魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第58陣守れない力
魔王との戦いは終わりを迎えた。
だけどあの時、サクラを失った悲しみに暮れていた俺は、ある違和感に気がつかなかった。いや、気付きたくなかったのかもしれない。
『まだ……闇は……終わらぬ』
魔王は消える間際にそう言っていた。それが何を意味していたのか、その答えが今俺の目の前にあった。
「お前は一度倒していたはずなのに、何で生きている」
「倒したからといって、死んだとは限りません。特に私達魔族に関しては」
勝てるのか俺一人で。ただでさえ、彼女の力はかなりの物だ。それを皆を守りながら果たして戦えるのか?
(でもやるしかない)
魔法を唱える。やらなければ倒される。だったらやるしかない。
「ヒスイ様!」
「ヒッシー!」
今まさに戦いが繰り広げられようとした時に、いつの間にやって来たのかノブナガさんとヒデヨシが俺を呼ぶ声がする。
「まずはあなたより、あそこの二人を倒しましょうか。そうすれば、あなたなんか」
「な、やめろ!」
「ダークランス」
漆黒の槍を二人に向けて投げる。駄目だ今からじゃ間に合わない。
いや、意地でも間に合わす。
考えるよりも先に体が動いていた。一瞬だけ転移魔法を使って、二人の目の前に転移する。だが槍は目の前だ。
「ヒッシー、危ない!」
「ヒスイ様!」
俺はそこから僅か一秒足らずで火の壁を作り上げ、何とか攻撃を阻止する。だがこれを何度もやられたら流石に敵わない。
「よくもノブナガ様に手を出してくれたな貴様!」
「え?」
攻撃を防いだ直後、ミツヒデの声がしたと思ったら魔王の娘に斬りかかる彼女の姿があった。
「ミツヒデ、やめ……」
「私にそんな剣で挑むとは愚かですね」
そのミツヒデを一本の槍が貫いた。
おい、嘘だろ。
「ミツヒデ!?」
こんな事って、ありかよ。
「この野郎がぁぁ」
俺は一瞬我を忘れて、太刀で奴に斬りかかっていた。
「先にターゲットが来てくれるとは、何ともラッキーですね」
その俺に対して超近距離で魔法を発動させられる。俺はそれを食らいながらも、光を纏った太刀で彼女の胸に刺した。
「そ、そんな私がまた……」
「はぁ……はぁ……」
「負けるとでも思いましたか?」
「え?!」
と思った瞬間には、俺の身体は闇の炎に包まれていた。
「ヒッシー!!」
「ヒスイ様ぁぁ」
「これで終わりですね、魔法使い桜木翡翠」
炎に包まれた俺を、さらに追撃するかのように自分に刺さった太刀を、抜き差して俺に、
  
刺した。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ふぅ、これで目的も完了しましたし、あなた達の命はこんどもらうとしましょう」
本当に一瞬の出来事だった。ヒスイ様もミツヒデ、私達の目の前でやられた。ヒデヨシは二人に駆け寄り、必死に呼びかけている。だけど私は……。
「待ちなさい!」
去ろうとする魔王の娘を呼び止めていた。
「あなたは確かに織田信長でしたね。今のを見ていたなら、私に余計な気を起こさせる前に去ったほうがいいですよ」
「誰が去るものですか! 私の大切な人をよくもあなたは!」
このまま何もせずにはいられなかった。私の中で渦巻く怒りが、体を動かす。
「ノブナガ様、やめてください! いくらノブナガ様でも」
「許せない。許さない!」
太刀を抜く。そして私は彼女に斬りかかり……。
「のぶ……ながさん! やめて……ください」
「ヒスイ様、どうして……」
そんな私を止めたのはヒスイ様だった。今にも倒れそうな体で必死に彼は私を止める。
「お願い……です。必ず俺が……倒しますから…………」
そう言うとヒスイ様は倒れこむ。どうやら既に意識は飛んでしまっていたらしい。
「ヒスイ様……」
「どうやら救われましたね彼に」
ヒスイ様を抱きかかえる私を、彼女は見下した目で見てくる。
「絶対に私があなたを倒しますから」
「できることならしてみなさい」
それだけ言うと、彼女は闇の中へと消えていってしまった。残されたのは私とヒデヨシと傷ついた二人。
「ノブナガ様……」
「ヒデヨシ、忘れないでください。この怒りを、この痛みを」
「……はい」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
あれからどれくらい俺は眠っていたのだろうか?  ノブナガさんを必死に食い止めたところまでは覚えていたけれど、そこからどうなっているのかは分からない。
(ノブナガさん……)
俺は無力だった。一人では何もできない人間だと痛感した。仲間がいたから俺は強くいられた。俺一人ではできないと分かっていたのに、あいつに挑んでそしえ負けた。
だからミツヒデも守れなかった。
魔法を使えるからって、いい気になっていたけど守れるはずのものも守れない。
何が誰かを守るための力だ。
何が魔法使いだ。
『それは違うよ、サッキー』
どこからかサクラの声がする。何が違うんだよサクラ。
『サッキーはこれまで沢山の人を守ってきた。それだけでも充分だよ。それはこれからもできる。だから諦めないで』
これからも? 俺はこれからも誰かを守れるのか? こんな俺が?
「……」
長い夢から目が覚めた。久しぶりに見たノブナガさんの部屋。視界の片隅にはノブナガさんが俺を見ている。
「ヒスイ様、よかった目を覚ましてくれたんですね」
「ノブナガさん……」
かろうじて声が出る。そして一番聞きたいことをノブナガさんに聞く。
「その、ミツヒデは?」
「ミツヒデは……その……」
ノブナガさんは何かをためらうかのように口を結ぶ。それを見ただけでも、俺は彼女が何を言いたいのか分かった。
「ノブナガさん、我慢しなくていいですよ。これは俺の責任ですから」
だから俺は、あえてそれは口にせずに彼女に優しい言葉をかけた。
「ヒスイ……様?」
「もしここまで我慢してきたなら、泣いてくださいノブナガさん。ここでなら誰も見てませんから。それに俺も……」
分かった上で俺は言葉を口にする。そして俺の目にも涙が流れ始めていた。
そう、俺達は大切な仲間を一人失ったのだ。
ミツヒデという大切な仲間を。
俺が力及ばなかった為に。
「泣きたい……ですけど……もう泣けないんです。もう一人で何度も何度も泣きましたから。だから……」
ノブナガさんはそっと俺に体を預けた。俺は痛む身体を何とか我慢しながら、それを受け止めた。
「だからせめて、今だけは……ヒスイ様の側でずっとこのままでいさせてください」
だけどあの時、サクラを失った悲しみに暮れていた俺は、ある違和感に気がつかなかった。いや、気付きたくなかったのかもしれない。
『まだ……闇は……終わらぬ』
魔王は消える間際にそう言っていた。それが何を意味していたのか、その答えが今俺の目の前にあった。
「お前は一度倒していたはずなのに、何で生きている」
「倒したからといって、死んだとは限りません。特に私達魔族に関しては」
勝てるのか俺一人で。ただでさえ、彼女の力はかなりの物だ。それを皆を守りながら果たして戦えるのか?
(でもやるしかない)
魔法を唱える。やらなければ倒される。だったらやるしかない。
「ヒスイ様!」
「ヒッシー!」
今まさに戦いが繰り広げられようとした時に、いつの間にやって来たのかノブナガさんとヒデヨシが俺を呼ぶ声がする。
「まずはあなたより、あそこの二人を倒しましょうか。そうすれば、あなたなんか」
「な、やめろ!」
「ダークランス」
漆黒の槍を二人に向けて投げる。駄目だ今からじゃ間に合わない。
いや、意地でも間に合わす。
考えるよりも先に体が動いていた。一瞬だけ転移魔法を使って、二人の目の前に転移する。だが槍は目の前だ。
「ヒッシー、危ない!」
「ヒスイ様!」
俺はそこから僅か一秒足らずで火の壁を作り上げ、何とか攻撃を阻止する。だがこれを何度もやられたら流石に敵わない。
「よくもノブナガ様に手を出してくれたな貴様!」
「え?」
攻撃を防いだ直後、ミツヒデの声がしたと思ったら魔王の娘に斬りかかる彼女の姿があった。
「ミツヒデ、やめ……」
「私にそんな剣で挑むとは愚かですね」
そのミツヒデを一本の槍が貫いた。
おい、嘘だろ。
「ミツヒデ!?」
こんな事って、ありかよ。
「この野郎がぁぁ」
俺は一瞬我を忘れて、太刀で奴に斬りかかっていた。
「先にターゲットが来てくれるとは、何ともラッキーですね」
その俺に対して超近距離で魔法を発動させられる。俺はそれを食らいながらも、光を纏った太刀で彼女の胸に刺した。
「そ、そんな私がまた……」
「はぁ……はぁ……」
「負けるとでも思いましたか?」
「え?!」
と思った瞬間には、俺の身体は闇の炎に包まれていた。
「ヒッシー!!」
「ヒスイ様ぁぁ」
「これで終わりですね、魔法使い桜木翡翠」
炎に包まれた俺を、さらに追撃するかのように自分に刺さった太刀を、抜き差して俺に、
  
刺した。
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「ふぅ、これで目的も完了しましたし、あなた達の命はこんどもらうとしましょう」
本当に一瞬の出来事だった。ヒスイ様もミツヒデ、私達の目の前でやられた。ヒデヨシは二人に駆け寄り、必死に呼びかけている。だけど私は……。
「待ちなさい!」
去ろうとする魔王の娘を呼び止めていた。
「あなたは確かに織田信長でしたね。今のを見ていたなら、私に余計な気を起こさせる前に去ったほうがいいですよ」
「誰が去るものですか! 私の大切な人をよくもあなたは!」
このまま何もせずにはいられなかった。私の中で渦巻く怒りが、体を動かす。
「ノブナガ様、やめてください! いくらノブナガ様でも」
「許せない。許さない!」
太刀を抜く。そして私は彼女に斬りかかり……。
「のぶ……ながさん! やめて……ください」
「ヒスイ様、どうして……」
そんな私を止めたのはヒスイ様だった。今にも倒れそうな体で必死に彼は私を止める。
「お願い……です。必ず俺が……倒しますから…………」
そう言うとヒスイ様は倒れこむ。どうやら既に意識は飛んでしまっていたらしい。
「ヒスイ様……」
「どうやら救われましたね彼に」
ヒスイ様を抱きかかえる私を、彼女は見下した目で見てくる。
「絶対に私があなたを倒しますから」
「できることならしてみなさい」
それだけ言うと、彼女は闇の中へと消えていってしまった。残されたのは私とヒデヨシと傷ついた二人。
「ノブナガ様……」
「ヒデヨシ、忘れないでください。この怒りを、この痛みを」
「……はい」
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あれからどれくらい俺は眠っていたのだろうか?  ノブナガさんを必死に食い止めたところまでは覚えていたけれど、そこからどうなっているのかは分からない。
(ノブナガさん……)
俺は無力だった。一人では何もできない人間だと痛感した。仲間がいたから俺は強くいられた。俺一人ではできないと分かっていたのに、あいつに挑んでそしえ負けた。
だからミツヒデも守れなかった。
魔法を使えるからって、いい気になっていたけど守れるはずのものも守れない。
何が誰かを守るための力だ。
何が魔法使いだ。
『それは違うよ、サッキー』
どこからかサクラの声がする。何が違うんだよサクラ。
『サッキーはこれまで沢山の人を守ってきた。それだけでも充分だよ。それはこれからもできる。だから諦めないで』
これからも? 俺はこれからも誰かを守れるのか? こんな俺が?
「……」
長い夢から目が覚めた。久しぶりに見たノブナガさんの部屋。視界の片隅にはノブナガさんが俺を見ている。
「ヒスイ様、よかった目を覚ましてくれたんですね」
「ノブナガさん……」
かろうじて声が出る。そして一番聞きたいことをノブナガさんに聞く。
「その、ミツヒデは?」
「ミツヒデは……その……」
ノブナガさんは何かをためらうかのように口を結ぶ。それを見ただけでも、俺は彼女が何を言いたいのか分かった。
「ノブナガさん、我慢しなくていいですよ。これは俺の責任ですから」
だから俺は、あえてそれは口にせずに彼女に優しい言葉をかけた。
「ヒスイ……様?」
「もしここまで我慢してきたなら、泣いてくださいノブナガさん。ここでなら誰も見てませんから。それに俺も……」
分かった上で俺は言葉を口にする。そして俺の目にも涙が流れ始めていた。
そう、俺達は大切な仲間を一人失ったのだ。
ミツヒデという大切な仲間を。
俺が力及ばなかった為に。
「泣きたい……ですけど……もう泣けないんです。もう一人で何度も何度も泣きましたから。だから……」
ノブナガさんはそっと俺に体を預けた。俺は痛む身体を何とか我慢しながら、それを受け止めた。
「だからせめて、今だけは……ヒスイ様の側でずっとこのままでいさせてください」
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