魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第54陣二つの時代をつなぐもの
翌日、ノブナガさんの部屋へと招かれた俺は、早速要件を訪ねた。
「実はですね、ヒスイ様に話しておきたいことがあるんです」
最初にノブナガさんはそう切り出すと、近くにあった棚から何か箱のようなものを取り出した。
「これは?」
「開けてみてください」
ノブナガさんに言われて、箱を開けてみる。だがその中には何も入っていなかった。
「あれ? 何も入っていないんですけど」
「本来そこにはある物が入っていました。しかしそれは少し前になくなってしまっていたんです」
「なくなったって、誰かが盗んだとか、落としたとか可能性はないんですか?」
「実はどちらの可能性もあり得ないんですよ。前者はまず、この箱が存在しているのを私しか知らない上に、その在り処も私しか知りません。後者はこの箱は手に入れてから一度も取り出したりしていないんです」
「じゃあノブナガさんが知らないだけで、実は他の誰かが知っているとかは?」
「その可能性も考えたのですが、それも考えられないんです」
「どうしてですか?」
「実はこの箱の中に本来入っていたのは、名前すらも分からない物だったんです。そしてそれを手に入れたのはヒスイ様がこの世界に来られた前日、そしてなくなったのがヒスイ様が来られた丁度その日なんです」
「え?」
それだとまるで、俺がこの世界に来たからその箱の中身がなくなったみたいな話になるが、それってただの偶然なのかもしれない。でもどうしてか偶然には思えない理由があった。
「もしかしてノブナガさん、その箱の中身って……」
俺は一つだけ思い当たることがあったので、その中身を絵に現してみる。
「これではないですか?」
この世界にやって来る数時間前に、偶然拾った勾玉だった。
「そう、それです。って、どうしてヒスイ様がそれを知っているんですか?」
「えっと、実はですね」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「あれ? こんな物家にあったっけ」
話は遡ること、この世界へやってくる少し前。新年度を迎えるにあたって、俺は家の大掃除を行っていた。その時家の床に手のひらサイズくらいの緑色の勾玉を発見した。
最初は見知らぬ物に不気味がっていたが、よくよく見るとなかなか綺麗だったので、掃除が終わった後寝転がりながら桜と一緒にそれを眺めていた。
「こんなの今時見つかる物なのかな」
見た感じかなりの古物に見えるが、前に住んでいた人が落としたのだろうか? など色々な可能性に頭を巡らせていたが、結局結論は出なかった。
「じゃあもしかしたら」
「はい。俺がこの時代にやって来た事と、関係がある可能性があります」
「でもどうして、その勾玉という物が私達の所からヒスイ様の世界へと移動したのですかね」
「それは俺もちょっと分かりません。でも何らかの意味があると俺は思いますよ」
「そうですね」
とりあえずこの話は、保留という結論になり、それ以降その話をすることはなかった。
「ところでノブナガさん、個人的な用事ってそれだけですか?」
「あ、いえ。用事はそれだけではないんです。これからヒスイ様にはある所について来てほしいので、外へ出る準備をしてください」
「あ、はい」
再び合流する時間を決めて、俺はノブナガさんの部屋を出る。
(そういえば今更だけど、あいつ元気にしているかな)
ここに来る前の事を思い出したことによって、俺はもう一つある事を思い出していた。今更ではあるが、俺はもう二ヶ月近く留守にしている。単純に計算するなら、もう六月になっているはずだ。大学の単位の事もそうだけど、また行方不明になっているのだから、きっと他の人達に心配をかけているに違いない。
(もう居なくならないなんて言ったのになぁ……)
帰ったらすごく怒られそうな気がする。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
翡翠の心配通り、彼が行方不明になっていることは二ヶ月経つ今でも、必死の捜索が行われていた。 誰もが今度こそ彼が何かの事件に巻き込まれているものだと思い込み、無事の帰還は絶望的だとさえ囁かれていた。
「なあ、あれからもうすぐどれくらいになる?」
「半年」
「警察も言っていたけど、もうあいつは……」
「何諦めているの? あんたがそこまで薄情な人間なだなんて私思わなかった」
「けどな桜、もう半年も経つんだぞ?  そろそろ本気で考えた方が……」
「そう言って、あの時は一年後にはちゃんと翡翠は帰って来たのよ。 だったら私は諦めない。帰って来るまで絶対に諦めない」
だがその中で、唯一諦めていない人物が一人。彼との幼馴染である、
日向桜。
彼女は翡翠が必ず帰って来ることを信じてやまなかった。
(もう居なくならないって、約束したんだからそれくらいは守りなさいよ馬鹿翡翠)
あの日帰って来た時に交わしたあの約束。それがあるのだから彼は裏切らないし、彼女も破らないと決めていた。だから、信じて待つ以外、彼女の選択肢はなかった。
(きっとあの勾玉だってそう。必ず帰って来ることを示すものだよね)
何故か彼の部屋にあったこの勾玉。それを桜自身も同じものを持っていた。つい先日、自分の部屋に同じものが何故か落ちていた。勿論心当たりがないので、今は大切にしまっているが、きっと彼からの何かしらのメッセージだと彼女は思っている。
きっと帰って来るというメッセージの。
「実はですね、ヒスイ様に話しておきたいことがあるんです」
最初にノブナガさんはそう切り出すと、近くにあった棚から何か箱のようなものを取り出した。
「これは?」
「開けてみてください」
ノブナガさんに言われて、箱を開けてみる。だがその中には何も入っていなかった。
「あれ? 何も入っていないんですけど」
「本来そこにはある物が入っていました。しかしそれは少し前になくなってしまっていたんです」
「なくなったって、誰かが盗んだとか、落としたとか可能性はないんですか?」
「実はどちらの可能性もあり得ないんですよ。前者はまず、この箱が存在しているのを私しか知らない上に、その在り処も私しか知りません。後者はこの箱は手に入れてから一度も取り出したりしていないんです」
「じゃあノブナガさんが知らないだけで、実は他の誰かが知っているとかは?」
「その可能性も考えたのですが、それも考えられないんです」
「どうしてですか?」
「実はこの箱の中に本来入っていたのは、名前すらも分からない物だったんです。そしてそれを手に入れたのはヒスイ様がこの世界に来られた前日、そしてなくなったのがヒスイ様が来られた丁度その日なんです」
「え?」
それだとまるで、俺がこの世界に来たからその箱の中身がなくなったみたいな話になるが、それってただの偶然なのかもしれない。でもどうしてか偶然には思えない理由があった。
「もしかしてノブナガさん、その箱の中身って……」
俺は一つだけ思い当たることがあったので、その中身を絵に現してみる。
「これではないですか?」
この世界にやって来る数時間前に、偶然拾った勾玉だった。
「そう、それです。って、どうしてヒスイ様がそれを知っているんですか?」
「えっと、実はですね」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「あれ? こんな物家にあったっけ」
話は遡ること、この世界へやってくる少し前。新年度を迎えるにあたって、俺は家の大掃除を行っていた。その時家の床に手のひらサイズくらいの緑色の勾玉を発見した。
最初は見知らぬ物に不気味がっていたが、よくよく見るとなかなか綺麗だったので、掃除が終わった後寝転がりながら桜と一緒にそれを眺めていた。
「こんなの今時見つかる物なのかな」
見た感じかなりの古物に見えるが、前に住んでいた人が落としたのだろうか? など色々な可能性に頭を巡らせていたが、結局結論は出なかった。
「じゃあもしかしたら」
「はい。俺がこの時代にやって来た事と、関係がある可能性があります」
「でもどうして、その勾玉という物が私達の所からヒスイ様の世界へと移動したのですかね」
「それは俺もちょっと分かりません。でも何らかの意味があると俺は思いますよ」
「そうですね」
とりあえずこの話は、保留という結論になり、それ以降その話をすることはなかった。
「ところでノブナガさん、個人的な用事ってそれだけですか?」
「あ、いえ。用事はそれだけではないんです。これからヒスイ様にはある所について来てほしいので、外へ出る準備をしてください」
「あ、はい」
再び合流する時間を決めて、俺はノブナガさんの部屋を出る。
(そういえば今更だけど、あいつ元気にしているかな)
ここに来る前の事を思い出したことによって、俺はもう一つある事を思い出していた。今更ではあるが、俺はもう二ヶ月近く留守にしている。単純に計算するなら、もう六月になっているはずだ。大学の単位の事もそうだけど、また行方不明になっているのだから、きっと他の人達に心配をかけているに違いない。
(もう居なくならないなんて言ったのになぁ……)
帰ったらすごく怒られそうな気がする。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
翡翠の心配通り、彼が行方不明になっていることは二ヶ月経つ今でも、必死の捜索が行われていた。 誰もが今度こそ彼が何かの事件に巻き込まれているものだと思い込み、無事の帰還は絶望的だとさえ囁かれていた。
「なあ、あれからもうすぐどれくらいになる?」
「半年」
「警察も言っていたけど、もうあいつは……」
「何諦めているの? あんたがそこまで薄情な人間なだなんて私思わなかった」
「けどな桜、もう半年も経つんだぞ?  そろそろ本気で考えた方が……」
「そう言って、あの時は一年後にはちゃんと翡翠は帰って来たのよ。 だったら私は諦めない。帰って来るまで絶対に諦めない」
だがその中で、唯一諦めていない人物が一人。彼との幼馴染である、
日向桜。
彼女は翡翠が必ず帰って来ることを信じてやまなかった。
(もう居なくならないって、約束したんだからそれくらいは守りなさいよ馬鹿翡翠)
あの日帰って来た時に交わしたあの約束。それがあるのだから彼は裏切らないし、彼女も破らないと決めていた。だから、信じて待つ以外、彼女の選択肢はなかった。
(きっとあの勾玉だってそう。必ず帰って来ることを示すものだよね)
何故か彼の部屋にあったこの勾玉。それを桜自身も同じものを持っていた。つい先日、自分の部屋に同じものが何故か落ちていた。勿論心当たりがないので、今は大切にしまっているが、きっと彼からの何かしらのメッセージだと彼女は思っている。
きっと帰って来るというメッセージの。
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