異世界でもプロレスラーになれますか?
第46話 竜虎の戦い(中編)
奴の拳から放たれる見えない衝撃波は確かに強力だ。だが、それを放つ際、僅かに力を貯める時間が必要になる。そして放たれた衝撃は奴との距離、10メートルほどだろうか。この距離で俺まで届くまで0.5秒ほど。
普通に回避したのでは間違いなく間に合わない。ならまずは……。
「ウォォォォォォ!!!」
動き回って撹乱する!
『おぉーーとヤシマ選手!なにやらがむしゃらに走り始めたぞ!何をする気だーー!!!』
特に考えてません。
「へっ、結局逃げんのかよ。拍子抜けだぜ。まぁそんだけ動かれちゃ流石の俺も当てるのは難しい……とでも思ったか!」
ドン!
「ぐはっ!」
俺の動きを先読みし奴は拳を放ち、衝撃波は見事にヒット。堪らず俺は地面に倒れる。
「あぁーくそ!やっぱこれはダメか……」
動き回る相手にも確実に当ててきた。やはりこいつ、戦い慣れてやがる。
なら次は……。
『ヤシマ選手!今度は距離を取ったぞ!?何をする気だぁぁぁぁ!!!』
すいません、今回も何もありません。
「よっしゃこいやぁぁぁぁ!!!」
「フッ!!!」
フクロの拳が放たれる。その瞬間を見極め、俺は横方向に回避をするが……。
ドン!
「がっ!くっ……」
やはり早いな。さっきの倍は距離を取ったんだがそれでも避けきれない。
だが多少ではあるが、当たる場所がズレている。
「ほらもっと来いよ猫ちゃん。そんな猫パンチ大して効かねえんだよ!」
「そうかよ、んじゃ遠慮なくいくぜぇ!!!」
再び腕を引き力を溜める。そこだ。振り抜いた瞬間を極められれば……。
「………………今だ!」
瞬時に横へ飛び込むように……回避をする!
「よっしゃ!」
回避に成功し、衝撃波はそのまま闘技場の石壁に激突し、大きな音とともに壁にヒビが入った。
「ほぉ、避けたか。これを躱した奴はお前で2人目だ。認めてやる。お前は確かに強い」
「へっ、そりゃどーも」
まぁこれ以上距離が縮まると避けられるか分からないからな。攻撃する時は気をつけないと。
「それで?俺は技を見せたぞ?お前はどうなんだ?今までのでお終いか?もっと見せてくれよお前の技を。こんな楽しい試合は久しぶりだ。もっと攻めてこいや!」
そうは言っても技が腐るほどあるからなぁ。
基本的に至近距離でしか使えない技がほとんどだし、こういう遠距離技が使える奴が相手だとどうも使いにくい。
「あぁそうだ。この技はもう使わないからよ。だから安心してかかってこい」
「…………使わない?馬鹿にしてんのか?」
「お前ごとき使うまでも無いって事よ。確かにお前は強ぇがやっぱ俺はこっちのが性に合ってる!」
そう言いながら俺との距離を詰め、拳を突き出したフクロ。俺はそれを片手で受け止める。
「戦いってのはお互いの魂のぶつかり合いだ。殴って蹴って頭突いてよぉ、痛みってのはやっぱ肌で感じなきゃ面白くねぇ。剣だ魔法だなんだって俺は好かねぇんだよ!お前となら……本当の勝負が出来そうだ!かかってこい!」
…………こいつ、面白い。
小細工無しの真剣勝負。こいつとなら出来るかもしれない。プロレスを———いやこいつはレスラーじゃない。言うなれば異種格闘技戦。
こんなにワクワクする試合は初めてだ。
「分かった。お前がそう言うなら俺も出し惜しみはしない。全力でお前を迎え撃ってやる!」
「そうだ来い!もっと俺を楽しませろ!」
「ただし、お前も全力で来い!さっきの技、使わないなんて事は許さねぇぞ?」
「ま、そりゃ俺の気分次第だ。心配しなくても俺は常に全力だぜ?誰が相手だろうとな」
「そうかよ、それじゃ遠慮なく行くぞ!」
フクロに向かって勢いよく走り出した俺は奴に向かってエルボーの構えを取る。
「またそれかぁ!?懲りねぇ奴だな!」
1度見せた技だ。避けるのは容易いだろう。だが……。
バキィッ!
「……やっぱりな。お前なら避けないと思ったよ」
「あぁ?何のことだ?」
真っ向から仕掛けたエルボーはまともに奴の右頰にクリーンヒットした。
「この試合が始まってお前は俺の攻撃を1度も避けていない。カウンターを仕掛ける事はあっても、ただの1度も躱しちゃいないんだよ」
「はっ!ただの偶然だろ?」
「だったら今のエルボーはなぜ避けなかった?俺は真っ向からお前に向かって行った。避けるなんて難しくもないだろ?」
そんな俺の指摘に対して一瞬の間を開け、フクロは大きな溜息をつき、口を開く。
「ったくよ、いちいちうるせぇ野郎だなぁ。どうでもいいだろそんな事よぉ。俺の戦いに逃げるなんて事はねぇ。相手の技は受けるか、危ねぇと思った技はカウンターで返す。それが俺のやり方だ」
……こいつ、初めて会った時はどうしようもないクソ野郎かと思ったんだがな。どうやら俺の勘違いだったみたいだな。
純粋に戦いを楽しんでやがる。
なんだろう。根っからのファイター、戦いマニア、脳筋、戦闘狂…………。
ボゴッ!
「ぐほぁっ!」
「おいテメェ馬鹿にしてんのか?試合中に気抜いてんじゃねぇよ!」
「ああ悪い、なんか楽しくてな……」
やばい、ついうっかり感傷に浸り過ぎて口元が緩んでいたようだ。平常心平常心……。
しかし、そんなに威力はなかったものの、また腹にダメージ。これ以上は流石にやばいかもな。
「どうした!?来ないならこっちから行くぞぉ!」
フクロは真正面から俺の方へと走ってくる。
長期戦はキツそうだ。そろそろ決めに行かないと。
俺は走ってくるフクロに背を向ける。
『おっとなんだぁ!?ヤシマ選手!フクロ選手に背を向けたぁ!これはまずいぞ!?何か考えがあるのでしょうか!?』
「へっ、なんだ?試合を投げたわけじゃねぇだろうなぁ!」
フクロが俺の背後に来るタイミングを気配で感じ取る。そして俺はジャンプしながら体を回転させる。
バキィ!
「がはぁ!」
回転しながら俺は右足で奴の顎を蹴り抜いた。
『おぉーーと!!!ヤシマ選手!フクロ選手に背を向けたかと思いきや、体を反転させ、強烈な回し蹴りを繰り出したぁぁぁぁ!!!』
そう、これはいわゆる『ローリング・ソバット』だ。
本来、片足を軸にして、軸足の方向へ体を回し、相手に背を向けたところで軸足を入れ替え、その勢いを利用し、相手を足の裏で蹴り飛ばす技。多くの格闘技では『後ろ回し蹴り』と呼ぶ。
だが、それを応用し、ジャンプしながら回し蹴りを放つこの技をプロレスにおいて『ローリング・ソバット』と呼ぶ。
ちなみに『ローリング・ソバット』といえばタイガーマ◯クだ。
顎に強烈な蹴りを入れられ、意識が混濁しているのか、フクロはなかなか立ち上がれずにいる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
試合も恐らく終盤だろう。俺は決めに入るべく、雄叫びをあげ、気合いを入れた。
『ヤシマ選手ほえたぁぁぁぁ!!!勝負を決めるのか!?』
これで終わりにしてやる。
年が明けました。
喪中の為、挨拶は控えさせていただきます。
更新、不定期になりますが出来る限り頑張ります。
普通に回避したのでは間違いなく間に合わない。ならまずは……。
「ウォォォォォォ!!!」
動き回って撹乱する!
『おぉーーとヤシマ選手!なにやらがむしゃらに走り始めたぞ!何をする気だーー!!!』
特に考えてません。
「へっ、結局逃げんのかよ。拍子抜けだぜ。まぁそんだけ動かれちゃ流石の俺も当てるのは難しい……とでも思ったか!」
ドン!
「ぐはっ!」
俺の動きを先読みし奴は拳を放ち、衝撃波は見事にヒット。堪らず俺は地面に倒れる。
「あぁーくそ!やっぱこれはダメか……」
動き回る相手にも確実に当ててきた。やはりこいつ、戦い慣れてやがる。
なら次は……。
『ヤシマ選手!今度は距離を取ったぞ!?何をする気だぁぁぁぁ!!!』
すいません、今回も何もありません。
「よっしゃこいやぁぁぁぁ!!!」
「フッ!!!」
フクロの拳が放たれる。その瞬間を見極め、俺は横方向に回避をするが……。
ドン!
「がっ!くっ……」
やはり早いな。さっきの倍は距離を取ったんだがそれでも避けきれない。
だが多少ではあるが、当たる場所がズレている。
「ほらもっと来いよ猫ちゃん。そんな猫パンチ大して効かねえんだよ!」
「そうかよ、んじゃ遠慮なくいくぜぇ!!!」
再び腕を引き力を溜める。そこだ。振り抜いた瞬間を極められれば……。
「………………今だ!」
瞬時に横へ飛び込むように……回避をする!
「よっしゃ!」
回避に成功し、衝撃波はそのまま闘技場の石壁に激突し、大きな音とともに壁にヒビが入った。
「ほぉ、避けたか。これを躱した奴はお前で2人目だ。認めてやる。お前は確かに強い」
「へっ、そりゃどーも」
まぁこれ以上距離が縮まると避けられるか分からないからな。攻撃する時は気をつけないと。
「それで?俺は技を見せたぞ?お前はどうなんだ?今までのでお終いか?もっと見せてくれよお前の技を。こんな楽しい試合は久しぶりだ。もっと攻めてこいや!」
そうは言っても技が腐るほどあるからなぁ。
基本的に至近距離でしか使えない技がほとんどだし、こういう遠距離技が使える奴が相手だとどうも使いにくい。
「あぁそうだ。この技はもう使わないからよ。だから安心してかかってこい」
「…………使わない?馬鹿にしてんのか?」
「お前ごとき使うまでも無いって事よ。確かにお前は強ぇがやっぱ俺はこっちのが性に合ってる!」
そう言いながら俺との距離を詰め、拳を突き出したフクロ。俺はそれを片手で受け止める。
「戦いってのはお互いの魂のぶつかり合いだ。殴って蹴って頭突いてよぉ、痛みってのはやっぱ肌で感じなきゃ面白くねぇ。剣だ魔法だなんだって俺は好かねぇんだよ!お前となら……本当の勝負が出来そうだ!かかってこい!」
…………こいつ、面白い。
小細工無しの真剣勝負。こいつとなら出来るかもしれない。プロレスを———いやこいつはレスラーじゃない。言うなれば異種格闘技戦。
こんなにワクワクする試合は初めてだ。
「分かった。お前がそう言うなら俺も出し惜しみはしない。全力でお前を迎え撃ってやる!」
「そうだ来い!もっと俺を楽しませろ!」
「ただし、お前も全力で来い!さっきの技、使わないなんて事は許さねぇぞ?」
「ま、そりゃ俺の気分次第だ。心配しなくても俺は常に全力だぜ?誰が相手だろうとな」
「そうかよ、それじゃ遠慮なく行くぞ!」
フクロに向かって勢いよく走り出した俺は奴に向かってエルボーの構えを取る。
「またそれかぁ!?懲りねぇ奴だな!」
1度見せた技だ。避けるのは容易いだろう。だが……。
バキィッ!
「……やっぱりな。お前なら避けないと思ったよ」
「あぁ?何のことだ?」
真っ向から仕掛けたエルボーはまともに奴の右頰にクリーンヒットした。
「この試合が始まってお前は俺の攻撃を1度も避けていない。カウンターを仕掛ける事はあっても、ただの1度も躱しちゃいないんだよ」
「はっ!ただの偶然だろ?」
「だったら今のエルボーはなぜ避けなかった?俺は真っ向からお前に向かって行った。避けるなんて難しくもないだろ?」
そんな俺の指摘に対して一瞬の間を開け、フクロは大きな溜息をつき、口を開く。
「ったくよ、いちいちうるせぇ野郎だなぁ。どうでもいいだろそんな事よぉ。俺の戦いに逃げるなんて事はねぇ。相手の技は受けるか、危ねぇと思った技はカウンターで返す。それが俺のやり方だ」
……こいつ、初めて会った時はどうしようもないクソ野郎かと思ったんだがな。どうやら俺の勘違いだったみたいだな。
純粋に戦いを楽しんでやがる。
なんだろう。根っからのファイター、戦いマニア、脳筋、戦闘狂…………。
ボゴッ!
「ぐほぁっ!」
「おいテメェ馬鹿にしてんのか?試合中に気抜いてんじゃねぇよ!」
「ああ悪い、なんか楽しくてな……」
やばい、ついうっかり感傷に浸り過ぎて口元が緩んでいたようだ。平常心平常心……。
しかし、そんなに威力はなかったものの、また腹にダメージ。これ以上は流石にやばいかもな。
「どうした!?来ないならこっちから行くぞぉ!」
フクロは真正面から俺の方へと走ってくる。
長期戦はキツそうだ。そろそろ決めに行かないと。
俺は走ってくるフクロに背を向ける。
『おっとなんだぁ!?ヤシマ選手!フクロ選手に背を向けたぁ!これはまずいぞ!?何か考えがあるのでしょうか!?』
「へっ、なんだ?試合を投げたわけじゃねぇだろうなぁ!」
フクロが俺の背後に来るタイミングを気配で感じ取る。そして俺はジャンプしながら体を回転させる。
バキィ!
「がはぁ!」
回転しながら俺は右足で奴の顎を蹴り抜いた。
『おぉーーと!!!ヤシマ選手!フクロ選手に背を向けたかと思いきや、体を反転させ、強烈な回し蹴りを繰り出したぁぁぁぁ!!!』
そう、これはいわゆる『ローリング・ソバット』だ。
本来、片足を軸にして、軸足の方向へ体を回し、相手に背を向けたところで軸足を入れ替え、その勢いを利用し、相手を足の裏で蹴り飛ばす技。多くの格闘技では『後ろ回し蹴り』と呼ぶ。
だが、それを応用し、ジャンプしながら回し蹴りを放つこの技をプロレスにおいて『ローリング・ソバット』と呼ぶ。
ちなみに『ローリング・ソバット』といえばタイガーマ◯クだ。
顎に強烈な蹴りを入れられ、意識が混濁しているのか、フクロはなかなか立ち上がれずにいる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
試合も恐らく終盤だろう。俺は決めに入るべく、雄叫びをあげ、気合いを入れた。
『ヤシマ選手ほえたぁぁぁぁ!!!勝負を決めるのか!?』
これで終わりにしてやる。
年が明けました。
喪中の為、挨拶は控えさせていただきます。
更新、不定期になりますが出来る限り頑張ります。
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