忍者修行は楽じゃない?!〜普通ライフを送るために修行せざるを得ませんでした〜
55話 初めての悪魔退治任務
  そして、校長先生の長い話がある始業式が終わり、2.3.4時間目の授業が終わり、いつも通り屋上に赴いた。
  そこにはいつも通り師匠は佇んでいた。今日は重要な話があるらしい。俺もやっと下忍となったわけだ。忍の任務の事だろうか。
  少しワクワク気分でいると、師匠は相変わらず俺の心を勝手に読み、話し出す。
「それもある。が、悪魔についてもう少し詳しく話そうと思ってな」
「悪魔の事なら結構聞いたつもりなんだけど……」
「悪魔の強さについてだ。それにリンにも話しといた方が良いしな」
「そういえば、さっきから黒い物体がウヨウヨいるね」
「見えるのかよ!」
「うん!浩介の身体に取り憑いてるわけだし、それにユウタイ?でも魔法が使えるみたいだし、目に光魔法かければ、そういうエネルギーのようなものが見えるようになるんだ!まぁ、攻撃魔法とかは干渉できないみたいだけど……」
「へ、へぇ……」
  俺が寝ている間に試したのだろうか。もし干渉してたらどうすんだ。
「その黒い物体が悪魔だ。まぁ、マナや魔法を使わないと見えないような悪魔は雑魚同然だ。以前にも言ったが悪魔は鏡の中にいる。だからそこら辺の雑魚は私達の世界に直接干渉はできない」
「なるほどな」
「でもでも、雑魚じゃない強い悪魔は干渉できるって事だよね?」
「あぁ、その通りだ」
  あれ、飲み込み早くね?さすが、剣と魔法の世界で生きてただけある……ってピースすんな!
  そうだった、リンは俺の守護霊となったおかげで俺の考えてる事が伝わってしまうのだ。
「浩介に取り憑いていた悪魔、要するに鏡の世界で負の感情を多く食った奴はその負の感情をマナに変え、こちらに干渉する力を手に入れ、さらに純度のある負の感情を求め、彷徨う。そういう悪魔は下忍などでは対応できないだろう」
「そりゃ苦戦するわけだ」
  本当にあの時は死ぬかと思った。
  でも、あの悪魔が俺に取り憑いていなかったら俺は覚醒という力を手に入れる事が出来なかった。
「私は上忍になりたてで、この神奈川県しか任せてもらえてないが、雑魚悪魔もいずれこちらに干渉する強力な悪魔になりかねないから毎日神奈川県を駆け回って悪魔退治。これが忍の仕事だ」
「ま、毎日?」
「当たり前だ、学校があるから昼時は無理だが深夜から朝までやってる。お前が寝てる間に数百キロも走って悪魔退治をしていたのだ」
「まじか」
  よく倒れないな。でも土曜日になると師匠はいつも部屋から出てこないな。寝てるのか?
「それはこれを飲んでいるからな」
  師匠はビンを懐から取り出した。その中から石ころサイズの緑色の玉を手のひらに乗せ、ほれと見せてくれる。ものすごく怪しい色だ……。
「これを飲むと1日中眠りにつく事になってしまうが、1週間の疲れを取り、そしてその次の1週間どれだけ起きてようが疲れを感じさせなくなる丸薬だ。まあ超強エナジードリンクだな」
「超強ってもんじゃないけどな」
  つまりこれがあれば任務の後でも学校の授業に集中できるって事か。
  すると、師匠はそのビンを俺に差し出す。
「お前にくれてやる」 
「おお、ありがとう。……てことは」
「ああ、次の日曜日から悪魔退治だ。これで私も少しは楽になる」
「嘘だろ……」
  忍者には最低限の休息しかない事が改めて伝わった。
---
「つまり!この地域やその他の街について知る事ができるってことだよね!」
「ま、まぁな。よくそんなテンション上がれるな」
「もう幽霊だから疲れるなんて事はないし、寝る必要もないからね!それにこの世界について早く詳しくなりたいしね!」
  下校時、木の上やビルの上などを駆け抜けながらリンは意気揚々としていた。
  ちなみに俺は、すでに両足裏にマナの塊を装着せずに飛ぶことができるようになった。
  あの話の後、師匠にマナの塊がダサいと言われ数分で塊無しでの移動をマスターした。といってもマナの塊を伸ばし、足の裏に何層も重ねただけだから、すぐにマスターできた。特に変化がないように見える。
  しかし、これだけで小回りが利くようになった。調整が上手くなれば、戦闘時も素早く相手を仕留める事ができる。
  正直、自分もダサいと思っていたからあっちの世界ではあまり使わないようにしていた。
「私もダサいって思ってたよ!」
「報告しなくて良いから!」
  まぁ、こっちの方が集中力そんな要らないから結構余裕が生まれる。他の忍とコミュニケーションをとる時のためにもこっちの方がいいだろう。それに、初対面の人にダサいとか言われないで済むし。
「早く悪魔退治したいなぁ!あ、その時は任せてね!私も力になるから!」
どうやらリンはこの世界を気に入ってくれたらしい。
ん?力になる?
「いやいや、リンは魔法とかではこの世界に干渉できないんじゃないのかよ」
「ふふふ、だいじょーぶ!私に考えがあるから!」
 リンの何か企んでるような笑みを見て、とにかく日曜日にならない事を願った。
  
---
「よし、これから悪魔退治だ」
「まぁそんな気はしてたけど、早すぎない?」
  現在日曜日の午後11時。
  来て欲しくない日までの時間の経過が早く感じるのは俺だけか?実際、昨日はあの薬を飲んだせいで一日分は早く感じるんだろうけど。
「今私たちがいるのは横浜だが、ここは神奈川で1番悪魔が発生する。人の数だけ悪魔がいるからな。今日はここ周辺の悪魔を狩る」
「あぁ、ついに始まるのかぁ」
「わぁ、ここらへん凄い光ってるなぁ。これが都会、ってやつなんだね!」
「この先にある東京なんてとこに行けばもっと都会だ。ここなんかより凄い光ってるし、人も沢さ……」
「私の話を聞け」
「「あ痛?!!」」
  マナの込められたデコピンは頭をかち割るんじゃないかという痛さだった。つーか、マナ通せばリンに触れられるのか。リンも驚いたらしく、額を抑えながら目をかっぴらいている。
  「その説明は後だ。とりあえず、悪魔退治だ。現界にいる悪魔を見つけたら全力でマナを絞り出せ。感知してやるから」
  「おう」
  「では、散!!」
  こうして下忍になって初めての悪魔退治がスタートした。
 
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