転移してのんびり異世界ライフを楽しみます。

深谷シロ

15ページ目「されど僕は心配される」

 殺戮骸骨ジェノサイドスケルトン。この世界の冒険者ギルドの討伐許可生物の危険指定度において、レートSSに名を連ねる危険生物の事だ。

 討伐許可生物の危険指定度は、全く危険でないレートFから順にE、D、C、B、A、さらにS、SS、SSS、Xへと続く。

 Xには氷竜王であるリルも含まれる。Xの生物は危険すぎる上に討伐依頼は出ない。討伐が不可能なのだ。

 また、危険指定度は10個だけで大雑把のため、さらに☆1~☆100の100に振り分けた細かい危険度が存在する。

 レートFが☆1~☆10、レートEが☆11~☆20、レートDが☆21~☆30、レートCが☆31~☆40、レートBが☆41~☆50、レートAが☆51~☆60、レートSが☆61~☆70、レートSSが☆71~☆80、レートSSSが☆81~☆90、レートXが☆91~☆100だ。

 この殺戮骸骨ジェノサイドスケルトンがレートSSで☆78、リルはレートXで☆95だ。

 何故、こんなにレートが高いのか。このガイコツ殺戮骸骨は、知能がとても高い。さらに指揮力が高く、身体能力が高い。さらに身体も骸骨がボロボロになるまで、倒れることは無い。だからこそのレートである。

 僕が〈情報〉スキルで確認したところ、このガイコツはスキル持ちである。しかも9個の。冒険者ギルドに報告すれば、レートがSSSに引き上げられるだろう。レベルの低い冒険者達では倒せるとは思わない。騎士団も……無理だろう。

「話し合いは終わったかな?」

 そう話し掛けてくるのは当の本人……もとい本骨ほんにんだ。

「ええ、終わりましたよ。あなたは強いってね。」
「気付いてるのか。……そうか、〈固有スキル:情報〉か。そんなのもあるのだな。」
「鑑定のスキルですか。」
「然り。」

 互いに探り合いをしようとする。だが、ここで有利なのは僕ではない。ガイコツには表情が無いが、こちらには表情がある。感情を読み取られてはいけない。ガイコツのスキルは分かっているが、スキル内容はとても危険だ。レベルがこのガイコツに勝っているリルやエレナでさえ勝てない。そういうスキルなのだ。

 ガイコツの持つスキルは……

 まず〈固有スキル:不死アンデッド〉。このスキルによって、通常手段では誰にも対処出来ない。せめて魔法かスキルだろう。

 次に〈固有スキル:死霊術ネクロマンス〉。不死系の生物を召喚し、使役する。また〈闇属性強化〉と同じ効果もある。〈固有スキル:悪夢ナイトメア〉。スキルを発動した相手に悪夢を見させる。また、術者が止めない限り、悪夢は終わらない。

 さらに〈特別スキル:魔族干渉〉。特別スキルであるという事は誰かの加護を受けているのだが……闇竜王のようだ。レートX。☆95だ。このスキルは魔族からのみ干渉を可能とする。要するに魔族以外の種族ではガイコツに触れることも出来ない。触れた場合はどうなるか僕にも想像ができない。

 加えて〈スキル:身体強化〉〈スキル:闇属性強化〉レベル7だ。〈闇属性〉に特化しているようだ。〈スキル:呪印カース〉は効果は薄いが、相手に呪いを付与する。〈スキル:影潜シャドーダイブ〉は影から影へ移動できる。これを利用した長距離移動も可能。最後に〈スキル:保有地管理〉だ。これは大抵の人が所有しているスキルだ。

 どうやら元々ガイコツはハーメリアルにいたらしい。僕がハーメリアルの人口情報を見た時に魔族が100人ほどいたのはこれが原因のようだ。誰かが匿っているらしい。……王女様は大丈夫だろうか。

「……リルとエレナは攻撃しないでね。」
「「分かった。」」
「ほう、私のスキルも読むか。それも〈情報〉か。そのスキル使い勝手が良さそうだな。私の部下にならないか?種族は不死イモータル族となるが。」
「素敵なお誘いですけど、お断りさせて頂きます。」
「即答とはな。」

 ガイコツは笑った。いつの間にか渾名が『ガイコツ』になっているが、僕は知らない。

「どうやって倒すかな……。」

 何しろ魔法やスキルが未だ人族要素が多い僕では、効果がない。この中では唯一、魔族要素を持つが……。あのスキルを使ってみるか。発動〈魔族召喚〉。

「……」

 僕の目の前に魔方陣が広がり、何かが見えた。

「君は……まさか四大聖獣ホーリービーストの……」
「守護を司る〈聖・土属性〉のガリメデルスだ。」
「僕は〈魔族召喚〉を使った筈だけど……。」
「……転生神が生物神と魔神に頼み、我を遣わした。必死に頼み込んでいたぞ。」
「は、はあ……。」

 転生神様何してるんだよ……。そして、生物神様にまで目をつけられたって事か。まあ、ガリメデルスを見れただけでも幸せな気はする。

「生物神よりお前と主従契約を結ぶ事を頼まれている。我にも不満は無いから無理矢理ではないがな。どうする?」

 ゴクリ……と喉を鳴らす。神に最も近い生物の一体である四大聖獣ホーリービースト。スキルも無効にできるだろう。レートはX。☆96とリルを超える。契約する事にデメリットは無い。どうする……?

 だが、のんびりと考えている時間はない。目の前にレートSSの強敵がいる。四の五の言う暇はない。まあ、元々どうするかは決めてたけどね。

「契約しようっ!」
「ああ、承知だ。」

 そして、僕とガリメデルスは契約をするのだった。

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