魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第48陣その時見た顔は
「ヒスイ様が行方不明?!」
朝、織田軍を衝撃的な報せが走り抜けた。桜木翡翠が昨晩外に出て以来帰って来てないという。離れを出るまでは利休が知っていたが、どうも足元がおぼついていなかったらしい。
「どうしてまた、行方不明だなんて……」
「ヒッシー、昨日様子がおかしかったですよね」
「そういえば昨日、突然倒れましたよね。それと何か関係があるんでしょうか」
「もしかしたら、あり得そうですよねノブナガ様」
前回の行方不明の際は、まだ理由もあったし、行動範囲も何となくではあるが分かっていた。しかし、今回に限っては理由も行動範囲も把握できていない。
二人が唸っている中、伝令が入ってくる。
「伝令! 桜木翡翠殿の所在の確認ができました」
「本当ですか? ではすぐに呼び戻してください。もしくは私が向かいます」
「それが一つ問題が起きていまして」
「問題?」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
知らぬ間にかなりの距離を歩いていた。
外はすっかり明るくなっていて、俺は見知らぬ地にただ一人放浪していた。
(どこだここ)
声が聞こえなくなってしまってから、しばらくが経つ。どうやらその声は、俺をここに連れて来たかったらしい。
(まるで屋敷みたいだけど……)
戦国時代のものとは似ても似つかないその屋敷は、まるで俺を歓迎しているかのように扉が開かれていた。
(とりあえず入るか)
躊躇うことなく中に入る。だが中は真っ暗になっていて、何も見えない。
(明かりもなさそうだし、どうするか)
そう考えていると、突然光が灯り玄関先が急に明るくなる。
「ようやく来てくれたね、サッキー」
そして明かりがついた先に、俺を待つ一人の影が見えた。そこにいたのは、少し短めの黒い髪、整った顔立ち。そして俺をサッキーと呼ぶただ一人の人物。
「サクラ? どうしてお前がここに……」
サクラだった。
「サッキーが何か大変なことに巻き込まれている、って聞いたから来ちゃった」
笑顔でそんな事を言うが、絶対にあり得ないのだ。彼女がもう一度俺の目の前に現れる何てことは。
「いや、来ちゃったじゃなくて。だってお前はあの時……」
俺を庇って死んだはず。それなのに、どうして?
「そっか。サッキー、忘れちゃったんだ」
「忘れたって、何をだよ」
「思い出せないならそれでいいや。それよりさ、私サッキーに一つ提案があるんだ」
「提案?」
まだ色々聞きたいことがあるが、今はとりあえずその提案というのを聞いてみる。
「サッキーさ、またこうして私と再会できたんだからさ、結婚してまたあの世界で一緒に生きようよ」
「はい?」
それは、俺の予想を逸脱した提案だった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「何もない所で姿が消えた?」
「はい。場所はここからそんなに離れていない場所です。恐らくヒスイ様を拾われた辺りだったと思います」
「確かにあの周辺はとくに何もありませんが……」
伝令が伝えたのは、ヒスイが何もない場所で忽然と姿を消したという事だった。あの辺りは何もないのだから、普通は見失うはずがないと思っているノブナガは、その話が信じられずにいた。
だが、伝令がある物を取り出した事で、それは確信へと変わってしまう。
「実は消えたであろう場所に、これが落ちていました」
「これは」
「ヒッシーが使っている太刀だ」
「私があげた太刀です。いつも持っていましたから、その辺りに落ちていたというのなら、恐らくそれは」
「ヒッシーがその辺りで消えたっていう証拠になる、ですか?」
「はい。信じられませんけど」
何とも非現実的な話で、到底信じられない。
だから、
「ヒデヨシさん、準備してください」
「え?」
「今からヒスイ様の所へ私達も向かいます」
「は、はい!」
二人はそそくさと準備を始める。
(ヒスイ様、待っていてください。必ず見つけ出してみせますから)
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「結婚って、何度も言うけどお前は死んでいる。そして俺はあの世界に戻るどころか、元の時代にすら戻れない。だからその提案は受け入れないぞ」
一瞬サクラの提案に、動揺をしてしまったが、色々と不可能なことがあるので、絶対に無理だと分かった。だがサクラは、引き下がろうとはしない。
「何を言っているのサッキーは。よく考えてみなよ、ここはサッキーがよく知る時代なの?」
「俺がよく知る時代?」
確かにここは本来の戦国時代とはかけ離れている。だから本当なのかは定かではないが、それを何故異界の人物の彼女が知っている? それこそおかしな話だ。
「お前……もしかしてサクラじゃないな」
いやもしかしなくも、彼女はサクラではない。では誰がこんな幻影を俺に見せている?
「い、いきなり何を言い出すのサッキーは。私はサクラだよ」
「だったらどうして、俺の世界のことを知っている?」
「そ、それは……」
「とんだ墓穴を掘ったようだな、偽物。さあ、早くその姿を……」
ドスッ
そこまで言った所で、背中に何か強烈な痛みが走るのを感じた。それはまるで、何かに貫かれたかのような痛み。血が出ているのを背中から感じる。
「う、そだろ……」
「幻想空間、この世界ならではの方法だったんですけど」
あまりの痛みに意識が遠のき始める中で、屋敷が崩れ去り元いた場所に戻ったのを確認する。そしてサクラであった人物がそこに姿を現す。
「お前……は」
「おやすみなさい、サクラギヒスイ」
だがその名を呼ぶ前に、俺の意識は無情にも途切れてしまった。
(何が……どうなっているんだ……。この時代、いやこの世界は)
最後の最後に見たその顔は……。
「サクラギヒスイ討ち取ったり」
朝、織田軍を衝撃的な報せが走り抜けた。桜木翡翠が昨晩外に出て以来帰って来てないという。離れを出るまでは利休が知っていたが、どうも足元がおぼついていなかったらしい。
「どうしてまた、行方不明だなんて……」
「ヒッシー、昨日様子がおかしかったですよね」
「そういえば昨日、突然倒れましたよね。それと何か関係があるんでしょうか」
「もしかしたら、あり得そうですよねノブナガ様」
前回の行方不明の際は、まだ理由もあったし、行動範囲も何となくではあるが分かっていた。しかし、今回に限っては理由も行動範囲も把握できていない。
二人が唸っている中、伝令が入ってくる。
「伝令! 桜木翡翠殿の所在の確認ができました」
「本当ですか? ではすぐに呼び戻してください。もしくは私が向かいます」
「それが一つ問題が起きていまして」
「問題?」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
知らぬ間にかなりの距離を歩いていた。
外はすっかり明るくなっていて、俺は見知らぬ地にただ一人放浪していた。
(どこだここ)
声が聞こえなくなってしまってから、しばらくが経つ。どうやらその声は、俺をここに連れて来たかったらしい。
(まるで屋敷みたいだけど……)
戦国時代のものとは似ても似つかないその屋敷は、まるで俺を歓迎しているかのように扉が開かれていた。
(とりあえず入るか)
躊躇うことなく中に入る。だが中は真っ暗になっていて、何も見えない。
(明かりもなさそうだし、どうするか)
そう考えていると、突然光が灯り玄関先が急に明るくなる。
「ようやく来てくれたね、サッキー」
そして明かりがついた先に、俺を待つ一人の影が見えた。そこにいたのは、少し短めの黒い髪、整った顔立ち。そして俺をサッキーと呼ぶただ一人の人物。
「サクラ? どうしてお前がここに……」
サクラだった。
「サッキーが何か大変なことに巻き込まれている、って聞いたから来ちゃった」
笑顔でそんな事を言うが、絶対にあり得ないのだ。彼女がもう一度俺の目の前に現れる何てことは。
「いや、来ちゃったじゃなくて。だってお前はあの時……」
俺を庇って死んだはず。それなのに、どうして?
「そっか。サッキー、忘れちゃったんだ」
「忘れたって、何をだよ」
「思い出せないならそれでいいや。それよりさ、私サッキーに一つ提案があるんだ」
「提案?」
まだ色々聞きたいことがあるが、今はとりあえずその提案というのを聞いてみる。
「サッキーさ、またこうして私と再会できたんだからさ、結婚してまたあの世界で一緒に生きようよ」
「はい?」
それは、俺の予想を逸脱した提案だった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「何もない所で姿が消えた?」
「はい。場所はここからそんなに離れていない場所です。恐らくヒスイ様を拾われた辺りだったと思います」
「確かにあの周辺はとくに何もありませんが……」
伝令が伝えたのは、ヒスイが何もない場所で忽然と姿を消したという事だった。あの辺りは何もないのだから、普通は見失うはずがないと思っているノブナガは、その話が信じられずにいた。
だが、伝令がある物を取り出した事で、それは確信へと変わってしまう。
「実は消えたであろう場所に、これが落ちていました」
「これは」
「ヒッシーが使っている太刀だ」
「私があげた太刀です。いつも持っていましたから、その辺りに落ちていたというのなら、恐らくそれは」
「ヒッシーがその辺りで消えたっていう証拠になる、ですか?」
「はい。信じられませんけど」
何とも非現実的な話で、到底信じられない。
だから、
「ヒデヨシさん、準備してください」
「え?」
「今からヒスイ様の所へ私達も向かいます」
「は、はい!」
二人はそそくさと準備を始める。
(ヒスイ様、待っていてください。必ず見つけ出してみせますから)
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「結婚って、何度も言うけどお前は死んでいる。そして俺はあの世界に戻るどころか、元の時代にすら戻れない。だからその提案は受け入れないぞ」
一瞬サクラの提案に、動揺をしてしまったが、色々と不可能なことがあるので、絶対に無理だと分かった。だがサクラは、引き下がろうとはしない。
「何を言っているのサッキーは。よく考えてみなよ、ここはサッキーがよく知る時代なの?」
「俺がよく知る時代?」
確かにここは本来の戦国時代とはかけ離れている。だから本当なのかは定かではないが、それを何故異界の人物の彼女が知っている? それこそおかしな話だ。
「お前……もしかしてサクラじゃないな」
いやもしかしなくも、彼女はサクラではない。では誰がこんな幻影を俺に見せている?
「い、いきなり何を言い出すのサッキーは。私はサクラだよ」
「だったらどうして、俺の世界のことを知っている?」
「そ、それは……」
「とんだ墓穴を掘ったようだな、偽物。さあ、早くその姿を……」
ドスッ
そこまで言った所で、背中に何か強烈な痛みが走るのを感じた。それはまるで、何かに貫かれたかのような痛み。血が出ているのを背中から感じる。
「う、そだろ……」
「幻想空間、この世界ならではの方法だったんですけど」
あまりの痛みに意識が遠のき始める中で、屋敷が崩れ去り元いた場所に戻ったのを確認する。そしてサクラであった人物がそこに姿を現す。
「お前……は」
「おやすみなさい、サクラギヒスイ」
だがその名を呼ぶ前に、俺の意識は無情にも途切れてしまった。
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