草も生えない冒険譚

たかし

9話【遺跡】

前書き

ミイレをパーティに歓迎し、Eランク昇格を果たした宇宙だったが、芹那に関しては掛ける言葉もない。
そんな中、宇宙達にまた面倒な依頼を押し付けられ…



「俺たちに遺跡の調査をしろだと…?」

「はい!!」

そう無邪気に言い放つのは
ギルドの社員シルヴィだった。

なんでも
加護の遺跡という未知数の遺跡に攻略にいったパーティがいたそうなのだが
そのパーティが全員とてつもなくおぞましい何かを見たような顔つきで震え泣きながら帰ってきたらしい。
何があったのか聞いても口を開こうとしないらしい。

っていうかなんでこんな初心者の草原から近い所にある遺跡なのに情報が未知数なんだよ…

シルヴィさんが言う歴史には
加護の遺跡ってのは来た人にその名の通り、精霊の加護を与えてくれるらしい。
それを考えると、泣きながら帰ってきたパーティの事もなにかおかしい。
加護の遺跡になにか異変が起きてるっぽいな…

「それで、俺たちのパーティに行けと?」

「はい!!!」

はい!!!!!
じゃねぇよ!!!
そんな無邪気に目光らせやがって…!
俺らのパーティに死ねと言ってるようなものだろ!

「嫌です!!!絶対に!!!」

「え!なんでですか!ギルド娘の言うことは絶対なんですよ!!!」

なんて傲慢な押し付け方なんだ…
ていうかなんだよギルド娘って

俺はその帰ってきたパーティを偶然にも視界に入ってしまい、その様子はまるで人類の終わりのような顔をしていた…
そして俺から見るに
防具や武器からして彼らはかなりの手練…
その彼らが恐怖に怯えて尻尾巻いて怖気付いて帰ってきたんだぞ…
何故そんな所にこの神速の速度で棺行きしそうなパーティをあんな輝かしい目で依頼することができるんだあの人は…

「お兄ちゃん…、仕方ないよ…その遺跡攻略しないと…街の人も不安だよ?」

お前はもうちょっとマシに戦えるようになってから言えよ!!!!!!

「私もそう思います!!!!」

お前はお人好しすぎるんだミイレ…!!

全く俺は腐ったプリンを食うよりやりたくない依頼なんだが…
パーティはほとんど全員この依頼をする気満々の雰囲気になってきている…

やるなら…と俺はふと思い浮かんだ疑問を
俗に言うギルド娘さんに問いかけた

「加護の遺跡がおかしくなったのはいつからなんだ?」

「結構前からです、具体的な日数はわかりませんが」

そんなに長く攻略されてない完全無欠の地獄への誘いのようなスポットに俺らは行くのか…
っていうか結構前から攻略されてないのに
ここらの連中見た限り全然加護受けなくても大丈夫だよね!?!?!?ほんとにやる必要あるこれ!?!?

「ほら宇宙!そんなシケた面しないで行くよ!」

ぺティラもなんでやる気なんだ…
いざという時にはぺティラの回復魔法が必要だからお前が一番大変な目に合うかもしれないんだぞ…

いや、まてよ…?
その遺跡にいるモンスターは恐らく闇属性だろ!?
あの泣き虫パーティも闇にまみれたモンスターを見たって顔してたし!!!

ふふふ…
残念だったな遺跡のモンスター達よ!!
こっちには最強のミイレがいるんだ!
ミイレの光属性魔法で貴様らなんぞイチコロだぞ!
この勝負…勝ったな…!!



「ぎぃやぁぁぁぁぁあああぁ!!!」

俺たちのパーティはあろうことかみっともないそんな悲鳴をあげて遺跡の中でモンスターから逃げていた。

「ミイレ!!あいつらに光属性魔法は聞かないのか!?」

「何度もやってますよぉ〜!」

くそ!!こんなはずじゃなかったのに…!
魔法が聞かないなら俺の拳をくらいやがれ!!

〘宇宙はゴーストを殴った 〙
〘Miss 〙

ミスじゃねぇよ勘弁してくれよぉお!

相手はゴーストか…
道理で拳が当たらないわけだ…
じゃあなんで魔法があたらないんだ?

その瞬間、ゴーストは宇宙達の視界から消えた

瞬間移動か?
いやそれにしては違う…
近くにはいるのに見えてない…だけ?

っ!!!
そうか!あのゴースト!
透明化する能力を使うのか!
だからミイレが魔法を使う直前に透明化し
ミイレの狙いが定まらなくなってんのか!

だがそれがわかった所でどうするんだ…?
ひとまずみんなに伝えないと…!

「おい皆!あの敵透明化の能力を使うぞ!厄介だ気をつけろ!」

それを言った途端、芹那が飛び込んだ

何をする気なんだ…?芹那は…

「ふふふ!お兄ちゃん!あれだけゲームをしていてわからないのか?」

なんかいきなり語り出したぞ…

「透明化はゲームの中の敵では王道と言っても過言ではないほどウザったくて今すぐ足の薬指の爪へし折ってやりたい気分になるけど」

それはまずい
流石にモンスターでも同情する。
というかゴーストに足あんのか?

「そんな中、彼ら(ゲームの主人公)はどんなやり方でそれをしのいできたんだ!?」

まさか!!!!!

その瞬間、芹那がその小さな手に握りしめたのは砂。
そして…

「おらぁぁぁぁぁあああ!」

芹那が砂を周りに投げ始めたのだ

そうか、流石だ妹よ…!
モンスターは透明化していようとも実体はある
いやゴーストだからなんとも言えないが、
透明化していてもそこに存在しているのだ、
だから血でも砂でも水でもなんでも、その体について残るものが敵につけば!!

その砂がかかれば砂は透明化できない!
すなわちゴーストの居場所がわかるわけだ!

「あ!!いたわよ宇宙!」

俺にそれを報告してどうすんだぺティラ…!
それを倒せるのはこのパーティに1人しかいないだろうが!

「ミイレ!頼む!!!」


〘ティラピアセナイト!!!! 〙


その瞬間、
光が眩しすぎて視界が見えなかった…
凄まじい威力だ…
流石はDランクのお嬢様だぜ…



そして俺たちはギルドに帰ってきた。

「お疲れ様でしたぁ〜」

お疲れ様でしたぁ〜、
じゃねぇよ!!!!
お前のせいでほんと死ぬかと思ったわ!!
芹那の天才的発想がなかったら俺たち全員
あの泣き虫パーティの仲間入りだったぞ!
まぁ俺半分泣いてたけど!!!

「いや助かったよミイレ、お前がいないと俺ら全員魂抜かれてたよ、ありがとう」

するとミイレは赤面し、
他人のように頭を深々と下げてくれた。

そして俺らが疲れて宿屋に戻ろうとした時、

「おい!あんたら待ってくれないか!」

ん?誰だ…?

「俺は昨日加護の遺跡に行って惨敗しちまったパーティの一人さ、」

あぁ、あの泣き虫パーティの…
その惨敗したパーティの人が俺になんのようなんだろうか。
帰ってカツ丼食いてぇ…
あぁそうかこの世界にはそんなものなかった…

「ありがとうな!これで街の人達が精霊の加護を受けられるし安心できる!あんたらのおかげだ!!」

街の人が安心って…
あんな遺跡攻略しなくても街の人はごく普通に暮らしてたってのに…
あんたはお人好しだな…ミイレ以上の

報酬は出なかったけど、
こういう人助けも、
報酬のありなし関係なしにやってみるのも
悪くは無いかもな…

「いえいえ、冒険者としてやるべき事をしたまでですから」

決まった…
完全に決まった…!
ここまで紳士で優男な冒険者いるか?他にいるか!?
いやいない!!!

「なんてありがたいことだ…、あ!そうだ、これお礼といっちゃなんだけど、俺たちの余りの魔石!持っていってくれよ!」

よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁあ!!!!!!!!!!!



後書き


加護の遺跡を攻略し、街の人の不安を解消した宇宙達。
加護の遺跡を突破した宇宙達は次の街である
「イグエス街」に向かうのであった…



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