転移してのんびり異世界ライフを楽しみます。

深谷シロ

8ページ目「ゆえに僕は購入する」

 盗賊を蹴散らして約2日。遂に一団は商業都市に着いた。

「ここが……。」

 誰が呟いた言葉かは分からない。この都市に来て一番に思うのはその賑やかさだ。商人の集まるこの商業都市は、人も多い。商人だけでなくそれを買う人や貴族もいるからだ。僕は〈情報〉スキルを起動した。

◆◆◆◆◇検索情報◇◆◆◆◆

国名:リメレイド王国
領地名:グレーデルン伯爵領
地域名:商業都市ハーメリアル
保有:ヘイマード・オークル
生息:人間3,729,027人、魔族100人
推定生物平均レベル:10
施設:冒険者ギルドハーメリアル支部、商業ギルド本部

◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◆◆◆◆

「へ……?」
「どうかしましたか、タクトさん?」 
「あ、いえ。」

 魔族……!?それも100人。何かの組織があるのだろうか。王女陛下と別れた後に少し捜索するとしよう。それよりも店だ。ま……ほ……う……イェェェア!まほう♪まほう♪ウキウキしているとリルが肩をとんとんと叩いた。

「……どうしたの?」
「あ、いや……魔族が100人いるみたいなんだ。」
「そうなんだ。先に懲らしめる?」
「……様子を見よう。向こう側がこちらに危害を加えようものなら襲っても構わないよ。あ、ボスがいたら捕らえておいてくれる?」
「うん、分かった。」

 それから街に入り、商業都市の保有者であるオークル子爵の所へ行った。この街は何かと不正がありそうだ。出来ることなら保有したい……。新しい物がザックザクじゃないか!心がワクワクするぜ!

「まずは宿を取ろうか。」

 僕達は王女陛下と共に子爵の家に泊まる訳では無い。向こう側もお断りだし、こちらもお断りだ。自由に歩き回れないじゃないか。それは悲しすぎるよ。子爵に聞いた所、一級とまではいかず、ボロすぎるとまでもいかない宿を聞いたのだが、教えてもらった宿は綺麗な宿だった。意外と宿代も高いようだ。部屋にはフカフカのベッドがあった……!幸せだ……!

「それじゃあ、街探索だ!」
「おー!」

 2人でエイエイオー!と腕を振り上げた。お馴染みのポーズだ。この異世界に来てからは初めてしたが。宿の主人に商人が集まる市場を聞いた所、子爵の家から近い場所だった。

 * * * * *

 市場は人で賑わっていた。店舗を持った店もあるが、出店も多い。ここは一年中お祭り騒ぎだそうだ。僕とリルはまず食べ物を買うことにした。

「どの食べ物がいいかな……。」
「あれ、なんてどう?」

 リルが指差した先は焼き鳥屋さんだった。リルが興味を持ったらしいし、行ってみるか。

「すみません、この鳥って何ですか?」
「この鳥は渡り鳥だよ。」

 このお店は一年に一回、数万もの規模で大陸を渡る渡り鳥の焼鳥だ。地球では見たことがない。何しろ体毛の色が青色と白色が混ざっているのだ。とてもカラフル。向こうの店には桃色と緑色の鳥もいた。取り敢えず鳥の色はいいとして、美味しそうなので買ってみることにした。

 値段は鉄貨1枚だった。地球で言うところの100円だ。美味しいのに安い。最高だ。リルも美味しそうに食べていたので全て買い取ってみた。驚かれた。だが、知らん。

 他の店にも寄ってみた。動物の形をした動物水飴というものやマシュマロに似ているが、様々なフルーツの味がするフルーツマシュマロなど甘味も多かった。出来ることなら焼きそばやたこ焼きなども食べたかった。いつか広めたい。

 そこからが肝心のお店巡りだ。僕が行く魔法関連のお店は大体店舗を構えている。魔導師が5割を超えるこの大陸では、魔法関連の店が多いのだ。

 まず最初に行った魔法関連のお店は、ルーツ魔法書店という名前だった。

「いらっしゃい。」
「……すみません、魔法の呪文スペルが沢山載っている本などありませんか?」

 店の主人は少し待て、と言うと何処かの棚から引き出してくれた。

「お客さんはどの魔法を学びたいんだ?属性は炎、爆、水、氷、風、雷、土、星、光、闇、無の主となる11属性だ。他に副属性があるが、大まかにはこの11属性に振り分けられる。」
「一応、全ての属性を覚えたいんですが……。」
「それを全部集めるとしたら高いぞ?この店には全ての属性の魔導書は置いてある。全て買うなら金貨1枚だが。」
「あ、じゃあ買います。」
「は?」

 あ、馬鹿だろ、みたいな目で見られちゃったよ。しょうがないじゃないか。全く魔法覚えてないんだから。これから覚えたいんだよ。これから。

 僕は各11属性の魔導書を買った後に副属性を纏めた本も買った。これは意外と安かった。他にもこの世界の史実を書かれた本や魔導具について書かれた本。これらも買った。全部で30冊ほど購入した。スキル関連の本も忘れていない。合計金額は金貨10枚だった。安い買い物さ!

 店を出る時にとても嬉しそうな顔で見送ってくれた。僕の買った中の数冊の本は、誰にも買ってくれなかった本らしい。誰にも買われなくて良かった良かった。さーて、次は魔導具の店だぁー!

 本を〈収納〉に仕舞い、次の店を訪れた。次の店はクリールトル魔導具店とか言うらしい。正直、どうでも良い。こちらは錬金術ができそうな道具が一杯だった。

「すみません、魔導具を買いたいんですが、どのようなものがあるのでしょうか?」
「そうですね……最も人気なのは精霊を呼び出す〈魔方陣の呪符〉ですね。精霊魔法が今、流行っているんですよ。」

 精霊魔法に関した本なら僕も買った。呼び出し方なども一応分かっているから、これはいらないな。

「そうですね……他にはどのような物がありますか?」
「あまりお気に召しませんでしたか?それでは……こちらなど如何でしょう?」

 店の主人が出したのは〈転移の呪符〉だった。え、ナニコレ?

「高くなっていますが、転移に関する魔法はあまり世間でも使える者が少なく、良い代物だと思われます。どうでしょうか?」
「……これ、下さい。」
「ありがとうございます。」

 店の在庫の者も出してもらって購入した。僕も店の主人もホクホク顔である。全部で10枚だ。大切に使おう。というかいつか空間魔法覚えよう。

「錬金術関連の本ってありますか?」

 この世界での錬金術はあまり盛んではない。錬金術自体にスキルが必要だからだ。錬金術師と呼ばれる職業がある。

「錬金術を嗜まれるので?」
「試したい事があるんですよ。」
「そうですね……錬金術には元となる魔石が必要となります。魔石がこの店には大量にありますが、全て購入されますか?錬金術は数年前にブームが終わってしまって、売り切れ無かったものが残っているんですよ。」
「あ、下さい。」

 これこそ大人買いだろう!全部で総重量1tは楽に超えたことだろう。錬金術に使う道具は無いために楽である。

 最後に訪れたのは武具屋さんだ。フナアーチ武具店というみたいだ。やっぱりどうでもいい。

「強い武器ってありますか?」

 単刀直入に聞いてみた。交渉の必要ない時は単刀直入が一番だ。まあ、交渉したくないのもあるからね。

「この店には魔法で鍛えた〈魔法剣〉もあるぞ。」
「見せて頂けますか?」

 僕の使っていたのは鉄の剣であり、威力に欠けるのだ。強い武器が欲しかった。

 主人が持ってきたのは軽そうな剣だった。色は透き通るような黒色をしている。黒真珠というやつだろうか。もしくは魔法の効果か。

「どこかの国で出土された品だ。色々な言い伝えがある剣で買い取り手はまだ付いていない。」
「曰く付きの剣、ですか。」
「ああ。買うか?」
「望むところです。買います。」

 呪いでも何でも掛かってこいや!主人が触ってるから大丈夫だろうけど。気付けよ。僕はこれが意外と高かったのだが、大金貨1枚で買った。オリハルコンで出来ているため最高級素材だ。曰く付き出なかったならもっと高かっただろう。後でじっくり見るとしよう。

 今日の買い物は楽しかった。外に出るといつの間にか夕暮れになっていた。宿にチェックインしたのは、昼前だ。買い物が長すぎたのだ。今日は帰るとしよう。

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