わらした。
疲れていたのもあり報告は後日と言う意見で全会一致。
一週間後に報告しにいくということで解散することにした。
現実世界に戻ろうとしたその時。

 「俊哉さん、リッカちゃんから話は聞きました。
アルカナ所持者を探す旅をしているんですよね?
その旅私たちも入れてもらえませんか?」

私たち。と言う言葉を聞いて、どういうことか少し考えていると明美の後ろからひょっこりと沙羅が顔を出した。

俊哉は理解した。そして再び考え始めた。
仲間が増えるのは嬉しかった。
ノアとの戦いのために少しでも戦力は増やしておかねばと思う俊哉。だがそれと真逆に、今まで関わってもいなかったものをいきなりこんな戦いに巻き込んでもいいのかと考える俊哉もいた。

困っていると明美が更に説得をしだす。

 「私の能力は攻撃系の能力で、沙羅の能力は支援系なんです。
これまで二人で旅をした事だってあります。
足手まといになるような事にはならないはずですよ。」

考え出てきた答えはやはり、この二人を巻き込んではいけない。という答えだった。
断ろうとしたその時だった。

 「俊哉、そんなに悩んでいるのならこの二人が本当に旅について来れるかテストをしたらどうだい?」

颯真とリッカだった。

 「冒険者ギルドに行けばそれなりのクエストはもらえるだろう。
どうかな?
それをリッカも入れて五人で行きクリアできたら仲間に入れて上げるというのは。」

正直悪くない提案だった。
むしろそれ以外にどうしたら良いのかわからない俊哉にはそれに賛成せざるをえなかった。
二人も賛成してくれた。
報告した後向かうという話で無事その日は終った。

やけに長くなる一日を終えて現実世界に戻る俊哉。
六日だけだが戦いとは関係のない静かな生活を送ることにした。
朝しっかりと起き学校に向かう。
授業を終わらせ啓吾と晋次に異世界の事を教えてもらい帰る。
宿題を終わらせ布団に入り一日を終える。
そんな静かな日常に。

そんな日常が四日過ぎた時だった。
いつものように学校に向かっていると道路の十字路の角で女の子とぶつかった。
同じ制服を着たポニーテイルの可愛い女の子だった。
どこかで見たことが合ったような。そんな女の子だった。
少女漫画のような展開だと受かれていると女の子から謝罪の言葉が聞こえ我に返った。
急いで俊哉も謝罪の言葉を言う。
その女の子は急いでいたのだろう。
俊哉の謝罪を聞くと一言だけ呟き、すぐにまた走り去ってしまった。

 「すごい魔力。」

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