異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

49話 懐かしき人

ダスピクエットが何かを話している。
所々重要なワードが出てくる。
魔女、魔術師、パンドラの箱、そして、パンドラのカギ。
とても重要な内容なのだろう。真剣な顔をしている。
そんな中、自分は相槌あいづちを打つばかりで、何一つ頭には入っていなかった。

みんなの協力もあり優花と会いに行く決意が固まった。
やっと、その気になれた。
なのに…。

ダスピクエットの話が終わったのだろう。
ダスピクエットがてを降りながら別れを告げる。
現実世界に戻されてしまった。
いつも通りの毎日が始まる。
朝御飯を食べ、学校に向かう。
授業を受けながら内容が理解できてる自分に驚く。
それだけの日々。
そこには優花はいない。
なぜか学校にすら転校してきていない事になっていた。
自分の幻だったのだろうか。そんな事を思いながら授業を終える。

いつものように啓吾と晋次と帰る。
他愛のない話。
あの先生が、この授業が。そんな右から左に流してしまいそうな今の俊哉には興味のそそられない話。
そんな中それは突然と始まった。

 「あの優花って子どう思う?」

突如その名前を口にしたのは晋次だった。

 「どう見てもみんなの記憶から消えていたな。先生の名簿にも載ってなかったよ。」

啓吾が続ける。

 「まるで魔法だな。」

その瞬間、俊哉の頭の中で何かが浮かんできた。
そう。ダスピクエットの話だ。
だが、俊哉はダスピクエットの話を今回まともに聞いていないがため、出そうで出てこないむず痒いがゆい状況となった。

そんな俊哉の事など知るよしもない二人は話を続ける。

 「魔法の効果としか考えられないよね?」

 「お前もそう思う?でも、だとしたら、誰が現実世界にまで影響を及ぼすほどの魔法を?ってなんだよな。」

俊哉が会話に参加し始めた。

 「本人の魔法って考えるのが妥当なのでは?」

その安易な考えは一瞬にして晋次により否定される。

 「いや、それはあり得ないよ。彼女に魔力なんて感じられなかった。魔力は能力と違いその物の精神を使って発動する。だから、生きれいる限りどれだけ隠しても全てを隠すことができないんだよ。必ず少しは漏れているものだからね。」

難しい話を聞いて頭を整理していると啓吾が追い討ちをかけてきた。

 「なら、簡単な話だろ。俊哉と一緒って事だよ。」

 「ほぇ!?」

思わず変な声が出てしまう。

 「お前と一緒で大罪の七魔女の一人が後ろにいるって事だよ。」

次の日になり妹と共に学校に向かうことにした。
昨日は結局結論が出ないままモヤモヤして終わってしまった。やりきれない感じで次の日を向かえてしまい頭がぐちゃぐちゃのまま。

その日も適当に学校の授業を受け昼を向かえる。
たまたま弁当を忘れた俊哉は珍しく購買へと向かうことにした。
沢山の人が並ぶ長蛇の列。いつもならこんなのに並んでまで買うか?と思っていたがまさか自分がその立場になってしまうとは。
後悔しながら長い列に並ぶと、後ろからはや歩きで見たことのある女の子がこちらに向かってきた。

 「俊哉さん!助けてください!」

場所を変え屋上へと向かった。
その日はたまたま人が居らず、相談するにはぴったりの空気となっていた。
女の子が話を始める。

 「お昼の時間にすみません。あ、ご飯食べてないですよね。よかったら私のお弁当少し食べますか?」

女の子のお弁当を申し訳なく少し頂きながら相談の内容へと話を変える。

 「あの…ですね…。どうしましょう!」

困った顔で助けを求めてくる女の子にどうしたら良いかわからない自分がいる。

 「えっと…。とにかく落ち着いて!俺はどうしたらいいの?」

女の子が顔を近づけてくる。
あきの顔でも少し照れてしまう。
 
 「帰ろうとしないんですよ。現実世界・・・・に。やることがあるからって帰ることを拒むんです。本業は学生なのに。俊哉さん!説得してくださいよ。」

 「もしかしたら、君…。キアラナ?」

 「そうですよ。それよりはあきです。
本当に、困っちゃいますよ。」

顔はあきだが雰囲気が違った。
それにしゃべり方も違う。
自分が異世界に行っている時もこんな感じなのかと感動しながら話を続ける。

 「それ、俺に何ができるの?」

 「説得してくれればいいんです。たまには現実世界に帰れって。このままだと現実世界に帰ってこれなくなっちゃいますよ。」

どこにあきが居るのかわからないし、今は敵対状態にもなっていて話が通じるかわからないが、とにかく会えたら説得する事を約束しその話を終えた。

家に帰り疑問に思った事を実行してみることにした。
異世界に行き来するのは全て夢の中の者が決めるものだと思ったが、あきの場合は帰ることを拒んで居続けていた。つまり、自分の意思でも行き来することは可能だと言う結論に至った。

ためしに心の中でダスピクエットを呼んで異世界に行きたいと願ったら俊哉の予想通り精神世界に連れていかれ、目の前にダスピクエットが現れた。

 「もう行くのですか?」

 「うん。やらなきゃいけないこと沢山ありそうだから、終わらせに行くよ。」

 「私との約束も守ってくださいね。」

ダスピクエットはそう言い残し俊哉を異世界へと飛ばした。


目の前が真っ暗だ。
それに手が自由に動かない。
鎖のようなそんなもので拘束されているのだろう。
腕を動かしジャラジャラと音をたてながら抵抗していると部屋の明かりがつく。

 「俊哉くん。君がまさか裏切るとはね。僕たちの仲だ。処刑の時は僕がその首を落としてあげよう。」

部屋の扉を開け、そう言いはなったのはリオンだった。

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