異世界でもプロレスラーになれますか?

大牟田 ひろむ

第15話 街への帰還






 ガーゴイルを倒した俺たちは街から衛兵を呼び、エルドの身柄を引き渡した。毒が回っていたため、なんの抵抗もすることなく運ばれていった。
 そして俺が倒したガーゴイルはなにかと素材になるとの事で街に持ち帰ることになったのだが……。

「重い……」

 今回の戦いでかなりレベルは上がったとは思うのだが、流石に重い。流石に自分よりでかいので尻尾を掴んで引きずって運ぶしか手段が無い。両手で抱えて運んでもいいんだが街までは結構距離があるので流石に骨が折れそうだからな。

「ほーら竜平。しっかり、あと少しで街に着くわよ」

 簡単に言ってくれる。かれこれ2時間こいつを運んでるってのに……。
 
「ていうか竜平。身体能力強化のスキル使えばもっと楽に運べたんじゃ無いの?」
「別に忘れてたわけじゃない。俺は魔力量が平均レベルだからな。何回もアビリティブースト使ったせいで魔力がすっからかんなんだよ」

 そう、このアビリティブーストは魔力の消費量がハンパない。他の魔法も使うことを考えたら1日に2回が限度だろう。ガーゴイルを倒したことで少しは魔力量も上がったとは思うが今のところはむやみやたらには使えない。

「まぁアクアフォールの魔法がまるでジョウロみたいだったもんね。あれじゃしょうがないか」

 気にしてるとこズバッと言ってくれるな、泣くぞ俺。

「まぁ気にしない気にしない!ほら、もう街だよ!」

 気がつくともう街のすぐそばまで来ていた。とりあえず疲れたしガーゴイルの素材を鑑定してもらって今日は寝るかな。
 




 ハイルさんはギルドへ報告に行くとかで先に行ってしまった。俺とシルフィはガーゴイルを鑑定してもらう為、とある人物に会いに来た。

「こんちわーっす」

 扉を開けて中に入るといかにも作業場って感じの雰囲気を醸し出している空間の中に黙々と本を読みふけっている幼女が1人。名前はセリエ・トリエステ。この街で鑑定士をしている。子供のように見えるが年は俺より上———いわゆるロリババアってやつだな。
 どうやら本に夢中で俺たちに気づいていないようだ。

「おーいセリエー」

 シルフィが呼びかけるが反応はない。

「おいって言ってるでしょうが!」

 イラッとしたのかシルフィはセリエの本を取り上げた。
 突然のことに困惑しているセリエだったが周りを見渡したところでようやく俺たちに気づいた。

「あー!りゅうびにシルキー!」
「どこの武将だ!◯園の誓いとか立てた覚えないぞ!」

 全くつい先日会ったばっかりだってのに。見た目に反して年食ってるから記憶力低下してるのか?

「まぁまぁ竜平、そのくらいで。セリエ、今日も鑑定の依頼に来たんだけどいいかな?」
「えー悪いけどまた今度にしてー。今良いところなんだから」

 いつのまにかシルフィから本を取り返しているセリエが俺たちがいるにもかかわらずまた本を読み始めた。
 本の表紙がこちら側に向いている為、どんな本を読んでいるのかは分かる。あえてタイトルは言わないがこのロリにこの本は絵面的によろしくないと思う。
 シルフィに関してはその本を見て顔を赤くしている。

「悪いけどこっちも早く済まして休みたいんだ、なんとか頼むよ」

 客より趣味優先とか商売人としてどうなんだ。

「むー、仕方ないなぁ。それじゃこれ買ってよ。かなり貴重なものだけど私には必要無いし、ちょうど新刊買うお金欲しかったんだー」

 鑑定の仕事をちゃんとしてればお金に困らないんじゃないのかなー。
 
「言いたいことはわかるよー。でもね、私は趣味に生きるために働いてるようなものだからね。趣味と仕事だったら趣味を優先するよ」

 このロリガキ……、いやロリババアか。

「それで、それはなんの素材なんだ?」
「これはねー、伝説の龍———ヴォルケーノドラゴンの皮だよ。装備を作るにはもってこいの素材だね」

 伝説の龍か。それはまたとんでもないのが出てきたな。かなり高値で買わされそうだがこの際仕方ない。
 
「わかった、買うよ。それより鑑定頼んだよ」

 そう言って俺達はセリエにガーゴイルの鑑定を任せて店を出る。明日には終わってるとの事なので、また明日行くことになった。

「はぁ、なんだか今日は色々あったねー。もうクタクタ。早く宿に帰ろう。お風呂入りたーい」

 無理もないな。ゴーレム戦ではシルフィは魔法でかなりのサポートをしてくれた。ほんとシルフィには世話になりっぱなしだ。

「ありがとなシルフィ」
「な、なによ改まって」
「今回はシルフィがいなきゃ俺はどうなってたか分からない。最悪死んでたかもしれない。だからシルフィがいてくれてほんと助かったよ、ありがとう」
「いや、私なんて大したことしてないし、戦ってる時もほとんど竜平に任せっぱなしだったっていうか……」
「いいやシルフィのサポートがあったから無事に帰ってこれたんだよ」

 嘘は言っていない。現にこうして大した怪我もなく全員帰ってこれたんだから。

「そっか……私も役に立てたんだ……」
「シルフィ?」

 シルフィがボソッと呟いたがちょうど宿に着いたところだったので中に入る。

「そういえばシルフィ。何か話したいことがあったんじゃなかったっけ?」

 ゴーレムとの戦いの後シルフィは何かを話そうとしていた。しかし、ハイルさんの方が気になり後回しにしていた。あの時のシルフィの顔はどこか憂いに満ちた表情をしていた。すると……

「ごめん、その事なんだけどまた今度でいいかな。今日はもう疲れちゃったから」

 そう言ってシルフィは自室の方へ戻って行った。あの時より少しばかり表情が柔らかくなったように見えたな。
 また今度と言っていた事だし、気長に待つとしよう。
 俺も自室に戻り眠りについた。


前回からだいぶ時間が空いてしまいました。
色々あって更新遅れたことをお詫び申し上げます。
これにて2章は終わりとなり、次回からは3章に入ります。

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