異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

番外編 年越し

これは俊哉の異世界生活とは全く異なるお話。ただの至福の時間のお話。そう、俊哉が異世界で戦いをしない、戦いの事を考えない平和な時間のお話。もしもの世界のお話。これはそういうお話。

現実世界で期末テストを終わらせ休みに入り後は、年越しまでの数日間を適当に過ごすだけという時俊哉はある一つの戦いをしていた。とても平和で勢いもない。けれど真剣な戦い。

 「お兄ちゃん、早く壁拭いてね。次がまだあるから。」

そう、その戦いというのは大掃除の事だ。

大掃除それは一年の最後に行う普段掃除もしないような部屋の隅の角の角まで綺麗にすると言うホコリと言うなの敵との真剣勝負の時。

俊哉は一人家の壁を徹底的に拭いていた。
壁についたシミを何度も雑巾で拭き落ちるまで繰り返す。
それを何度も繰り返す。
繰り返す度に腕が疲れてくる。俊哉は思った。

 (優花の能力で部屋中綺麗にする掃除できないかな?ほら、今の時代高圧洗浄機とかあるじゃんね。ちょっと圧力強めにしたらシミなんてあっというまだろ?)

そんな事を考えていると手が止まってしまい妹に叱られた。

2時間程の時間を使いなんとか壁を終わらせた俊哉は少し休憩する事にした。
が…しかし、妹は優しくなかった。

 「休憩するな!ダメ兄!
終わったら次は天井。それが終わったらお兄ちゃんの仕事は終わりだから休憩していいよ。」

俊哉は妹の奴隷のように疲れた腕を必死に伸ばしながら天井を掃除していた。いや、させられた。

そんな奴隷のような日が数日続きなんとか長い戦いを終わらせた俊哉はゲームに走った。
正月にはどこもゲームを安くしてくれるためゲームのバーゲンセールとなる。欲しいゲームが沢山ある俊哉はその日のために少しでも今持っているゲームを終わらせようと必死に頑張った。

そして、気づけば年越し前の31日になろうとしていた。

深夜までゲームをやっていた俊哉は睡魔と言う悪魔に取りつかれたこともありしぶしぶ寝ることにした。
起きた俊哉はすぐに寝たことを後悔することになった。
なぜなら、俊哉の目の前にはリオンがいたからだ。
異世界で1日を過ごしと現実世界では2週間が立つ。それは新年のゲームセールを逃すと言うことを意味するからだ。

発狂する俊哉、それを見たあきが俊哉の頭に一発チョップをする。

 「冷静になりましたか?」

少しモヤモヤした気持ちとイライラした気持ちがあるが、人会話ができるくらいには回りが見えるようになった俊哉。
辺りを見渡すと、豪華なご飯とドレスとスーツを着た沢山の人、そして、多くの演奏家達がいた。
よく見ると、あきもドレスを着ていた。

 「何でドレス?」

 「今日は一年の最後だからね。バグローズでミアがみんなでお祝いしたいって言い出したからみんなで付き合ってあげることにしたの。」

 「ふーん。でもどうして俺も?」

自分がいる意味を訪ねようとするとミアがその答えを教えてくれた。

 「あ、ミアちゃん。久しぶり。」

 「はい。お久しぶりです。俊哉さん。
すいません。お姉ちゃんが俊哉さんが一緒ならいいと言うので、迷惑でしたよね。
まぁ、お父様の関係者の時間が終われば次は私の関係者だけのパーティーとなりますのでそれまで我慢してくださいませんか?」

あきを見ると頬を赤らめながら返事をしてくれたい。

 「きっとお姉ちゃんは寂しかったのですわ。」

 「そんなんじゃ!」

ミアの言葉に反応するあき。

 「まぁ、理由はどうであれ、あと少しで終わりますので我慢してくれると嬉しいです。」

そう、言い残しミアは何処かへ歩いていった。
どう時間を潰したら良いのかわからない俊哉にあきが手を差しのべる。

 「ひ…暇…暇だったら…その…一緒に踊らないか?」

周りを見ると演奏に乗って社交ダンスをしている人たちがチラホラといた。

 「俺社交ダンスとか分からないんだけど。」

そう言うとあきは俊哉の手を掴み会場の真ん中へと行き社交ダンスを始めた。

 「今回は私がリードしてやる。戦いの時と
同じだ。サポートしてあげるから私の言ったように足を出して。」

右前、左前、右後、ストップとあきは丁寧に次はどう動けば良いのかを教えてくれたおかげでなんとか形にはなった。が、それでは満足しないあきは、なんとか要領を掴んだ俊哉を手足のように動かし会場で踊っている誰よりも優雅に、綺麗に踊って見せた。

曲の終わりと同時に、俊哉とあきへの拍手が飛び交った。いつまで経っても終らない拍手と一緒にミアの両親の開いたパーティーは幕を閉じた。

 「俊哉、かっこよかったよ。少し待っててね。みんながはけたら次は私たちの時間だから。」

そう言い残しあきも何処かへと消えていった。
少し立つと後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

 「俊哉、よくあれについていけたな?社交ダンスなんてしたことないだろ?お前。」

 「うん。すごく良かったよ。俊哉くん。綺麗に踊れてたと思う。見入っちゃったもん。」

そこには啓吾と晋次が居た。

 「どうしてお前らがここに?」

 「これからは僕たちの時間だからだよ。」

パーティー会場の扉が開くとリオンが入ってきた。
少したち、優花が、あきが、ミアが、続々と知った顔が集まってきた。
その会場にはリーゴと紅林そしてイルマも居た。

 「今日は集まってくださりありがとうございます。年越しと言う事もありこのような時間を設けさせてもらいました。今夜は思う存分楽しんでくださいませ。ちなみに今回は番外編という事で、敵とかそう言うのは一切関係なしで楽しんでます。この話で出てきた能力などは本編とは一切関わり有りませんのでこのお話だけの物だと思ってくださいね。」

最後の説明に違和感を持つ俊哉が聞く。

 「敵ってなに?てか、最後誰への説明?」

 「さぁ、誰でしょうね。」

笑って交わされる。

こうして俊哉たちの年越しパーティーが始まった。

豪華な飯を食べ、沢山の人たちとお話ししていると扉が再び開く。

 「俊哉君。僕たちも来たよー。」

海斗と鈴華もパーティーに呼ばれていたらしい。
パーティーを楽しんでいると、リーゴがある提案をしだした。
それはゲームだった。
前に行われていた大人たちの静かなパーティー とは違いうるさいパーティーが始まろうとしていた。
酔っぱらいのリーゴとリオンが手押し相撲を始める。
リーゴが勝つと納得できないリオンがミアを召喚した。

 「はは、リーゴめ、例えお前でも姫様でもある幼女には大人げなくて勝てないだろう!」

ミアとリーゴの手押し相撲が始まる。
先に仕掛けたのはリーゴ。勢いよく手を伸ばすが交わされる。前に出てきたことにより少し体制が安定していないリーゴを力で押し返すとそのまま尻を付いて倒れるリーゴ。

 「反則だろ!姫様今絶対未来見ただろ!」

 「勝負ですよ。真剣にやらなくてはね。」

 「能力有りと言うならこちらにも考えが有りますよ。」

そう言うと、リーゴは俊哉を指名し野球挙を始めた。
いやいやすることになった俊哉。

 「アウト、セーフよよいの。」

 「死神。」

その瞬間、俊哉の服は、パンツだけを残し消滅した。
女子たちの悲鳴が会場には響き渡る。それと同じくらい大きな声で高笑いをするリーゴ。

悲鳴と高笑いの中、ミアが俊哉を隣の部屋に連れていった。

隣の部屋には俊哉のサイズのスーツが置いてあった。

 「こうなることは分かっていたので。」

 「なら、止めてくれても。」

 「それではつまらないですわ。」

スーツを着て、部屋に戻るとリーゴとリオンが野球挙をすることになっていた。

 「アウト、セーフ」

と言う叫びと共に死神を使うリーゴ。だがリオンの服は消滅していなかった。

 「剛毅だよ。」

剛毅のアルカナを見せるとリーゴとリオンの取っ組み合いが始まった。
俊哉が止めに入ろうとしたその時、俊哉の肩を叩く者が居た。

 「俊哉このドリンク、チョー美味しいの。お前も飲んでみ?」

啓吾に言われ渡されたドリンクを少し飲むとそれはお酒だった。

 「啓吾、これお酒だから!」
*未成年の飲酒は法律で禁じられています。

 「晋次、啓吾が!」

啓吾がどう見ても酔っているようにしか見えなかったので、晋次に助けを求めようとしたが、すぐに無意味だと気づいた。
晋次も酔っぱらっていたのだ。

酔っぱらった晋次がいきなり体に手を入れる。

 「おま、能力!能力使ってるからー。」

俊哉の体から何かを引きずり出す晋次。
出てきたのはなんと、キテラだった。

 「キテラ!」

 「しゅんくん。楽しそうだね。私も混ざっていいかな?」

ミアの方を見ると構わないと言っているのでキテラも参加することになった。

それと同時に扉が開き、リッカとりかが入ってきた。

 「お久しぶりです。俊哉さん。りかちゃんを迎えに行ってたら遅くなりました。」

荒れたパーティー会場へと入っていくリッカと、りかを見届けると再び扉が開いた。
フレイアが入ってきた。

 「やっと皆さん揃いましたね。ではさらに楽しみましょうか。」

そして賑やかで、とてもうるさいパーティーが多くの人たちと共に始まった。
みんなと話ながらばか騒ぎをし、楽しんでいると再びリーゴとリオンの組合が始まったわ。

リオンを勢いよく飛ばすリーゴ。飛んでいったリオンの先には料理を食べていたフレイアが。
フレイアと勢いよく衝突するリオン。
楽しい食事の邪魔をされイラ立つフレイアがリーゴに手裏剣の能力を使う。

 「私の食事を邪魔していい者なんていないんだよ!」

激怒したフレイアはリーゴめがけて手裏剣を飛ばしまくる。
楽しそうに逃げるリーゴを手裏剣が当たるまで追いかける。
徐々に数を増していく手裏剣は他の人にも迷惑をかけるまで数を増やした。
料理を取りに行こうとしたあきの目の前を一つの手裏剣が通過する。

パーティーだから自分に被害がなければいくら騒いでもしょうがない。と思っていたあきは自分の邪魔をされたことにより無視できなくなった。

 「みんなうるさいんだよ。宴会と間違えてんじゃねえ!」

草薙剣で作る触手のような物を使い騒いでいるやつらを止めようとするあきの攻撃をアルカナを使いかわすリーゴとリオン。
アルカナにはアルカナを。あきも女帝のアルカナを使いリーゴを奴隷とした。

奴隷にしたリーゴと草薙剣を使いなんとかリオンを捕まえたあきは知らない間に会場の異論なと頃に穴を開けてしまったことに気がついた。

穴だらけになったパーティー会場を見てウズウズしていたキテラがついに動き出す。

 「私も混ぜろー。」

あきの草薙剣を真似るようにキテラも草薙剣を使い草薙剣どうしの会場を使った触手バトルとなった。

だんだんと勢いを増していくバトルに歯止めが効かなくなり、キテラの表情が本気のひへと変わる。

ピリピリする空気。
鈴華が海斗とにすぐにアルカナを使いように指示したのを見てさすがにヤバイと悟った俊哉が動き出す。

りかにキテラをドールハウスに入れるように指示をする俊哉。
指示を聞いたりかがキテラを包むようにドールハウスを作りキテラを封じ込める。
キテラの使った能力がドールハウスで発動された事を確認すると、愚者のアルカナを使い全ての能力を消した。

晋次の能力も消したことによりドールハウスが消えたと同時に勢いよく俊哉の方に飛んでくるキテラ。勢いよく俊哉の中に入ったことにより激痛が走り倒れてしまった俊哉。

 「俊哉さん。俊哉さん。」

誰かが自分を呼ぶ声が聞こえ目を覚ます俊哉の前にはダスピクエトがいた。

 「あの…大丈夫ですか?」

心配してくれるダスピクエトに無事を伝える。

 「よかったです。
私も少し話したいことがありますので現実世界に戻る前に少しいいですか?」

 「いいよ。」

精神世界から抜け目を覚ますと会場の窓の外に出ていた。肌寒い。だが顔の辺りはなぜかとても温かかった。なにがあるのだろうと探ってみるとそこには、ムチムチでスベスベな太ももが目の前にあった。

 「俊哉さん?」

恐る恐る顔を見ると不思議そいにしている優花の顔があった。
俊哉は優花から膝枕をされた状態のまま、倒れた後の出来事を聞いた。
どうやら、会場はフレイアが帰る前に能力で元に戻してくれたらしい。
酔っぱらい共はリッカの治癒能力で素面に戻ったらしい。
(酔いまで治すことができるなんて。)
優花はと言うと、全て終わった後、倒れて少し体温が上がっていた俊哉を冷ますために薄いドレスにも関わらず窓の外で待っててくれたらしい。

謝ろうと口を開けたと同時に優花が話し出す。

 「新年明けたら花火を打つんだとミアさんが楽しそうにおっしゃってました。だから、何も言わずこのまま一緒に見ましょう。それだけで全部許せますので。」

軽くうなずくと少し無言で恥ずかしい時間がすぎる。
耐えきれずどうしてこんなにしてくれるのかを優花に聞くと即答で答えが帰って来た。

 「好きだからです。」

その言葉と同時に花火がうち上がる。

 「俊哉さん綺麗ですね。明けましておめでとうございます。」

恥ずかしそうに答える俊哉。

 「うん。今年も…その…よろしく。」

花火の終わりはパーティーの終わりを意味していたらしい。
花火が終わると皆続々と帰っていった。
みんなが帰ったことを確認しミアに今日の謝罪とお礼をいいに行った。

 「大丈夫ですよ。私も沢山楽しみましたし。それに最後には全部綺麗に収まると最初から分かっていたので。」

自分の家のパーティー会場を使っているのに確かにミアは誰が暴れても一度も止めようとはしなかった。それどころか楽しそうに笑っていた。その余裕はどうやらこれだったらしい。恐ろしい能力だと言うことを感じた。

ミアの話を終え現実世界に戻ろうとすると精神世界についた。

 「俊哉さん。」

目の前にはダスピクエトがいた。
お話しするために待っていた。

 「挨拶だけしたくて。明けましておめでとうございます。」

 「今年もよろしく。」

 「今回は現実世界での時間をいじりました。私からのお年玉です。」

それだけ言い残しダスピクエトは消えていった。
目を覚ますと目の前には妹がいた。

 「ボケ兄。何回呼んだと思ってるの。ボケボケして。あと少して年明けだよ。そば食べるんだから運んでよね。」

時計を見ると0時10分前だった。

 「そう言えば、お兄ちゃんなんか嬉しそうな顔で寝てたよね?」

妹に言われなんとなく異世界の事を振り替えると、荒れてはいたが、とても楽しい年明けをすることができたと実感した。

 「いい夢を見てただけだよ。」

突然母親が会話に入ってきた。

 「前日に夢なんて見てたら、初夢なんて見れなくなるんじゃないの?」

すると父親も会話に入ってきた。

 「初詣何日に行く?」

そんなどうでもいい会話をしながらそばを食べていると年が明けた。
それと同時に家族みんなが口を会わせ一斉に言う。

 「明けましておめでとうございます。」

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コメント

  • ノベルバユーザー284926

    頑張って読みました笑笑

    1
  • 蒼葉  悠人

    今回は今年初ということで番外編にしました。だいぶ長いので頑張って読んでください。

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