魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第119陣魔法使いの追憶 真実の章②
それは旅の道中の出来事だった。
「サッキー、大分魔法使えるようになったよね」
「そうか? 俺はまだまだだと思っているけど」
「サッキーは感じてないだけで、皆はそう思ってるよ」
サクラにそうは言われながらも、俺は当時まだ魔法を使いこなせているような実感はなかった。守れるものも守れず、多くの人が傷つく姿ばかりを見ていて、辛い思いばかりしていた。
「魔法を使えても、人を守れる力が俺にはないんだよ」
「そんなの私だって一緒だよ。サッキーが感じているように、私だって同じように辛い思いもしている」
「それは俺も理解しているよ。だけど」
俺はもっと力を欲しがっていた。サクラでさえちゃんと守れるくらいの力を、俺は欲しかった。
『あなたは力がほしいですか?』
そんな時だったと思う。あの声を聞いたのは。
「どうやら思い出されたようですね」
「そうか、俺は……もっと強くなりたくて……」
「まさか本当にその力を受け取るとは思いませんでした。勇者の仲間であろうものが、闇の力に手を染めてしまうとは」
心臓が鼓動する。ずっと、ずっと俺は記憶を封じ込めていた。自分の都合のいいように記憶を改変して、悪夢を消し去ろうとしていた。それでも完全に消し去れなかった俺は、サクラは俺を庇って死んだと思い続けて、それを償うために生きようとしていた。
「ですからその力を受け取ったあなたは、既に私の仲間なんですよ。それをお分かりですか?」
「違う! 俺は決してお前の仲間なんかじゃない!」
「あくまで否定するのですね。それもよろしい。ですが」
俺を拘束しているものから、電撃みたいなものが流れてくる。
「ぐわぁぁ」
「あなたの正義は既に悪に染まっているのです。禁断の力に手を出してしまった以上、もうあなたは悪です」
「誰が……悪だ。俺は……サクラやノブナガさんをただ守りたいだけで……」
「その守る力があなたは間違えているんですよ。それに気づくべきなんです」
「ふざ……けるな……」
電撃によって俺の意識は徐々に遠のいていく。ちくしょう、俺はただ守りたいものを守りたいだけ、それなのにどうして……どうして……。
「サクラ……」
「あなたの心がいつまで保てるか、見ものです。でもいずれは染めてあげます。あなたの全てを闇で」
■□■□■□
「ヒスイ様が勇者を殺した? それは本当なんですか?」
「紛れもない事実です。だから彼はある意味では私達の世界で悪と称されています」
「ヒスイ様が悪だなんてそんな! あんなにサクラさんという方を想い続けていたのに、それなのに……」
「私も彼がどれだけサクラの事を好きだったのかは知っているんです。だからこそショックだったんですよ。記憶を改変してしまうくらいに」
「そんな……そんな事って……」
愛する者を自分の殺してしまうなんて、私には到底考えられなかった。私も当事者だったら、同じように記憶を改変してしまうかもしれない。
それに、もしもう一度彼にそんな悲劇が起きたとしたら、今度こそ彼は……。
「皮肉なものですよね。ヒスイも染めてはいけないものだと分かっていたのに手を付けてしまい、結果取り返しのつかない事になってしまいました。世界を守るためとはいえど、それには限度だってあるものです」
「私には分かりませんが、ヒスイ様が手を染めたその力はない、余程のものなんですか?」
「闇属性の魔法の中でも最上級と呼ばれているものです。そしてマルガーテはそれを覚えている彼を、利用しようとしているんです」
「利用って、もしかしてヒスイ様は……」
「道を間違えれば、闇に堕ちてしまいます」
「そんな……そんな事って」
彼がもし悪の道に走ってしまった時、私は果たしてそれを止められるのだろうか。もし刺し違えるような事が起きてしまったその時は、私はきっと彼を……。
「ノブナガ様、いらっしゃいますか?!」
本来知ることの無かった真実に、ただただ驚いていると今度は私の部屋にヒデヨシさんがやってくる。彼女はどこか慌てた様子だった。
「どうかされましたか、ヒデヨシさん」
「大変な事が起きました」
「大変な事?」
「わが安土城が、マルガーテによって完全に包囲されました」
「なんですって」
ノアさんと共に城の外をみる。そこで私達を待っていたのは多数の黒い物体。その数は数え切れない。下手をすれば城下町全域が覆われているかもしれない。
「この前の襲撃はただの予兆にすぎなかったんですね。恐らくマルガーテは私達を全て殺し、この城を自分の拠点にするつもりなのでしょう」
「でもそんな事させるわけには」
「分かっています。しかし今のこの状況、私達の手だけではどうにかなりませんよ」
「それは……」
ふと私ははその大群の中にある姿を見つける。それは見覚えがあり、先ほどまで私達が話していた人物。
「まさかあれは、ヒッシー?」
「嘘……」
「マルガーテ……。流石に仕事が早いですね」
恐れていた事が起きてしまった。ヒスイ様がマルガーテに捕らわれたと知ってから、一日すら経っていないというのに、まさかこんな事になるとは……。
「これは今まで以上に絶体絶命ですよ」
「ヒスイ様……」
「サッキー、大分魔法使えるようになったよね」
「そうか? 俺はまだまだだと思っているけど」
「サッキーは感じてないだけで、皆はそう思ってるよ」
サクラにそうは言われながらも、俺は当時まだ魔法を使いこなせているような実感はなかった。守れるものも守れず、多くの人が傷つく姿ばかりを見ていて、辛い思いばかりしていた。
「魔法を使えても、人を守れる力が俺にはないんだよ」
「そんなの私だって一緒だよ。サッキーが感じているように、私だって同じように辛い思いもしている」
「それは俺も理解しているよ。だけど」
俺はもっと力を欲しがっていた。サクラでさえちゃんと守れるくらいの力を、俺は欲しかった。
『あなたは力がほしいですか?』
そんな時だったと思う。あの声を聞いたのは。
「どうやら思い出されたようですね」
「そうか、俺は……もっと強くなりたくて……」
「まさか本当にその力を受け取るとは思いませんでした。勇者の仲間であろうものが、闇の力に手を染めてしまうとは」
心臓が鼓動する。ずっと、ずっと俺は記憶を封じ込めていた。自分の都合のいいように記憶を改変して、悪夢を消し去ろうとしていた。それでも完全に消し去れなかった俺は、サクラは俺を庇って死んだと思い続けて、それを償うために生きようとしていた。
「ですからその力を受け取ったあなたは、既に私の仲間なんですよ。それをお分かりですか?」
「違う! 俺は決してお前の仲間なんかじゃない!」
「あくまで否定するのですね。それもよろしい。ですが」
俺を拘束しているものから、電撃みたいなものが流れてくる。
「ぐわぁぁ」
「あなたの正義は既に悪に染まっているのです。禁断の力に手を出してしまった以上、もうあなたは悪です」
「誰が……悪だ。俺は……サクラやノブナガさんをただ守りたいだけで……」
「その守る力があなたは間違えているんですよ。それに気づくべきなんです」
「ふざ……けるな……」
電撃によって俺の意識は徐々に遠のいていく。ちくしょう、俺はただ守りたいものを守りたいだけ、それなのにどうして……どうして……。
「サクラ……」
「あなたの心がいつまで保てるか、見ものです。でもいずれは染めてあげます。あなたの全てを闇で」
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「紛れもない事実です。だから彼はある意味では私達の世界で悪と称されています」
「ヒスイ様が悪だなんてそんな! あんなにサクラさんという方を想い続けていたのに、それなのに……」
「私も彼がどれだけサクラの事を好きだったのかは知っているんです。だからこそショックだったんですよ。記憶を改変してしまうくらいに」
「そんな……そんな事って……」
愛する者を自分の殺してしまうなんて、私には到底考えられなかった。私も当事者だったら、同じように記憶を改変してしまうかもしれない。
それに、もしもう一度彼にそんな悲劇が起きたとしたら、今度こそ彼は……。
「皮肉なものですよね。ヒスイも染めてはいけないものだと分かっていたのに手を付けてしまい、結果取り返しのつかない事になってしまいました。世界を守るためとはいえど、それには限度だってあるものです」
「私には分かりませんが、ヒスイ様が手を染めたその力はない、余程のものなんですか?」
「闇属性の魔法の中でも最上級と呼ばれているものです。そしてマルガーテはそれを覚えている彼を、利用しようとしているんです」
「利用って、もしかしてヒスイ様は……」
「道を間違えれば、闇に堕ちてしまいます」
「そんな……そんな事って」
彼がもし悪の道に走ってしまった時、私は果たしてそれを止められるのだろうか。もし刺し違えるような事が起きてしまったその時は、私はきっと彼を……。
「ノブナガ様、いらっしゃいますか?!」
本来知ることの無かった真実に、ただただ驚いていると今度は私の部屋にヒデヨシさんがやってくる。彼女はどこか慌てた様子だった。
「どうかされましたか、ヒデヨシさん」
「大変な事が起きました」
「大変な事?」
「わが安土城が、マルガーテによって完全に包囲されました」
「なんですって」
ノアさんと共に城の外をみる。そこで私達を待っていたのは多数の黒い物体。その数は数え切れない。下手をすれば城下町全域が覆われているかもしれない。
「この前の襲撃はただの予兆にすぎなかったんですね。恐らくマルガーテは私達を全て殺し、この城を自分の拠点にするつもりなのでしょう」
「でもそんな事させるわけには」
「分かっています。しかし今のこの状況、私達の手だけではどうにかなりませんよ」
「それは……」
ふと私ははその大群の中にある姿を見つける。それは見覚えがあり、先ほどまで私達が話していた人物。
「まさかあれは、ヒッシー?」
「嘘……」
「マルガーテ……。流石に仕事が早いですね」
恐れていた事が起きてしまった。ヒスイ様がマルガーテに捕らわれたと知ってから、一日すら経っていないというのに、まさかこんな事になるとは……。
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