魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第3陣守れる力
テストすると言われ、ノブナガさんに連れられてきたのは兵士の訓練所.
戦国時代を生き抜くためのテスト。
事前に渡された簡易的な鎧を身につけてそのど真ん中に立たされた俺は、これから一体何をしようとしているのか察しがついていた。
(恐らくだけど、もしかしたら……)
これは俺のあの力をアピールする絶好のチャンスなのかもしれない。
「ではヒスイ様、これよりテストを開始いたします。ミツヒデ、例の物をお願いします」
「了解いたしました」
少し離れたところで、ノブナガさんとミツヒデの声が聞こえる。どうやら、テストが始まるらしい。ここが日本の戦国時代ならそんなに難しいテストではないとは思うが、はてさて何が出てくるのやら。
「ヒスイとやら、これは貴様が生きるか死ぬか二択しかない重大なテストだ。生き残りたければ、これを乗り越えてみるがいい」
ミツヒデが遠くからそう言うと、広場の端にある巨大な扉が開かれ、巨大な影が現れた。
「うげ、何だあれ!」
歩くたびに砂埃と大きな音を鳴らしながら迫ってくるその影。足音の大きさが広場に鳴り響く中、俺は緊張しながらもその時を待っていた。そしてその影がすぐそこまで来て立ち止まる。やがて舞っていた砂埃が晴れ、その巨大な影が姿を現した。
こ、こいつは……。
「もしかして巨人?」
大きさ五メートルくらいに渡る巨大な人間だった。なんだってこんなに大きい人間が、この時代にいるんだよ。いや、もしかしたら俺が知らないだけで本当はいたのかもしれない。まあ、どちらにせよ、
(一撃でも食らったら、確実に死ぬよなこの装備だと)
こんなボロボロな装備だと耐えられるはずがない。つまり普通の人間なら、生か死か絶望の二択しか与えられないという、何とも不利な状況だ。
(こんなテストあってたまるかと言ってやりたいところだが……)
こんな状況、俺にとってはお手の物だ。これよりでかい怪物なんて見飽きるくらい見てきた。
「テストの内容は、この巨人から五分間生き残るか、もしくは倒すかです。では、始めてください」
ノブナガさんの開始の合図が聞こえる。それと共に、巨人は爆音を立てながら俺に迫っくる。俺はそれに怖気づに、それが俺の範囲にやって来るまで待機する。
「動きませんね彼。諦めたのでしょうか、ノブナガ様」
「いえ恐らく彼は……」
(リハビリの相手にはちょうどいい相手だな)
体の中に秘められている魔力たちを久しぶりに呼び覚ます。
その間に俺のほぼ目の前にやって来た巨人は、迫る勢いを使って、背中に背負っていた巨大な斧を縦に振りかざす。
「あえて動かずにその時を待っています」
「え? つまり」
「今から動き出しますよ」
ようやく体中に魔力が廻ったことを感じた俺は、斧を簡単に避け、巨人の腕を踏み台にして宙へと飛び上がり、すぐさま魔法の詠唱を心の中で始める。
(手始めに、簡単な火の魔法でも使うとするか)
誰しもが一番最初に覚える火の初級魔法、フレイムを唱え、すぐにそれを発動させる。無の空間から、直径一メートルくらいの巨大な火の玉が飛び出し、それを巨人の体にぶつける。
「何もないところから火が」
「何ですかあれは」
「分かりません。でも、彼は私達の知らない何かを持っているのかもしれません」
本来フレイムは初級魔法なので、火の玉はさほど大きいものではないのだが、俺はそれすらも上級魔法並みの威力に変える力を持っている。
(久しぶりの魔法だから、衰えていないか心配だったけど、これなら大丈夫そうだな)
少しだけ安心する俺に対して、まともにそれを食らった巨人はというと、効果は絶大だったのかよろけて今にも倒れそうになっている。ちょっと本気出しすぎたか?
「何かってなんですか?」
「詳しくは分かりませんが、例えるなら」
初めて魔法を見た人達は、今一瞬何が起きたのかさっぱり理解ができていないようだ。そりゃあそうだ。いきなり火が出てきたと思ったら、それが巨人にぶつかって倒れそうになっているのだから、何がなんだか分からないはずだ。
俺も最初はそうだった。けれど、ある人に魔法を教え込まれ、俺は今こうして立派な魔術師になれたんだ。
(それじゃ、トドメを刺すとするか)
次に唱えたのはこれまた初級魔法のアイスという氷魔法。頭上に巨大な氷の塊を出現させ、それを敵の頭に落とす。それを食らった巨人は、頭に食らったこともあってかその場フラフラし始める。
「私達に勝利をもたらす力、でしょうか」
俺はそれに追い打ちをかけるかのように、もう一度アイスをぶつける。すると巨人はいとも簡単に地面とこんにちわさせた。
「あ、あの巨人が一瞬で……」
「な、何が起きたんだ今」
全てが終わったのを察したのか、ノブナガさんと一緒にこの戦いを見ていた兵士たちが口々に感想を漏らす。俺は止めていた息を吐きながら、ノブナガさん達がいる方へ体を向けて一言こう言った。
「え、えっと、お、終わりました」
その瞬間、何故だか周りの兵士達から歓声が沸いた。驚くのは分かるけど、歓声をあげる必要があるか?
思わぬ反応に驚いているとノブナガさんが目を輝かしたまま俺のもとへやってきた。
「すごいですヒスイ様! 今のは何ですか一体」
「え、えっと、ちょっと説明すると長くなるんで、後で説明するって事でいいですか?」
「はい、勿論です。テストも当然合格ですし、是非我が軍の戦力になってください」
「あ、ありがとうございます」
余りの熱烈歓迎に、俺は少し戸惑いながらも彼女にお礼を言う。
こうしてテストに無事合格し、俺は晴れて織田軍の一員になることになった。別に望んでなったわけではないが、魔法が使える場ができて嬉しい。しかもそれが誰かの力になるというのなら尚更だ。
『魔法は自分の為に使うのではなく、誰かの為に使いなさい。そうすればきっと、あなたも立派な勇者のお供として成長できますから』
いつか師匠がくれた言葉を思い出す。異世界に来たばかりの頃の俺は、突然勇者のお供になる為に魔法を覚えろと言われ、かなり混乱してしまっていた。
そんな俺に師匠がかけてくれたこの言葉は、今でも忘れていない。彼女が俺にくれた言葉は、今思い出すとどれも大切なことばかりで、俺がここまで成長できたのは彼女のおかげだと言える。
(またいつか会えないかな師匠)
そうすれば俺の成長した姿を見せる事ができるのにと思ってしまう。
「では、戻って歓迎会を開きましょう。ミツヒデ準備を」
「かしこまりました」
俺が師匠の事を思い出している間に、いつの間にか事が進んでいた。歓迎会だなんて大げさだなと思わず思いながらも、少しだけ嬉しかった。こんな自分の力でも、また誰かの為になって、誰かが喜んでくれるならこちらとしてもとてもありがたい事だ。
「さあヒスイ様、お部屋の準備を致しますので、中に戻りましょう」
「あ、はい」
あの時も誰かに喜んでくれることも多くて、それが力になったこともあった。そしてそれと同じ事が今新しい場所で起きている。それが運命なのかまでは分からないけど、きっと誰かが俺を必要としてくれたのだろう。だったら俺はその期待に応えたい。
「ノブナガさん」
「何ですか?」
「俺絶対に頑張りますから」
決意新たに、俺の新しい旅は始まりを迎える。
「期待していますよ、ヒスイ様」
「はい。絶対に後悔しないように活躍して見せます」
魔法使いが戦国時代を生き抜くという新しい物語が……。
戦国時代を生き抜くためのテスト。
事前に渡された簡易的な鎧を身につけてそのど真ん中に立たされた俺は、これから一体何をしようとしているのか察しがついていた。
(恐らくだけど、もしかしたら……)
これは俺のあの力をアピールする絶好のチャンスなのかもしれない。
「ではヒスイ様、これよりテストを開始いたします。ミツヒデ、例の物をお願いします」
「了解いたしました」
少し離れたところで、ノブナガさんとミツヒデの声が聞こえる。どうやら、テストが始まるらしい。ここが日本の戦国時代ならそんなに難しいテストではないとは思うが、はてさて何が出てくるのやら。
「ヒスイとやら、これは貴様が生きるか死ぬか二択しかない重大なテストだ。生き残りたければ、これを乗り越えてみるがいい」
ミツヒデが遠くからそう言うと、広場の端にある巨大な扉が開かれ、巨大な影が現れた。
「うげ、何だあれ!」
歩くたびに砂埃と大きな音を鳴らしながら迫ってくるその影。足音の大きさが広場に鳴り響く中、俺は緊張しながらもその時を待っていた。そしてその影がすぐそこまで来て立ち止まる。やがて舞っていた砂埃が晴れ、その巨大な影が姿を現した。
こ、こいつは……。
「もしかして巨人?」
大きさ五メートルくらいに渡る巨大な人間だった。なんだってこんなに大きい人間が、この時代にいるんだよ。いや、もしかしたら俺が知らないだけで本当はいたのかもしれない。まあ、どちらにせよ、
(一撃でも食らったら、確実に死ぬよなこの装備だと)
こんなボロボロな装備だと耐えられるはずがない。つまり普通の人間なら、生か死か絶望の二択しか与えられないという、何とも不利な状況だ。
(こんなテストあってたまるかと言ってやりたいところだが……)
こんな状況、俺にとってはお手の物だ。これよりでかい怪物なんて見飽きるくらい見てきた。
「テストの内容は、この巨人から五分間生き残るか、もしくは倒すかです。では、始めてください」
ノブナガさんの開始の合図が聞こえる。それと共に、巨人は爆音を立てながら俺に迫っくる。俺はそれに怖気づに、それが俺の範囲にやって来るまで待機する。
「動きませんね彼。諦めたのでしょうか、ノブナガ様」
「いえ恐らく彼は……」
(リハビリの相手にはちょうどいい相手だな)
体の中に秘められている魔力たちを久しぶりに呼び覚ます。
その間に俺のほぼ目の前にやって来た巨人は、迫る勢いを使って、背中に背負っていた巨大な斧を縦に振りかざす。
「あえて動かずにその時を待っています」
「え? つまり」
「今から動き出しますよ」
ようやく体中に魔力が廻ったことを感じた俺は、斧を簡単に避け、巨人の腕を踏み台にして宙へと飛び上がり、すぐさま魔法の詠唱を心の中で始める。
(手始めに、簡単な火の魔法でも使うとするか)
誰しもが一番最初に覚える火の初級魔法、フレイムを唱え、すぐにそれを発動させる。無の空間から、直径一メートルくらいの巨大な火の玉が飛び出し、それを巨人の体にぶつける。
「何もないところから火が」
「何ですかあれは」
「分かりません。でも、彼は私達の知らない何かを持っているのかもしれません」
本来フレイムは初級魔法なので、火の玉はさほど大きいものではないのだが、俺はそれすらも上級魔法並みの威力に変える力を持っている。
(久しぶりの魔法だから、衰えていないか心配だったけど、これなら大丈夫そうだな)
少しだけ安心する俺に対して、まともにそれを食らった巨人はというと、効果は絶大だったのかよろけて今にも倒れそうになっている。ちょっと本気出しすぎたか?
「何かってなんですか?」
「詳しくは分かりませんが、例えるなら」
初めて魔法を見た人達は、今一瞬何が起きたのかさっぱり理解ができていないようだ。そりゃあそうだ。いきなり火が出てきたと思ったら、それが巨人にぶつかって倒れそうになっているのだから、何がなんだか分からないはずだ。
俺も最初はそうだった。けれど、ある人に魔法を教え込まれ、俺は今こうして立派な魔術師になれたんだ。
(それじゃ、トドメを刺すとするか)
次に唱えたのはこれまた初級魔法のアイスという氷魔法。頭上に巨大な氷の塊を出現させ、それを敵の頭に落とす。それを食らった巨人は、頭に食らったこともあってかその場フラフラし始める。
「私達に勝利をもたらす力、でしょうか」
俺はそれに追い打ちをかけるかのように、もう一度アイスをぶつける。すると巨人はいとも簡単に地面とこんにちわさせた。
「あ、あの巨人が一瞬で……」
「な、何が起きたんだ今」
全てが終わったのを察したのか、ノブナガさんと一緒にこの戦いを見ていた兵士たちが口々に感想を漏らす。俺は止めていた息を吐きながら、ノブナガさん達がいる方へ体を向けて一言こう言った。
「え、えっと、お、終わりました」
その瞬間、何故だか周りの兵士達から歓声が沸いた。驚くのは分かるけど、歓声をあげる必要があるか?
思わぬ反応に驚いているとノブナガさんが目を輝かしたまま俺のもとへやってきた。
「すごいですヒスイ様! 今のは何ですか一体」
「え、えっと、ちょっと説明すると長くなるんで、後で説明するって事でいいですか?」
「はい、勿論です。テストも当然合格ですし、是非我が軍の戦力になってください」
「あ、ありがとうございます」
余りの熱烈歓迎に、俺は少し戸惑いながらも彼女にお礼を言う。
こうしてテストに無事合格し、俺は晴れて織田軍の一員になることになった。別に望んでなったわけではないが、魔法が使える場ができて嬉しい。しかもそれが誰かの力になるというのなら尚更だ。
『魔法は自分の為に使うのではなく、誰かの為に使いなさい。そうすればきっと、あなたも立派な勇者のお供として成長できますから』
いつか師匠がくれた言葉を思い出す。異世界に来たばかりの頃の俺は、突然勇者のお供になる為に魔法を覚えろと言われ、かなり混乱してしまっていた。
そんな俺に師匠がかけてくれたこの言葉は、今でも忘れていない。彼女が俺にくれた言葉は、今思い出すとどれも大切なことばかりで、俺がここまで成長できたのは彼女のおかげだと言える。
(またいつか会えないかな師匠)
そうすれば俺の成長した姿を見せる事ができるのにと思ってしまう。
「では、戻って歓迎会を開きましょう。ミツヒデ準備を」
「かしこまりました」
俺が師匠の事を思い出している間に、いつの間にか事が進んでいた。歓迎会だなんて大げさだなと思わず思いながらも、少しだけ嬉しかった。こんな自分の力でも、また誰かの為になって、誰かが喜んでくれるならこちらとしてもとてもありがたい事だ。
「さあヒスイ様、お部屋の準備を致しますので、中に戻りましょう」
「あ、はい」
あの時も誰かに喜んでくれることも多くて、それが力になったこともあった。そしてそれと同じ事が今新しい場所で起きている。それが運命なのかまでは分からないけど、きっと誰かが俺を必要としてくれたのだろう。だったら俺はその期待に応えたい。
「ノブナガさん」
「何ですか?」
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