異世界でもプロレスラーになれますか?
第7話 腕試し(後編)
バゴォォォォォォォン!!!
大きな音とともに粉々に砕け散るマッスルロックゴーレムの姿が目の前にある。そしてそれを粉々にした竜平の姿も……
「ふぅ、なんとかなった〜。お、大丈夫かシルフィ。まるで強敵を前にして腰を抜かして動けないモブキャラみたいになってるぞ?」
するとシルフィは涙目で顔を赤らめ、キッと睨みつけてきた。
「な、なによ文句ある!?というかなんであんたそんなにピンピンしてるの!あんなに勢いよく吹き飛ばされたのに。そもそも今何したの?こんな大きなマッスルロックゴーレムが粉々って……」
「いやぁ内心俺もすげー焦ったんだよ。めっちゃ吹っ飛ばされて地面にドーンと落ちたんだけど、この耐久力のせいか全然ピンピンしててさ。そしたら遠くでシルフィがこいつにやられそうになってるのを見て思わず走り出したんだ。そこで走りながら俺のスキル、『ドロップキック』を使ったらなんかすげー飛んでさ。そのままこいつに突っ込んじゃったってわけ」
あまりの驚きに言葉が出てこないシルフィ。まぁ当然といえば当然だよな。俺もまさか、あんな怪物をドロップキック1発で倒せるなんて微塵も思ってなかったし。これはなかなかクセになるパワーだな。今度他のも試してみよう。
なんて事を考えていると、突如、再び大きな地震が起こった。なんだなんだと周囲を見渡すと、山の方角から先ほどより小ぶりのマッスルロックゴーレムが3体。だいたい10メートルくらいだろうか。
「ひっ、また出たぁ〜、竜平さっきみたいになんとかしてよ!あんたなら余裕でしょ?」
そんな事を言ってくるシルフィ。
「確かにさっきの技を使えば1発だ。だがなシルフィよく覚えておけ、プロレスラーは同じ技をポンポンポンポン使ったりはしないんだ! 」
「そんな事知らないからさっさとやっちゃってよー!他のスキルも使ったらいいでしょー!」
やれやれこれはプロレスというものをじっくりと教えていかなければならないようだな。と、そんな事考えてる場合じゃなかった。
「そんじゃ、やりますか」
まず最初に向かってきたマッスルロックゴーレムに試すスキルーーーめんどくさいから技でいいか。そうだなぁ、ドロップキックであの威力だし、もうちょい威力の下がる技を……
「逆水平!!」
これは逆水平チョップといって、手を水平にし、手のひらを下に向け相手の喉元もしくは胸板に叩き込むわざである。
プロレスではもはや定番の技で、近年使わない選手がいないほどの技である。まぁまず決め手にはならない技ではあるが……
ズバァァァァァン!!
真っ二つになった。
「えぇぇ……そんな威力になっちゃうんだ」
逆水平で岩が真っ二つとかどうリアクションしたらいいんだよ。
「竜平今何したの?」
俺に聞かれても、逆水平チョップかましてやったとしか。
「まぁ何したか分からないけどとりあえず他の2体もやっちゃって!そのあと聞かせてもらうからね!」
なんて人任せな。まぁ女の子だししょうがないか。
すると2体目のマッスルロックゴーレムがやってくる。ズシンズシンと歩くたび、地鳴りがするがもう気にならない。
「さぁて次はどの技でいこうかな?」
技が多すぎて迷っちゃうよ全く。いいや、チョップつながりでこれでいこう。某レスラーが得意としていた技だ。
「袈裟斬りチョップ!!」
さっきの逆水平を縦にやる感じかな?色々やり方はあるけどとりあえずうまくいった。先程は上半身と下半身に分かれるように真っ二つに割れたが、今回は頭から足まで完全に左右に真っ二つになった。
「すっごーい……」
背後からシルフィの声が漏れている。そんなはっきり言われると照れちゃうんだが。
「さあてあと1体だな。どうやって倒そうか」
俺はふと思った。そういえば魔法使えるんだよな。最後くらい魔法を使ってみたい。しかし魔法ってどうやって使うんだろ。
「なぁシルフィ、魔法ってどうやって使うんだ?」
「えぇ?魔法なんて使わなくても竜平なら余裕で勝てるじゃん」
「まぁそうなんだがな、せっかくだし魔法を使ってみたいんだよ。やり方だけでも教えてくれよ〜」
確か5つの属性全てに適性はあったし、軽く覚えるくらいなら全然いいだろう。楽しそうだし。
「うん、教えるのは全然良いんだけどね、前にも言ったけどあいつ魔法耐性が凄く高いからあんまり期待しないほうがいいよ?一応水属性が弱点だけど」
「まぁお試しお試し。1発やったらすぐやめるからさ。それじゃよろしくお願いします」
とりあえず教えてもらう立場上、頭を下げておく。
「わかったわ、とりあえず片腕を前に出して。そして体に流れる魔力を手に集めるような感覚で呪文を唱えるのよ。そうね、最初だからこれにしよっか。『アクアフォール』と唱えて」
「アクアフォール!!」
チョロチョロチョロ……
マッスルロックゴーレムの頭上に水が垂れた。何だろうこの残念な感じ。水浴びにも及ばないこの光景。
「ま、まぁ竜平は魔法攻撃の数値は平均レベルだし最初はこんなもんよ」
明らかに笑いをこらえているようにしか見えないシルフィ。教えてもらった立場上何も言い返せないな。
「あ、あと魔法は自身に纏わせる事も出来るよ!物理攻撃に魔法の力が付与されたりする感じかな」
それはいい事を聞いた。もう普通の魔法にはうんざりしたところだ。よし、やってみよう。
「呪文はアクアヴェールだよ! 纏った状態でさっきの逆水平チョップっていうのやってみて!」
だから同じ技は……まぁ今回はいいか。
「アクアヴェール!からの逆水平!!」
俺の手刀から放たれた逆水平は水の刃を纏い、離れたマッスルロックゴーレムに向かって飛んでいく。
スパァァァァン!
随分と綺麗な切り口だ。凄い技が生まれたな。シルフィに感謝だ。そんなシルフィは顔を赤らめ、じっと俺の顔を見ている。
「どうした?顔が赤いぞ?」
「な、なな何でもない!それにしても凄いじゃん!遠距離攻撃までできるようになるなんて。しかもあの威力だし。間違いなく竜平は私たちの勇者だよ!」
なんか、こういうの悪くないな。頼られるって感じ。
とりあえず依頼を終え、ギルドに戻り、素材の回収と鑑定を済ませる。なんでもマッスルロックゴーレムの体内に謎の宝玉のようなものが見つかったらしい。ここでは何かわからないので、専門の人に見てもらう事になった。しかし今日は疲れたなぁ。
こんな日はさっさと寝てしまおう。
初バトルでしたが、魔法があんまり使えない、まさに物理攻撃特化な主人公にしました。これからは魔法とプロレス技を掛け合わせて使っていこうかと思います(笑)
大きな音とともに粉々に砕け散るマッスルロックゴーレムの姿が目の前にある。そしてそれを粉々にした竜平の姿も……
「ふぅ、なんとかなった〜。お、大丈夫かシルフィ。まるで強敵を前にして腰を抜かして動けないモブキャラみたいになってるぞ?」
するとシルフィは涙目で顔を赤らめ、キッと睨みつけてきた。
「な、なによ文句ある!?というかなんであんたそんなにピンピンしてるの!あんなに勢いよく吹き飛ばされたのに。そもそも今何したの?こんな大きなマッスルロックゴーレムが粉々って……」
「いやぁ内心俺もすげー焦ったんだよ。めっちゃ吹っ飛ばされて地面にドーンと落ちたんだけど、この耐久力のせいか全然ピンピンしててさ。そしたら遠くでシルフィがこいつにやられそうになってるのを見て思わず走り出したんだ。そこで走りながら俺のスキル、『ドロップキック』を使ったらなんかすげー飛んでさ。そのままこいつに突っ込んじゃったってわけ」
あまりの驚きに言葉が出てこないシルフィ。まぁ当然といえば当然だよな。俺もまさか、あんな怪物をドロップキック1発で倒せるなんて微塵も思ってなかったし。これはなかなかクセになるパワーだな。今度他のも試してみよう。
なんて事を考えていると、突如、再び大きな地震が起こった。なんだなんだと周囲を見渡すと、山の方角から先ほどより小ぶりのマッスルロックゴーレムが3体。だいたい10メートルくらいだろうか。
「ひっ、また出たぁ〜、竜平さっきみたいになんとかしてよ!あんたなら余裕でしょ?」
そんな事を言ってくるシルフィ。
「確かにさっきの技を使えば1発だ。だがなシルフィよく覚えておけ、プロレスラーは同じ技をポンポンポンポン使ったりはしないんだ! 」
「そんな事知らないからさっさとやっちゃってよー!他のスキルも使ったらいいでしょー!」
やれやれこれはプロレスというものをじっくりと教えていかなければならないようだな。と、そんな事考えてる場合じゃなかった。
「そんじゃ、やりますか」
まず最初に向かってきたマッスルロックゴーレムに試すスキルーーーめんどくさいから技でいいか。そうだなぁ、ドロップキックであの威力だし、もうちょい威力の下がる技を……
「逆水平!!」
これは逆水平チョップといって、手を水平にし、手のひらを下に向け相手の喉元もしくは胸板に叩き込むわざである。
プロレスではもはや定番の技で、近年使わない選手がいないほどの技である。まぁまず決め手にはならない技ではあるが……
ズバァァァァァン!!
真っ二つになった。
「えぇぇ……そんな威力になっちゃうんだ」
逆水平で岩が真っ二つとかどうリアクションしたらいいんだよ。
「竜平今何したの?」
俺に聞かれても、逆水平チョップかましてやったとしか。
「まぁ何したか分からないけどとりあえず他の2体もやっちゃって!そのあと聞かせてもらうからね!」
なんて人任せな。まぁ女の子だししょうがないか。
すると2体目のマッスルロックゴーレムがやってくる。ズシンズシンと歩くたび、地鳴りがするがもう気にならない。
「さぁて次はどの技でいこうかな?」
技が多すぎて迷っちゃうよ全く。いいや、チョップつながりでこれでいこう。某レスラーが得意としていた技だ。
「袈裟斬りチョップ!!」
さっきの逆水平を縦にやる感じかな?色々やり方はあるけどとりあえずうまくいった。先程は上半身と下半身に分かれるように真っ二つに割れたが、今回は頭から足まで完全に左右に真っ二つになった。
「すっごーい……」
背後からシルフィの声が漏れている。そんなはっきり言われると照れちゃうんだが。
「さあてあと1体だな。どうやって倒そうか」
俺はふと思った。そういえば魔法使えるんだよな。最後くらい魔法を使ってみたい。しかし魔法ってどうやって使うんだろ。
「なぁシルフィ、魔法ってどうやって使うんだ?」
「えぇ?魔法なんて使わなくても竜平なら余裕で勝てるじゃん」
「まぁそうなんだがな、せっかくだし魔法を使ってみたいんだよ。やり方だけでも教えてくれよ〜」
確か5つの属性全てに適性はあったし、軽く覚えるくらいなら全然いいだろう。楽しそうだし。
「うん、教えるのは全然良いんだけどね、前にも言ったけどあいつ魔法耐性が凄く高いからあんまり期待しないほうがいいよ?一応水属性が弱点だけど」
「まぁお試しお試し。1発やったらすぐやめるからさ。それじゃよろしくお願いします」
とりあえず教えてもらう立場上、頭を下げておく。
「わかったわ、とりあえず片腕を前に出して。そして体に流れる魔力を手に集めるような感覚で呪文を唱えるのよ。そうね、最初だからこれにしよっか。『アクアフォール』と唱えて」
「アクアフォール!!」
チョロチョロチョロ……
マッスルロックゴーレムの頭上に水が垂れた。何だろうこの残念な感じ。水浴びにも及ばないこの光景。
「ま、まぁ竜平は魔法攻撃の数値は平均レベルだし最初はこんなもんよ」
明らかに笑いをこらえているようにしか見えないシルフィ。教えてもらった立場上何も言い返せないな。
「あ、あと魔法は自身に纏わせる事も出来るよ!物理攻撃に魔法の力が付与されたりする感じかな」
それはいい事を聞いた。もう普通の魔法にはうんざりしたところだ。よし、やってみよう。
「呪文はアクアヴェールだよ! 纏った状態でさっきの逆水平チョップっていうのやってみて!」
だから同じ技は……まぁ今回はいいか。
「アクアヴェール!からの逆水平!!」
俺の手刀から放たれた逆水平は水の刃を纏い、離れたマッスルロックゴーレムに向かって飛んでいく。
スパァァァァン!
随分と綺麗な切り口だ。凄い技が生まれたな。シルフィに感謝だ。そんなシルフィは顔を赤らめ、じっと俺の顔を見ている。
「どうした?顔が赤いぞ?」
「な、なな何でもない!それにしても凄いじゃん!遠距離攻撃までできるようになるなんて。しかもあの威力だし。間違いなく竜平は私たちの勇者だよ!」
なんか、こういうの悪くないな。頼られるって感じ。
とりあえず依頼を終え、ギルドに戻り、素材の回収と鑑定を済ませる。なんでもマッスルロックゴーレムの体内に謎の宝玉のようなものが見つかったらしい。ここでは何かわからないので、専門の人に見てもらう事になった。しかし今日は疲れたなぁ。
こんな日はさっさと寝てしまおう。
初バトルでしたが、魔法があんまり使えない、まさに物理攻撃特化な主人公にしました。これからは魔法とプロレス技を掛け合わせて使っていこうかと思います(笑)
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