英雄の終わりと召喚士の始まり

珈琲屋さん

1-29 昇格…昇給?



「お前は魔剣に敏感過ぎる」


それは……確かにあの時は魔剣以外見えてなかったけど……

「何が憎い?呪いが憎いか?だが呪いとは祈りだ。人の祈りを何も鑑みず憎むのは傲慢ではないか?」

呪いは祈り…だからってなんで俺が呪われなきゃいけなかった……!

「勘違いするなよ?ロプトも言っていたが恨むなとは言わない。まぁ傲慢も人間だ、否定はしない。お前にはそれだけの理由もあるしな。どうしようとお前の自由だ。
俺が言いたいのは目的を履き違えるな。それだけだ。振りかかる火の粉なら払えばいいが、自分から火に包まれに行くような真似はやめろ」

うんうんと大袈裟に頷くロプト。なんか怒られてばっかりな気がするけど…説教されるのも久しぶりだな…

もしも俺が復讐を叶えたら、大陸の均衡が崩れるだろう。そうなれば戦争は激化、国は荒れるだろうな…一番の被害は民衆だ。誰もが俺を恨む。
そしてその時は冒険者ギルドが、ウォーデンさんが俺を殺しにくる。もしかしたら他のSランク冒険者まで。

「…今は分かります。それがどういう意味か、復讐が俺を殺すっていうのもちゃんと。」

「ふむ。それならいい。結局どうするかはお前が決める事だからな。それとあの小娘には少し時間をやれ」

…?小娘ってウルだよな…?時間?

「なんだかんだ面倒見いいよねウォーデンって。僕にも優しくしておいて損はないと思うよ?」

「面倒になる前に手を打ってるだけだ、だからルーンまで使った。出力は抑えてやったんだ、十分優しくしているだろ」

ムッと膨れるロプト…今は構っている暇はない。

「お前は分かっていないだろうが、あいつが気を失ったのはお前が原因だ」

…え?……ウルはぶつかった衝撃で……

「お前の魔剣への恨み、殺意、復讐心。まぁ全てだな。ある種の信仰魔力になりかかっていた。おかげであの時のお前は一瞬だが対等にロプトと戦えたんだ。
その殺意に触れたせいで小娘は恐怖から気を失った。
しばらくは恐怖に捉われて戦えるかわからんぞ。まぁそこまで弱くはなさそうだったが、戦闘行為は少しの間出来ないだろうな」

「確かにあの時のテュールちゃん凄かったねー、もう鬼気迫るって感じで僕もちょっとビックリしちゃったよ」

俺のせいでウルが…?俺が?

「関わるなら少し時間を置いてやれ、それからでも遅くはない。まぁこのままお別れでも別に問題はないだろうがな」

「…わかりました。わざわざありがとうございます」

冒険者は一期一会だ。一度だけの共闘なんてのはざらにある。俺がどうしたいかだよな…色々気を遣われてたか…情けない。

「お説教はここまでだ。お前には一度冒険者ギルド本部に行ってもらう」

「俺が本部に?なにかあるんですか?」

「駆け出しは終わりだ。俺の権限でお前をBランクに昇格させる。元々戦闘に関して素人ではなかったんだ、新しく召喚獣とも契約した、充分だろう」

「まぁ俺としてはランクに興味はありませんので何でもいいんですけど」

「俺はしばらくここを離れられないからな、ナンナに通達しておくから手続きしに行け。権力はあって困る事はない」

Bランク。冒険者として一線級の証だ。色々身の振り方も覚えないといけなくなる…なによりまた本部に行くのが憂鬱だ。思わず溜息が出る。

「…はぁ……わかりました。それで、その後はなにかあるんですか?」

「好きにしろ。もう戦う力は手に入れただろう、召喚獣を増やしてもいい。毎日だらだらしてもいい。Bランクならある程度金も稼げるだろうしな。
もし召喚獣を探すなら西へ行け。北と東は少しキナ臭い」

西…トリルハ帝国か、行った事ないんだよな。
王国は勿論行く気になんてならないし、魔国もちょっとなぁ…必然的に西になるか。

「そうします。トリルハは行った事もありませんしね」

「報酬だ。何かあれば鴉を飛ばす。精々死なない事だな」

差し出された包みを受け取ってテーブルを後にする。ロプトがじとっと睨んでくるが無視、悪いがウォーデンさんは俺の手には負えない。五万枚書ききるまで頑張ってくれ。

「俺もまだ死にたくはありませんからね、もう一本腕を差し出してでも足掻きます。色々ありがとうございました」


小屋を後にする俺を見送る…訳もなく、感動的な別れな訳もなく、そそくさと逃げるように去る。巻き込まれたくないからだ。なにか叫び声が聞こえたが頑張れロプト。



――――

――

「だからルーンまで使う事ないだろうっ?!」

「逃げようとするからだ。それにその程度でどうにかなるお前じゃない。精々縛られる程度だろう」

「ちぇっ…ウォーデンは可愛げがないなぁ。縛るだけでも大したものなんだけどね。それよりいいの?色々説明が足りてないと思うんだけど」

「構わん。どうせ一から十まで説明した所であのバカが理解できると思えん。自分で見させた方が早い」

「可愛い子には旅をさせろって奴?今トリルハ帝国に行かせるなんて、さすがにテュールちゃん死んじゃうかもしれないよ?」

「それならその程度だっただけだ。それに俺もお前の正体についてはまだわかりきっていない」

「目星くらいついてるくせにー。それでも近くに置いておく所とか変わり者だよね」

「悪戯小僧から目を離すと何をするかわからんからな。それと俺は俺だ。事情は知らんが、お前も幻影に捉われるのはどうかと思うぞ」

「…相変わらず化け物だね」

「知らんな。それよりまだ口を割る気はないのか?」

「ウロボロスの事?悪いけど利害が一致しただけで、僕は正式な仲間じゃないよ」

「…そうか。それなら邪魔をする気もないという事だな?」

「もちろん。むしろ君と協力した方がいいのかもしれないね」

「そうしたければそうすればいい。まずは呪符の続きからだ、あと四万枚だな」

「……」




この日二度目の叫び声が響き、森の魔物は怯えニョルズの山を離れていったとかいってないとか。



――――


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