異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

32話 立ち直り

ノアたちが目的を果たした戻っていく中に叫ぶことしか出来なかった俊哉。
能力を略奪の能力によって奪われた俊哉は死んでいるようなものだった。生きながらに死んでいる。目が死に。心が死に。思考が死に。ただただ叫ぶのみだった。叫び、泣き崩れ、しまいには気を失い。
少したち、リオンをバグローズへと連れていった啓吾と晋次が俊哉を探しに戻ってきた。二人の目の前には気絶した俊哉の姿が。

 「俊哉くん。君の異世界生活はここで終わったね。能力を持たない者にこの世界は壊せない。まだ抗うなら明日からも異世界に連れていってあげるけど…。どうしたい?」

目を覚ました俊哉の前にはキテラが立っていた。能力を失ったことがリアルだと。夢じゃないと。キテラの言葉で再確認した俊哉は投げやりな態度を取る。

 「好きにしろよ。まだ続けさせたいのなら連れていってくれ。もしその気がないのならもういいだろ。」

投げやりな態度を取る俊哉にイライラしたキテラが現実を叩きつける。

 「いい、今のあんたが異世界に行ったところでどうにもできないのは言わなくてもわかるよね?死にたいとか思ってるの?なら、殺してあげるよ。異世界に行けば死ぬために必要な物は全て揃ってる。魔物に食べられて死のうが、ノアに立ち向かい死ぬのもいい!」

怒ってたキテラの表情が怒りから悲しみへと変わる。

 「ねえ、貴方はどうしたいの?」

 「死ぬのは勘弁かな。」

キテラが怒ってくれた事で少しだけ本当に少しだけ、その時だけ、前を向けた。

それから数日が立つ。

 「お兄ちゃん!朝!」

妹の声で目が覚める。
いつもの事だ。
妹と共に学校に向かう。
いつもの事だ。
啓吾のちょっとうざい絡み。
いつもの事だ。
啓吾と晋次との下校。
いつもの事だ。
一日が終わり寝る。起きると次の日になっている。
いつもの事だ。
そしてまた妹の声で起こされる。
いつもの事だ。
いつもの事、いつもの事、いつもの事。
昔の日常へと変わっていった。
異世界生活は本当に非日常となった。

しかし、そんな昔の日常でも非日常はちゃんと有った。俊哉が能力を無くした次の日学校に転校生がやって来た。
名前は、白百合しらゆり 優花。
どこか知ってるようで知らない。そんな子は容姿、性格、頭脳どれをとっても良い事で有名となり常に回りには沢山の人がいた。

 「何、俊哉。あの優花って子気になるの?」

ポケーっと優花を見ていた俊哉に晋次が尋ねる。

 「あの子すごい人気だよね?来てすぐに人気者だもんね。」

 「なんだよ、俊哉お前、あぁいう子が好みなのかよ?」

 「ば、そんなんじゃねえよ。そんなんじゃない。ただ、どこかで見たこと有るような気がするんだ。」

3人で他愛のない話をしてると次の授業が始まった。

 「俊哉、帰るぞー。」

啓吾と晋次に呼びたされ一緒に帰る。
いつのも流れだ。
靴を履き替え、ドアを開きます。校門までの道を進んで校門を出る。そこまでは日常だった。

 「待って!俊哉くん。」

息を切らせて俊哉を呼んだのは白百合 優花だった。

 「少し二人で話せないかな?」

申し訳無さそうに二人を見る俊哉。

 「いいよ。僕たちは帰ってるから。」

 「付き合ったのなら教えろよー!」

二人が俊哉を残して帰って行こうとした時だった。

 「俊哉くん。今の君は異世界とは関係ないからわからないと思うけど、あの子は少し危ない。けして君が能力を失ったことはバレちゃいけないよ。」

晋次は耳元で小声で話たあとすぐに啓吾を追いかけるように帰っていった。

 「最近全然お花畑来てくれないんだもん。だから、会いに来ちゃった。」

俊哉は驚いた。白百合 優花は俊哉のよく知っている青い髪の毛でお花が大好きな女の子優花だったのだから。

 「少し話そうか。」

場所を変え優花と話すことにした。

 「何で異世界に来ないの?」

 「それは…。」

晋次には止められていたが優花なら、という気持ちに負け全てを話すことにした。

 「ばっかじゃないの?能力が無くなったから異世界生活ができないとか。」

呆れた顔で話を続ける優花。

 「情けない。私の好きになった人はこんなにも弱かった何て。いい。能力が無くなろうとやれることはある。貴方はアルカナカードを持っていたはず。何でそれを極めようとしないの?」

 「使い方がわからないものをどう使えって言うんだよ!」

 「アルカナカードはそもそも使い方はカード自信が教えてくれるもの。もっとカードと向き合いなさいよ。だいたいねー。」

怒られている。その感覚でなぜだか涙が漏れてきてしまった俊哉。

 「じゃあ、どうしろっていうんだよ。能力は使えない。アルカナカードの発動条件も教えてもらってない。そんな状態で異世界へ行っても死ぬだけだろ!」

泣き崩れる俊哉に優花が優しく話始める。

 「私はね。いつも孤独だったの。誰も来ない。誰も知らない。そんな隠れたお花畑でいつも1人悲しく過ごしてた。仲間はいたけど、友達とは言えるほどの仲ではなかった。だから、毎日退屈だったの。でもね、ある日1人の男の人が私の退屈を、孤独を救ってくれたの。」

 「それって…。」

 「そう。俊哉くん、貴方の事。凄いなー。かっこいいなー。って思ってたんだよ。突然現れて私の事助けて。私が悲しくないようにいつも来てくれた。」

 「それは…たまたまで。」

 「たまたまでもいいよ。貴方がたまたまでも、私の事助けてくれたのは変わらない事実なんだから。」

 「でも、あの時はどんな能力でも使うことができるチート能力があったからできたこと。調子に乗ってたからできたこと。今の俺ではできない。」

 「断言しよう。あなたの能力はまた戻る。」

 「嘘はいいんだよ!」

 「嘘じゃない!未来予知で知っている。」

優花の真剣な顔に圧倒される俊哉。

  「ねえ、また見せてよ。私がかっこいいって思った俊哉くんを。ねえ、また戻ってよ。私の憧れた俊哉くんに。大好きな俊哉くんに。」

優花の言葉を全て信じたわけではない。だけど信じない訳にも行かなかった。信じたかった。

 「本当に戻るの?俺の能力は。」

 「保証する。貴方はまた能力者として異世界に戻ってくる。」

涙を拭き優花の言葉信じることを決意した俊哉。

 「やる気は出てきた?」

やる気に満ちた顔で答える。

 「愚問だろ!お花畑で待ってろよ。絶対に迎えに行ってやる。」

優花が笑顔で答える。

 「待ってるよ。まだ約束のデートしてないんだから。」

その日の夜俊哉は久しぶりに真っ暗な中女の子の声が聞こえる夢を見た。

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コメント

  • 蒼葉  悠人

    31話は長めに書きました。
    次回からは新章に入ります。

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