忍者修行は楽じゃない?!〜普通ライフを送るために修行せざるを得ませんでした〜
36話 初クエスト!
  「「「ガァァアッ!!」」」
  「ぎゃーー!!」
  「ほらぁ!そいつも倒せないようじゃ魔王なんて倒せないよぉ!」
  「だからって、いきなりエルウルフを同時に3体を相手にするのはちょっと……ぅおっ!あっぶねっ……!なんでモンスターが魔法使えるのぉ?!」
  「「「グラァアア!!」」」
  
  俺たちは今クエストを受注し、そのクエストをこなしていた。
  クエストボードの端にエルウルフ5体討伐という内容のクエストがあったので、この世界のモンスターに慣れるためにもやっとこうというリンの提案のもと、クエストを受注した。
  報酬は5万円。……うん、わりにあってない気がしてならない。こっち命懸けでやってんのに3万て……!
  ほんと世知辛いな、異世界……!
  どうやら、5体討伐すると、今持ってるギルドカードが記録してくれるとのこと。だから、わざわざ生首を持ってこなくても良いらしい。そもそも持てるような大きさじゃないし、絶対に嫌だ。気味悪い。
  ここはガナタル草原。この草原は交易のためにキャラバンなどが出入りの激しい場所である。そのためモンスターは駆除しとかないと、キャラバンが襲われてしまうとのことで、こうして冒険者が定期的にモンスターを駆除していかないといけないわけだ。
  ガナタルに近いため、移動時間はそこまでかからなかった。ガナタル草原っていうぐらいだからな。といっても歩いて2日はかかってしまった。
  しかし、この草原に俺たちが着いた時、そこにはエルウルフどころかモンスターの姿が1つも見当たらなかった。
  なので、俺は師匠から言われたマナに属性をつける修行をやっていた。リンは勝手に出てきたマシロとそこらへんで話していた。いつの間に仲良くなったのやら。
  それにしても、マナに属性を付与する修行。思ってた数倍難しい。火の場合は指先からボッと一瞬出るだけだし、水は公園の水道よりも水圧が弱いし、風は扇風機の『弱』以下、雷は静電気ぐらいの力しか出ない。
  これじゃあ、遁術も使えやしない。刀に纏わせるなんて夢のまた夢かもしれない。
  そう考えていたら集中が途切れてしまったので、疲れて休んでいると地面が揺れだし、なんと地中からエルウルフが3体、俺の目の前に急に現れだした。
  そして現在に至る、
  「……じゃねぇよ!!何回想なんかやってんだいきなり!……くそっ!こうなったら……マシロぉ!」
  
  俺は遠くにいるリンと一緒にいるマシロに助けを求める。マシロなら足を凍らせて、動けなくさせることができる。その方が手っ取り早い。しかしマシロは、
  プイッと頰を膨らませながらそっぽを向いた。
  あんにゃろぉおお?!ブローチ買ってやらなかっただけで、そこまで怒るかぁ?!……くそっ!さっきの修行のせいでマナが半分以下しかねぇ!
  「こうなったら……!」
  
  俺は足にマナを集中させ、加速する。そしてエルウルフたちから少し間を空け、鞘から刀を抜く。
  そして、刀を地面に突き刺す。
  「アマ、頼んだ!」
  「了解です」
  アマの声が頭に響くと同時に、エルウルフたちの足元から頑丈な樹が生える。そして、3体同時にこけさせる。
  アマは風を操る能力と、樹の成長を急速に早める能力を持っている。しかし、自身のマナを著しく吸い取られてしまうというリスクがある。
  それは刀の中にいれば俺がマナを送ることができるので問題はない。外に出られてたら直接触れてないとマナを送れないので色々と大変な能力者なのだ。その分、効果は絶大だ。
  刀に式神の能力を反映させるという修行を剣術の修行の時にやっていたのだ。
  
  「よし、ありがとうアマ!次はノノ、炎を頼む!」
  「はい!」
  今度はノノの声が頭に響くと、刀が炎に包まれる。 
  「よし!いくぜっ!」
  刀に炎を纏わせることによって、切れ味が上がる。
  これも師匠との剣術の修行の合間にやっていた修行でわかったことだ。しかし、マナで纏わせた方が切れ味が高いようだ。どうやら、この刀『羅』は俺のマナと呼応することで威力が上がるようだ。師匠が言っていたことだ、間違いないだろう。
  俺は転んでいるエルウルフたちの首筋を斬った。
  血が飛び散りまくるが、あまり見ないようにした。ていうか見たくない!気持ち悪い!
  エルウルフたちはその場でバタンッと動かなくなった。
  俺はギルドカードを確認する。そこには、
  『エルウルフ5体の討伐       3/5』と記されていた。
  
  「はぁ〜……疲れたぁ!」
 
  俺はその場に座り込む。まさかここまで神経に来るとは思ってなかった。まぁ、修行の途中にいきなり来たからかもしれないけど。
  「お疲れ!次は私のを見てて!」
  
  いつの間にか、俺の隣にいたリンは俺の肩をポンッと叩いてそう言った。
  すると、また地中からエルウルフが2体現れた。
  都合が良いなぁ、おい。
  「2体かぁ……。ちょっと物足りないけどいっか!じゃあ、浩介。私のやり方見ててね?」
  「お、おう!」
  2体で物足りないとか……。一体どういう闘い方なんだろうか。
  「よぉし!……炎よ、来たれ……!」
  そう詠唱すると、リンの足元が赤く輝きだす。
  足からまるでロケットのように炎を出し、宙を舞う。ちょうど、エルウルフの頭上より少し高めのところまで飛ぶと、今度は腰から剣を抜き、白く輝きだす。
  「いくよ……セイクリッド・スピア!」
  すると、リンは体を地面と平行にし、超回転を始める。キュィィイインと高い音を立てている。更に、足の炎の威力が高まる。
  どうやら、あの炎はブーストのようだ。そのブーストを利用し、超回転から超スピードでエルウルフの脳天目掛けて、飛んでいく。
  もちろん、エルウルフたちはそれを黙って見ているわけがなく、
  「グラァァア!」
  前方にいたエルウルフが魔法で岩を生成し、それをリンに全力で飛ばす。俺が始めてエルウルフに会った時に使った魔法と同じものだ。しかし、
  キュイン!と、リンにぶつかる寸前にその岩が高音を立て、バラバラに崩れる。そのまま、ズチュウ!と前方のエルウルフは脳天ぶち抜かれ、頭から血を流し、その場で崩れ倒れる。
  そのまま、地面に突き刺さるかと思いきや、地面スレスレで急上昇し、後方にいたエルウルフを顎から脳天を串刺しの如く貫く。前方のエルウルフ同様に崩れ倒れる。
  
  「…………」
  俺は言葉が出なかった。何というか、異世界すげぇな。としか感想が思いつかなかった。
  俺が唖然として座っていると、リンが空中から垂直に地面に落ちていった。どうやら、ブーストが終わったようだ。
  俺がリンのところに駆け寄ると、リンが目を回して、仰向けに倒れていた。
  「どおぉぅ?み、見てたぁ……?こう、すけぇ?」
  
  どうやら、呂律が回らないようだ。それもそうだ、あんなに回転してたら目が回らないわけがない。
  俺はリンの技に感動したが、それ以上に気になることがあった。
  「血がついてない……!」
  リンの服、剣にいっさい血がついていなかったのだ。
  
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