英雄の終わりと召喚士の始まり

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1-8 冒険者ギルド本部


――グリトニル領内


交易都市としても栄える自治都市グリトニルは正方形に近い形に城壁を組み、門を繋ぐ大通りにより東西南北それぞれに二等分され、四つのエリアに区分されている。
各門の周辺はそれぞれの国の施設が固まっているのだが、地理的な都合が主であり、
ノースウエスト・ノースイースト・サウスウエスト・サウスイーストと分けられ、
更にそのエリア毎に区画整理が行われ各エリアの小路を番号で表すようになっている。

四つの町が合同された都市と表現するのが分かりやすいかもしれない。
また主要大通りに面するほど地価が高く、離れるほど地価が下がる、その為外周と内周において格差が激しくなるというのもグリトニルならではの特徴だ。
そんなグリトニルの土地事情を考慮した時に、超最高立地に位置する建物がある。

領内の中央部。中央付近ではない。まるっきり中心だ。

大通りの交わる交差点のど真ん中に現れる、大理石で建てられたまるで宮殿のような建物。
それが冒険者ギルド本部。

自治都市グリトニルの支配者だ。
グリトニル領内の施策はギルドマスター及び各所属国議長により裁決されている。

この建物にも四面に入り口が用意され、それぞれの国に繋がる大通りから城門まで一瞥できるように作られている。
一応四ヶ国に対して平等に門戸を開くという意味があるそうなのだが、
上を見上げると、ドーム型に作られた丸屋根の中央部に尖塔が建てられている事に気付く。

各国から侵略行為があった際にはいち早く発見できるよう防衛に備えているのだ。
政治には建前が必要なのである。

――――



3階建てのギルド本部は吹き抜けとなっており、中央には太い円柱が天井まで伸びている。
その柱をぐるっと囲むように円形に囲まれた受付、上階への階段はアーチ型の螺旋階段。
白を基調とした空間はまるで高級ホテルのようだ。

これが冒険者ギルド本部。

ただ誤解を招きやすいのだが本部というだけで、依頼の受付や達成報告、クエストボード、鑑定所や解体場、果ては訓練場まで、一般的なギルド業務は別の建物で行われている。

ここは高ランク冒険者の為の施設や大規模討伐クエスト、
お偉い様方の会談の際に使うような会議室。
自治都市として運営を行う各国代表の執務室など、ギルド運営側の建物。
一般の冒険者にはほとんど縁のない場所だ。



テュールはギルドに足を踏み入れると困ったように頭をかく。
何度か本部に足を運んだ事はあるのだが、何度来ても場違いに思えて仕方がない。

それに……わかってもらえるだろうか?
円形型の受付には等間隔に受付嬢が並んでいる。つまり並んだ女性の数の倍の視線が飛んでくるのだ。
美人揃いの受付嬢も1人なら群がる男も多いが、
6人も並べばむしろ近寄りがたいものだ。

そんな事を思いながら歩を進めると何人かの視線に熱が篭る。
…ここは高ランク冒険者やお偉い方々がやってくる。玉の輿を狙った受付嬢も少なくない。
残念ながら俺がモテる訳ではないのだ……

一番左にいる顔馴染みの受付嬢の元へとほんの僅か足を早めると、有り難い事にあちらから声を掛けてもらえる。

「あら…?セイズ様ではありませんか。Dランク昇格試練は無事にお済みになられたのですね。おめでとうございます」

他の受付嬢にも聞こえるようにDランクの部分を若干強調して言う。
こちらの様子を伺っていた何人かの受付嬢はDランクという単語を聞くと興味をなくしたかのように各々の仕事に取り掛かる。

……この受付嬢の名誉の為に言うが、断じて嫌味ではない。
俺がこういった視線を嫌う事を知っていて周りの興味をなくさせる為に言っているのだ。
だからこそ敢えてセイズの名で呼んでくれている。
無駄に注目を集めるのを嫌う俺の為の気遣い。
本当によく出来た人だ。

「ありがとうございますナンナさん。ウォーデンさんを探してまして、こちらにいるかと尋ねたかったのですが…」

ナンナと呼ばれた受付嬢は手元の機械を操作するとすぐに対応してくれる。

「ウォーデン様でしたら先ほど二階の資料室へ入室の記録がありましたので、恐らくまだそちらにいるかと思いますよ」

「そうですか、では資料室へ入らせて頂いてもよろしいですか?」

「はい。ではギルドカードをお願いします」

そう言ってギルドカードを差し出すと機械の中へ挿れ、入室許可を刻む。

「入室履歴を刻みましたのでもう結構ですよ。
改めてお話しすることではありませんが、その許可は今日一日有効になりますので明日以降入室の際はまたこちらへお願い致します」

「えぇ、ありがとうございました。それでは失礼します」

俺はギルドカードを受け取ると二階へと急ぐ。

何回来てもここの受付は慣れることはない。
ナンナさんがいた事が救いか……しかし資料室とは相変わらず勉強熱心なことで……



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