草も生えない冒険譚

たかし

6話【依頼】

前書き

テレパシー能力を覚醒させ、セルフィルを帰還させた頼璋。そしてその手柄としてギガントウルフの魔石を手に入れ、宿屋に泊まる分のGを手に入れた。



「はぁぁあ〜!今日はほんとに疲れたよ〜」

そう言う妹を遠目に

「どっちかって言うと俺の方が疲れてるんだが…」

それもそのはず、
俺はこれまでにないぐらいの働きをした。
あんなに体を動かすのは現実世界でひきこもっていた俺には厳しかったが。
このパーティのリーダーとして申し分ぐらいないぐらいの活躍をしたと自身を持って言える。
死にかけたし。

「私も疲れたよー!第一、私のリカバリーがなかったら宇宙死んでたし!」

自分が命を救った。とでもいいたいのだろうか
まぁ実際に救われたのは事実なのだが
それ以上にセルフィルの救いがとても大きかった。
彼がいなかったら今頃俺たちは蜂の巣にされてたであろう。

今回の出来事は

芹那、俺、セルフィル、ペティラの全員が自分の役割を果たせてたからこそ生還できたのだと思う。
そしてギガントウルフの大きな魔石のあまりの経験値は皆で分け与えた。

今俺らは宿屋にいる。
なんだか懐かしいような安心できるような光景だ。
ペティラを仲間にした時も
こうして宿屋に泊まったんだよな…

芹那の平手打ちの痛みが思い出され…
少し苦笑いをする俺。

ギガントウルフの魔石を一部Gにしたことにより、
あと3日ほどは宿屋に泊まって生活できるだろう。
それよりも…

「お兄ちゃん……」

「あぁ、わかってるよ芹那…」

「宇宙!私も!」

そうなのだ…
俺達3人は全員
ここ数日間なにも食べていない。

特に俺たちはギガントウルフ事件の事もあって
あの時、体を動かしすぎているのだ。
ほとんど餓死寸前の俺たちだったのだ。

「仕方ない…明日なにか買い物にいくか」

「ほんとに!?やったーー!!」

ほんとに最小限の食材を買いに行くつもりだ。
そんなにGを無駄遣いしていられないからな。
特にこの妹の目の輝き様…
嫌な予感を湧き立てるから怖い。



翌日…

「おっはよー!お兄ちゃん!食材買いに行くんでしょ!?ねぇねぇ!お兄ちゃんってば起きてよー!」

あぁ、とてもうるさい。
朝ぐらいゆっくりさせてくれてもいいのに…
なんで芹那はこんなに食材の事について食いついてくるんだ?
平手打ちが怖いからさっさと起きよう…
そしてペティラは相変わらずトイレで寝ている。
今出てきた。

「おはよう宇宙。ねぇ、なんか首が痛いんだけど」

そりゃそうだろ。
トイレで寝てるんだから。

俺とペティラはこの宿屋でまだゆっくりしときたいのだが、芹那のうるささは今や次元を超えている。さっさと出るしかなさそうだ。

なんなんだよ!
俺はギガントウルフと真正面から戦って
ヘトヘトなんだぞ!?
もう少し兄をいたわってくれてもいいのに…
いつからこんな冷たい妹になってしまったんだ芹那よ…


「はぁ、じゃあ行くか…」



「おおおー!色々あるね!」

俺たちは今、この街でも有名な、屋台や食材屋が並ぶ大通りに来ている。
魚に肉、それにパンや果物など、
ありとあらゆる食材が揃う素晴らしい所で
値段もそれほど高いってわけでもなく
中々活気のいい通りだ。

そして俺は今戦闘していた。
レモンとリンゴ…どちらの栄養の方がたくさん入っているんだ?
値段的にはリンゴの方が値段的には高いが…レモンより栄養が多そうなんだよなぁ…
あぁ!もう!こういう時のために保険の授業真剣に聞いとけばよかった!!

「お兄ちゃん〜!私これにする〜」

芹那が迷わずリンゴを手に取った。
一瞬その行動に嫌悪感を抱いたが、
まぁ、迷ってても仕方ないし…と思い
リンゴを3つ買った。

そして次は肉だ。
俺はその肉屋さんで衝撃の事実を目の当たりにすることになる…

この国では牛肉や鶏肉、豚肉などの肉がないのだ。
そりゃまぁ、日本にいる動物はいないとは思っていたのだが、
それに代理する肉もあると思っていたのだが…

・リザードのヒレ
・ウルフの尾
・スライムの液体

なんだこれは…
リザードのヒレはともかく
ウルフの尾って…
食えるのかよそんなもの…
あと、最後のは話に触れない方がよさそうだ。

とにかく、
この世界には日本にあった肉がほとんどない、
というかないのだ。

おそらくそれほど美味しい物もあるとは思うが。
俺たちは食べたことがない。
いや、美味しさより栄養を優先すべきだよな…
いや、値段が最優先か…?

そう俺が顔をしかめっ面にして悩んでいた。
隣に目をやると俺と同じくしかめっ面になって目に闘志を燃やして肉選びに励んでいる女性がいる。
この人も俺と同じ人種か…!
俺はその人から放たれる
今まじで必死に考えてるからお願いだから話しかけないでオーラを跳ね除けて話しかけた。

「あの〜」

「はっ!あ、はい!なんでしょうか?」

「僕、この世界のお肉食べたことなくて、どれが一番お得で栄養の高いものか教えてほしいなって…」

突然謎のお願いをしてることはわかっているが
これが俺にできる最善の策だったのだ。
たかが肉選びとは思うが、
俺には経済的な面で命がかかっている。
このチャンス、逃すわけには…

「そうでしたか、なら、このジャリザードの太肉でしたら、栄養も多くとれ、なおかつ値段も安いですよ」

「そうなんですか!教えていただき!ありがとうございます!」

俺は感謝の気持ちを伝えたが
他になにか礼をする形があるのではないかと思い、
話を切り出してみた。

「あの、あなたもなにか悩んでいらっしゃるのですか?」

「あぁ、はい、まぁ。」

その発言に
俺は勇者的なセリフを吐いてみた。

「協力させてください!俺達が救われたのはあなたのおかげです!恩返しをさせてください!」

「なら、このクレフィミックドラゴンの翼肉とガイアオルズドラゴンの足肉どちらがいいと思いますか?」

・クレフィミックドラゴンの翼肉 1.200.000G
・ガイアオルズドラゴンの足肉 983.500G

あぁ…これが世にいう…大富豪という奴か…
こんな人と俺は会話することすら許されなさそう。
もう、ここはテキトーに答えてやり過ごすか…

「ガイアオルズドラゴンの足肉がいいと思います」

全くわからない。
なんだガイアオルズドラゴンって
めちゃくちゃ強そうな名前しやがって
そんなやつの足肉なんて…
めちゃくちゃ食べてみたい!!

「わかりました。ありがとうございました。では、私はここで」

はぁ、なんか今日も疲れたなぁ精神的に…
気づいたら夜じゃねぇかよ…
今日はモンスター討伐にもいけなかったし
このままじゃ金が飛んでいくだけじゃねぇか…
とりあえず宿屋に戻るか…

食材を買ったことにより、俺達が宿屋に泊まれる分の金は今日の分しか残っていない。
なんとかしなければ…

「おい、明日モンスター討伐にいくぞ、流石に金がない。」

「でも大丈夫なの?私たちまだまともに戦えるってわけでもないよ?」

確かにペティラの言う通りだ。
魔石の効果で俺らのステータスは全体的に上がったが
魔法は解放されなかった。
今だに前と現状は変わらないのである。

「ウルフぐらいなら1発殴っただけでも倒せるだろ」

そう俺が言い残してせっせと寝た。
と思ったのだが、眠りにつきそうだった所で
芹那に起こされた。

「お兄ちゃん!誰か来てるよ!」

なんだ…?
俺たちに用があるなんて…
ペティラ以来だな。

ガチャ

「はい、なんでしょ……う!?」

そこにいたのは今日肉屋にいた大富豪。
何故こんな所にいるんだ…、
まさか俺が選んだ肉が不味かったから文句でも言いに来たのか?それも大富豪らしいが…

「お願いします!助けてください!」



「い、いきなり助けてくださいって言われても…」

「あ、すいません焦りの余り内容を説明し忘れていましたね。私の大切なネックレスがどこにも見当たらないのです…」

いやどうでもいいのだが…
でも大切って言うぐらいだから
なにか思い入れがあるに違いないのか…
それなら助けてやりたくもないこともないが…

「何故俺たちを訪ねてきたんですか?」

「シルヴィさんから優秀なテレパシー能力使いがいると聞きまして。」

またあいつか…!
次から次に面倒事押し付けやがって!

「ほら、でも俺以外にもテレパシー能力使いはいるだろ?」

「やっぱり!あなたがそのテレパシー使いなんですね!」

何故話を聞かないんだこの人…

「そのテレパシー能力を使って街の人にネックレスを見てないか調査してほしいのです」

「つまり、依頼ってことか…」

「もちろん!依頼料は払いますよ!」

これは好都合かもしれない
この依頼をクリアして
この人からGを貰えば俺たちは
まだ普段の生活をすることができる…!

「わかった、やるよ」

「ほんとですか!ありがとうございます!」

そんな感謝の気持ちを伝えてくる大富豪に俺は気になっていたことを聞いた。

「でも、テレパシーで脳内に語りかけるって無理がないか?皆驚くだろ」

「いいえ?この国はテレパシーを応用した事件の調査をしてる人もたくさんいますので…」

なるほど…
この国の警察的な存在は
テレパシーを使うのか…
だが俺は警察にはなりたくない…

まぁ善は急げだな。
さっさと終わらせて宿屋で寝たいし
ぱっぱと終わらせるか。



「そのネックレスの特徴とかあるか?」

「はい、中央に龍の紋章のようなものが刻まれています。」

なるほど、特徴はそれだけか…
まぁ充分だろ…
テレパシーで聞いてみよう。

{突然すまない、今ネックレスの落し物について調査してるんだが、なにか知らないか?}

{いいえ、特に心当たりはないわ}

{そうか、ありがとう}

ほんとだ…
突然テレパシーかけてるのに
焦らず冷静に対応してくれる…
この国凄すぎだろ。

その後も俺はテレパシー能力を駆使して
調査を進めていたのだが、
全く手がかりが掴めない。
どうしたものか。
そんなに小さなネックレスなのか?
いや、ネックレスなんて全部同じ大きさだろう。
頼むぜほんと、俺らの生活費がかかってんだから。

引き続きその後も、その後も長い間調査を続けた。
気づくともう夜だ…
貴重な時間をこんなことのために割いてしまった。
しかも手がかりの尻尾すら掴めていない。
どうすれば…

「お兄ちゃん!ギルドに言って、シルヴィさんに聞いてみればなにかわかるかもよ!」

またあの人頼みになるのか…
まぁこの際、芹那の意見に賛同するしかないか…



「シルヴィさ〜ん」

そう呼ぶと、ギルドの奥から
シルヴィさんがせっせとやってきた。

「は〜い、なんでしょうか?」

「この人の落し物のネックレスを探してるんだが、何か知らないか?」

「少々お待ちください、落し物箱を見てきますので」

最初からここに来とけばよかったような気がする…
何のためにあれだけの時間を…
いや、でもこの大富豪はシルヴィさんに言われて俺らに会いに来たってことはネックレスの事も知っててもおかしくないはずなのに、あの様子は知らないようだった。

ってことはシルヴィさんに説明なしに俺らの所に来てたってわけなのかよ…
ネックレスのことシルヴィさんに言っとけば
落し物が届いた時に俺らに届けに来てくれたのに…

「宇宙さーん!ありましたよー!」

いやあったのかよ…
俺らの時間を返してくれ頼むから。

「そのネックレスって落し物箱にいつから入ってたんだ?」

「えっと、私は落し物担当ではないので、詳しくは知らないんですけど、落し物箱の中身を入れ替えるのは一日一回!午後17.00に入れ替えらしいですよ。」

今は…
18.30…か。
まじで今日は無駄な体力使ってしまった。
テレパシー能力も無駄な使い方をしたな…
ひとまずこの依頼は解決か。

「あの!ありがとうございました!こちら、依頼の報酬です!」

おいおいまじでこんなに貰っちまって大丈夫なのか?
やっぱ持つべきは大富豪の友達だよな。
まぁただの依頼なんだけど…

「ありがとう、じゃ、俺たちはこれで…」

「待ってください!」

ん?
なんだ?
そんな大声出さないでくれ
夜とは言え、ギルド内には結構人がいるんだ
注目されてしまうだろう。

「もう1つだけ!お願いがあります!」

「なんだ?依頼ならもう受けないぞ?疲れたし…」

そう言うと、大富豪は恥ずかしげに

「あ、あたしを仲間にしてください!」

…………はぁ!?!



後書き


大富豪から仲間の誘いを受けた頼璋たち
だが、頼璋はその誘いを余り良くは思っていない。
そんな中、大富豪が頼璋たちの仲間になるために驚きの行動にでる!!

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