[縦書きPDF推奨]殷呪~神になりたかった者 神になり損ねた者~

簗瀬 美梨架

序説

殷呪~神になりたかった者 神になり損ねた者~

 冷涼な大気の中に、白露の彼岸花が浮かび上がる初秋の空。
 鱗雲が天高く拡がり、楚国全体を包んでいた。
 鱗雲の合間に、白い虹がうっすらと空に刻まれている。
 緩やかな秋風が威風ある関城を吹き抜ける。
役のない兵卒には白虹が争乱の前兆であるという知識は一切なかった。楚兵たちは空を見上げたが、すぐに兵役の責務に戻って行った。
 空は瞬く間に元に戻り、白虹の影響か、雲は千切れ、山麓に被さるかのように降下し始める。
 洞窟から、大量の蝙蝠が、空を翔る光景。
 不意に、一羽の蝙蝠が、群れを離れた。
 蝙蝠は予てより、天鼠と称される神の遣いである――。

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