異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

31話 略奪

 「剛毅のアルカナ!」

驚くリーゴに容赦なく斬りかかるリオン。
初のアルカナカードの使用で体力がごっそりと取られていたリオンは、動きがだんだんと遅くなっていった。深傷を負ったリーゴは動きが鈍くなるリオンを見て、一度体制を立て直すために逃げることを決意する。
リオンのゆっくりとした一振りを避けると、リオンの持っていた剣に能力を使い砕いた。 
剣を砕かれた衝撃で後ろに倒れるリオン。
その隙にリーゴは撤退していった。

 「あき、俊哉君。ごめん。ここまでが限界みたいだ。」

そういい、倒れていくリオン。


あきと優花の勝負はすでに終わっていた。
恋敵とあきの事を思っていた優花は、あきを水で作った大きなボールの中に入れると気絶するまで閉じ込めた。気絶あきは優花に連れていかれる。


ニコラスとの勝負を終えてリオンたちの元へと俊哉、晋次、啓吾の3人で向かう。その途中倒れていたリオンを見つける。倒れていたリオンにすぐさまリッカの能力を使うが効果がない。

 「俊哉、その人気絶してるだけだぜ?」

啓吾の言葉で能力を解く。

 「その人は俺らがバグローズまで運んでやるからお前は先に行け。」

 「俊哉君、もう一度キテラを君の中から出しておこうか?」

 「いや、いい。俺一人でなんとかする。影を操る能力も使えるようになったし、なんとかなるよ。」

リッカを二人に任せ先を急ぐ俊哉。
歩いても歩いてもリオン以外の人が見つからない。

 「くそ、早く皆と合流しないと…」


時間は少し前に戻る。

クレハとヴェラとの戦いはヴェラの圧勝だった。クレハがどんなに体の強度を強化してもヴェラに攻撃を防ぐことが出来なかった。

 「おいおい、そんなもんかよ。白魔術師団のやつらって言うのはよー。」

 「5倍いや、10倍だ!これでどうだ!」

クレハとヴェラの肉弾戦が続く。
ヴェラの攻撃を体の強度を上げて防いでは殴る。そんな戦いが数分続いた。しかし10倍に慣れていなかったクレハの能力は途中で切れてしまう。クレハの能力が切れたと同時にヴェラの重たい拳が何発も何発も当たり。

 「もう終わりかよ。」

 「10倍にしたんだぞ?どうしてたってられる!」

 「あ!?  俺はもともと肉体の全てが10倍だからだよ。」


リクオとプッピスの戦いもプッピスの圧勝で終わった。
プッピスの能力でどこかもわからない空間へと連れていかれたリクオ。

 「ねえ、僕ゲームがすごーく好きなんだ。君もゲーム好きかい?」

リクオの回りに多くのゾンビが現れた。

 「君の能力は知ってるよ。どこに撃っても百発百中で当てたい対象に当たる能力でしょ?だから、こんなゲームを用意してあげたよ。シューティングデッド。皆倒したらそこから出られるからね。」

リクオは目の前に現れるゾンビを何時間も打ち続けた。がしかし、体力の限界が来てゾンビに食べられる。

 「あーあ、レベル100はさすがに無理だったか。5万体のゾンビには負けるか。やっぱり。」


ソニアとコルンバの戦いもコルンバの勝利。

 「どんだけ物の大きさを自在に操れてもこの能力からしたら無意味だと知りなさい。」

ソニアが回りの石ころを大きな岩へと変える。木の枝を大きな木へと変える。だがコルンバはその全てを爆発させて無にする。

 「なんなんだよ。お前みたいなやつにどうやって勝ったら…。」

 「もう諦めな?」

コナンとエリダヌスの戦いもエリダヌスの勝利で終わる。

 「僕戦いっていうのが嫌いだから早く終わらそうね。」

エリダヌスが戦う気がないことを知り一気に殺そうとするコナン。全方位から銃を作り自動でトリガーを引く。一斉射撃でエリダヌスを蜂の巣した。
しかし、蜂の巣にしたはずのエリダヌスの声がどこからか聞こえてくる。

 「あ~、一回死んじゃった。来るよ~。あいつが来るよ~。」

ガタガタと怯えた声が聞こえる。
声がやんだ瞬間視界に、姿が変わったエリダヌスの姿が入ってきた。

(あれ?世界が逆さまに見える。)

首が鈍い音をたてて地面に落ちる。


急いで皆の元に向かう俊哉は仲間たちの死体ばかりを見せられていた。
吐き気がする。逃げ出したい。やはり戦場なんて来るんじゃなかった。そんな感情を圧し殺しながら前へと進む。

 「君が最後の1人かい?」

目の前にはピクシスとリーゴを除いた、ノア率いる黒魔術師団の姿があった。

 「お前らが、お前らが皆を!」

 「そう怒らない。戦場に置いて感情をコントロールできないのは死を意味する。ヴェラ、少し相手をしてあげなさい。」

ヴェラの重たい一撃が入る。紅林の能力で全てを強化していても守ることができないくらいの重たい一撃。
気が遠退いていく。だが気絶することは許されなかった。プッピスが大量の水を頭上から放つ。

 「水を作るだけのゲームはつまらないよ。」

 「俊哉君、もっと強くなっていれば全てを守れた。自分の思い道理にできないのは力不足が原因だよ。君はもう休むといい。よく頑張ったよ。少年にしては」

ノアが黒いもやを出し俊哉に触れる。

 「目的は果たした。」

黒魔術師団たちが帰っていく。そんな中俊哉はずっと叫んでいた。

 「おい、返せよ!俺の能力返せよ!俺に能力返せよ!返せー!」

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