異世界でもプロレスラーになれますか?
第45話 竜虎の闘い(前編)
◆
「オラオラオラァァァァ!!」
開始序盤から激しい拳打の連続を繰り出すフクロ。パワーはかなりのものだな。攻撃力なら俺といい勝負かもしれない。
そんな攻撃の嵐を俺はギリギリのところで避け、また防いでいる。
「オラオラそんなもんかぁ!?大層な口叩いてた割には防戦一方じゃねぇか!」
確かにフクロの言う通りだな。ぼちぼち反撃といくか。
「いくぞぉぉぉぉ!!」
俺はフクロの拳打を腕で弾き、その場でドロップキックを奴の胸板に叩き込んだ。
2回戦では相手を闘技場の端まで吹き飛ばした技だったが、やはり今までの相手とは格が違う。フクロは3メートルほど後ろに飛んだがそこで両足に力を入れて止まった。
「ってぇな!スゲェパワーじゃねぇか!」
どうやら大したダメージはなさそうだ。
「ウラァァ!!」
フクロとの距離を詰め、奴の右頬にエルボーをくらわせた。だがフクロは微動だにせずその場から動くことはなかった。
「まだまだぁぁぁぁ!!」
それならばと俺はさらにエルボーの連発を奴に繰り出し、次第にダメージが蓄積されたのか、フクロは少しではあるがよろめく。
「っかぁ!効くじゃねぇか!やっぱ闘いはこうじゃなきゃな!」
そう言ってフクロは再び拳打の連続を繰り出してきた。いい加減ワンパターン過ぎてつまらんぞ?
「オラまた防戦一方か?もっと攻めて来いやぁ!!」
言われるまでもない。
奴の拳を上手く躱し今度は奴の胸板に逆水平を叩き込む。
バチーン!という音とともにフクロはよろめいた。
「っ!効くなぁ!だが、まだまだだ!」
懲りずにまた真正面から突っ込んでくる。こいつ学習しないのかねぇ?
またしても俺の顔面めがけ腕を振り上げたフクロ。腕をクロスさせ防ぐ体勢をとる。
だがまた顔面めがけて仕掛けて来るかと思っていた俺が甘かった。
「ぐはっ!」
顔面めがけて振り上げた拳は寸前で止められ、もう片方の拳で腹部にモロにボディブローを食らってしまう。
腹は全くノーマークだった俺は堪らずその場に膝をついた。
「くっ、やっぱ凄い威力だな……」
「お前の打撃もなかなかのもんだぜ?まぁ俺の方が上だろうがな!ほら立てよ、まだ闘いは始まったばっかだぜぇ!」
そう言うが、まともに腹部にくらい、俺はすぐには動けなかった。そんな事もお構いなしにフクロは俺の脇腹へ蹴りを入れる。
俺は数メートル後ろに蹴り飛ばされ倒れ込んだ。
「がはっ、くっ!」
「おいおいまさかもう終わりなのか?とんだ期待外れだな」
そう言いながら俺の方に歩いてきたフクロは倒れている俺の頭を蹴る。だが、それはダメージを負わすような蹴りではない。まるで人を小馬鹿にするような弱い蹴り。それを何度も何度も……。
「……」
「ほら、来いよ。それとももうギブか?ならさっさと参ったしろよ!」
何度も小馬鹿にするように頭を蹴られ、俺は頭に血が上ってきた。
「なめんじゃねぇぞ!」
奴の足を両手で掴み俺は勢いよく立ち上がった。
「くらえぇぇぇぇ!」
俺は奴の足を両手で脇の下に掴んだまま内側に勢いよく倒れこむ。その勢いを利用し、回転力を加え、相手を投げ飛ばす技———飛龍竜巻投げ(ひりゅうたつまきなげ)、いわゆるドラゴンスクリューを繰り出した。
今や多くのレスラーの間で使われる技で、無理に技の勢いに堪えると膝関節を負傷する恐れがある。良い子は真似しないでね。
急な技に対応しきれないフクロはそのまま5メートルほど吹き飛び、受け身をとれず後頭部を地面に強打した。
「ぐああああぁぁぁぁ!」
頭部へのダメージもあるだろうが、それ以上に足へのダメージの方がでかいだろう。この世界に来て明らかにパワーが上がっているんだ。
フクロは足を押さえ、地面に転げ回っている。
が、今の俺は情けをかけるつもりはない。
フクロの頭を……いやフクロを掴み、立ち上がらせる。
俺は右手を奴の股の間から手を差し入れるように体を掴み、左手は首元を掴んでそのままひっくり返す様に抱え込んで背中側から地面に投げ倒す。
これは繋ぎによく使われるボディスラムだ。
「これで終わりにしてやる」
残念ながらここにリングは無い。なので大したパフォーマンスもできないが、一応これだけはやっておこう。
俺は右手を握り、親指だけを立て首を搔き切る仕草を行う。
「決めるぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
『おぉーーーと!ドラゴン・ヤシマ選手!早くも勝負を決めるのか!?何をする気だ!?』
俺は倒れているフクロとは逆、闘技場の石壁の方へと走り出す。そして勢いよく石壁の上へとジャンプし、両足で着地。そのまま俺は円弧を描くように後方にバク転をし、仰向けに倒れているフクロめがけボディプレス———いわゆる『ムーンサルトプレス』を繰り出す。
『と、飛んだぁぁぁぁ!!!ドラゴン・ヤシマ選手!フクロ選手とは逆の方向へと走り出したと思いきや、まさかの宙返り!このまま決まってしまうのかぁぁぁぁ!!!』
「これで終わりだぁぁぁぁ!!!」
勝利を確信した俺だったが、体がフクロの上に落ちる寸前、奴は両足を上に向け俺の腹部めがけ、鋭い蹴りを出していた。
「がっ!?」
当然、空中にいる俺は避ける事など出来るはずもなく、またしても腹部に大ダメージをもらう形となってしまった。
「はぁぁぁぁ、全くイカれた技ばっか使いやがって。なんなんだお前は?流石に最後のをまともに食らっちゃ、俺もだめだったかもなぁ。食らったらの話だけどな。ハハハッ!」
嘲笑うようにそう言いながら、フクロは俺の腹部を蹴り飛ばす。
「かはっ!く、この野郎……」
さっきもろに食らった腹部へのパンチに加え、予想外の腹部への蹴り上げ。
たまらず俺は血反吐を吐いた。
「おーう、結構効いてるみたいだなぁ。そんじゃ面白いもん見せてやんよ!」
力を溜めるように腕を引き、パンチを放つ体勢をとったフクロだが、明らかにそれが届く距離では無いのは明らかだった。
だがそれは次の瞬間に訪れる。
「ふっ!!!」
ドン!!!
「ぐはぁっ!」
何が起きたのか分からない。が、確かに殴られた。いや殴られたというより何かがぶつかったというところだろうか。
フクロが拳を突き出した直後、見えない何かが飛んできたのだ。
「な、何だ……何をした?」
「へへっ、分からねえか?ならもっとあびせてやんよ!オラァ!」
続けて1発、2発、3発とフクロは拳を突き出す。だが、やはり何も見えない。にも関わらずまるで衝撃波の様なものが次々と飛んでくる。
かろうじて腕で防御を固めているが、凄まじい威力の衝撃波に意識が持っていかれそうになる。
「…………っ!」
「オラァ!もう反撃する力も残ってねぇのか!?」
そうだ。これと同じような技を前に見た。エルド戦の時ハイルさんが使っていた技と同じだ。拳が突き出される時と衝撃がやってくるタイミングもあの時と同じ。
まさかハイルさんと同じ技の使い手がいたとはな。
「そうとわかれば対策は……ある!」
「……ほお、何か思いついたみたいだな」
「あぁ、ここからが本番だ」
「面白れぇ!やれるもんならやってみろぉ!」
行くぞ。反撃開始だ。
「オラオラオラァァァァ!!」
開始序盤から激しい拳打の連続を繰り出すフクロ。パワーはかなりのものだな。攻撃力なら俺といい勝負かもしれない。
そんな攻撃の嵐を俺はギリギリのところで避け、また防いでいる。
「オラオラそんなもんかぁ!?大層な口叩いてた割には防戦一方じゃねぇか!」
確かにフクロの言う通りだな。ぼちぼち反撃といくか。
「いくぞぉぉぉぉ!!」
俺はフクロの拳打を腕で弾き、その場でドロップキックを奴の胸板に叩き込んだ。
2回戦では相手を闘技場の端まで吹き飛ばした技だったが、やはり今までの相手とは格が違う。フクロは3メートルほど後ろに飛んだがそこで両足に力を入れて止まった。
「ってぇな!スゲェパワーじゃねぇか!」
どうやら大したダメージはなさそうだ。
「ウラァァ!!」
フクロとの距離を詰め、奴の右頬にエルボーをくらわせた。だがフクロは微動だにせずその場から動くことはなかった。
「まだまだぁぁぁぁ!!」
それならばと俺はさらにエルボーの連発を奴に繰り出し、次第にダメージが蓄積されたのか、フクロは少しではあるがよろめく。
「っかぁ!効くじゃねぇか!やっぱ闘いはこうじゃなきゃな!」
そう言ってフクロは再び拳打の連続を繰り出してきた。いい加減ワンパターン過ぎてつまらんぞ?
「オラまた防戦一方か?もっと攻めて来いやぁ!!」
言われるまでもない。
奴の拳を上手く躱し今度は奴の胸板に逆水平を叩き込む。
バチーン!という音とともにフクロはよろめいた。
「っ!効くなぁ!だが、まだまだだ!」
懲りずにまた真正面から突っ込んでくる。こいつ学習しないのかねぇ?
またしても俺の顔面めがけ腕を振り上げたフクロ。腕をクロスさせ防ぐ体勢をとる。
だがまた顔面めがけて仕掛けて来るかと思っていた俺が甘かった。
「ぐはっ!」
顔面めがけて振り上げた拳は寸前で止められ、もう片方の拳で腹部にモロにボディブローを食らってしまう。
腹は全くノーマークだった俺は堪らずその場に膝をついた。
「くっ、やっぱ凄い威力だな……」
「お前の打撃もなかなかのもんだぜ?まぁ俺の方が上だろうがな!ほら立てよ、まだ闘いは始まったばっかだぜぇ!」
そう言うが、まともに腹部にくらい、俺はすぐには動けなかった。そんな事もお構いなしにフクロは俺の脇腹へ蹴りを入れる。
俺は数メートル後ろに蹴り飛ばされ倒れ込んだ。
「がはっ、くっ!」
「おいおいまさかもう終わりなのか?とんだ期待外れだな」
そう言いながら俺の方に歩いてきたフクロは倒れている俺の頭を蹴る。だが、それはダメージを負わすような蹴りではない。まるで人を小馬鹿にするような弱い蹴り。それを何度も何度も……。
「……」
「ほら、来いよ。それとももうギブか?ならさっさと参ったしろよ!」
何度も小馬鹿にするように頭を蹴られ、俺は頭に血が上ってきた。
「なめんじゃねぇぞ!」
奴の足を両手で掴み俺は勢いよく立ち上がった。
「くらえぇぇぇぇ!」
俺は奴の足を両手で脇の下に掴んだまま内側に勢いよく倒れこむ。その勢いを利用し、回転力を加え、相手を投げ飛ばす技———飛龍竜巻投げ(ひりゅうたつまきなげ)、いわゆるドラゴンスクリューを繰り出した。
今や多くのレスラーの間で使われる技で、無理に技の勢いに堪えると膝関節を負傷する恐れがある。良い子は真似しないでね。
急な技に対応しきれないフクロはそのまま5メートルほど吹き飛び、受け身をとれず後頭部を地面に強打した。
「ぐああああぁぁぁぁ!」
頭部へのダメージもあるだろうが、それ以上に足へのダメージの方がでかいだろう。この世界に来て明らかにパワーが上がっているんだ。
フクロは足を押さえ、地面に転げ回っている。
が、今の俺は情けをかけるつもりはない。
フクロの頭を……いやフクロを掴み、立ち上がらせる。
俺は右手を奴の股の間から手を差し入れるように体を掴み、左手は首元を掴んでそのままひっくり返す様に抱え込んで背中側から地面に投げ倒す。
これは繋ぎによく使われるボディスラムだ。
「これで終わりにしてやる」
残念ながらここにリングは無い。なので大したパフォーマンスもできないが、一応これだけはやっておこう。
俺は右手を握り、親指だけを立て首を搔き切る仕草を行う。
「決めるぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
『おぉーーーと!ドラゴン・ヤシマ選手!早くも勝負を決めるのか!?何をする気だ!?』
俺は倒れているフクロとは逆、闘技場の石壁の方へと走り出す。そして勢いよく石壁の上へとジャンプし、両足で着地。そのまま俺は円弧を描くように後方にバク転をし、仰向けに倒れているフクロめがけボディプレス———いわゆる『ムーンサルトプレス』を繰り出す。
『と、飛んだぁぁぁぁ!!!ドラゴン・ヤシマ選手!フクロ選手とは逆の方向へと走り出したと思いきや、まさかの宙返り!このまま決まってしまうのかぁぁぁぁ!!!』
「これで終わりだぁぁぁぁ!!!」
勝利を確信した俺だったが、体がフクロの上に落ちる寸前、奴は両足を上に向け俺の腹部めがけ、鋭い蹴りを出していた。
「がっ!?」
当然、空中にいる俺は避ける事など出来るはずもなく、またしても腹部に大ダメージをもらう形となってしまった。
「はぁぁぁぁ、全くイカれた技ばっか使いやがって。なんなんだお前は?流石に最後のをまともに食らっちゃ、俺もだめだったかもなぁ。食らったらの話だけどな。ハハハッ!」
嘲笑うようにそう言いながら、フクロは俺の腹部を蹴り飛ばす。
「かはっ!く、この野郎……」
さっきもろに食らった腹部へのパンチに加え、予想外の腹部への蹴り上げ。
たまらず俺は血反吐を吐いた。
「おーう、結構効いてるみたいだなぁ。そんじゃ面白いもん見せてやんよ!」
力を溜めるように腕を引き、パンチを放つ体勢をとったフクロだが、明らかにそれが届く距離では無いのは明らかだった。
だがそれは次の瞬間に訪れる。
「ふっ!!!」
ドン!!!
「ぐはぁっ!」
何が起きたのか分からない。が、確かに殴られた。いや殴られたというより何かがぶつかったというところだろうか。
フクロが拳を突き出した直後、見えない何かが飛んできたのだ。
「な、何だ……何をした?」
「へへっ、分からねえか?ならもっとあびせてやんよ!オラァ!」
続けて1発、2発、3発とフクロは拳を突き出す。だが、やはり何も見えない。にも関わらずまるで衝撃波の様なものが次々と飛んでくる。
かろうじて腕で防御を固めているが、凄まじい威力の衝撃波に意識が持っていかれそうになる。
「…………っ!」
「オラァ!もう反撃する力も残ってねぇのか!?」
そうだ。これと同じような技を前に見た。エルド戦の時ハイルさんが使っていた技と同じだ。拳が突き出される時と衝撃がやってくるタイミングもあの時と同じ。
まさかハイルさんと同じ技の使い手がいたとはな。
「そうとわかれば対策は……ある!」
「……ほお、何か思いついたみたいだな」
「あぁ、ここからが本番だ」
「面白れぇ!やれるもんならやってみろぉ!」
行くぞ。反撃開始だ。
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