魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した

りょう

第63陣力の代償

 そしてそれから更に一時間後。

「これで……終わった」

 ヒデヨシの体からは闇触は完全に消え失せた。俺の魔力はもう残っていない。

「ヒスイ様、お疲れ様です」

「ありがとうございます……。でもまだ、ノアル師匠が」

「その心配はいりませんよ、ヒスイ」

「え?」

 首だけ動かして声が聞こえた場所を見る。そこには傷はつきながらも、しっかりと立っている師匠の姿があった。

「師匠、よかった。マルガーテを倒したんですね」

「はい。何とか」

 その言葉を聞いて俺は一安心した。

 これで、これで戦いは終わったんだ。

「よかっ……た」

 俺はノブナガさんに支えられたまま、ゆっくりと瞼を閉じた。

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「それじゃあヒスイ様は……」

「はい。残念ですけど」

 戦いが終わって三日。ヒデヨシさんとヒスイ様は未だ眠ったまま。ヒデヨシさんはヒスイ様のおかげで見た目はかなり回復した様子が見られる。もうすぐ目を覚ますかもしれない。

「何とかならないんですか? このまま終わりなんて、私にはできません」

「ノブナガさんの気持ちは分かりますが、もうどうにもならない所まで来ています。ヒスイはそもそもこの世界に来てから、かなりの負担を体にかけていました。本来なら魔法なんて使えるはずのないこの世界で、体内に宿る魔力だけで戦い続けるなんてあり得ない話なんです」

「ヒスイ様はそれを分かっていて?」

「ハッキリとは言い切れませんが、恐らくヒスイは分かっていたのかもしれません。いつかはこうなるって」

 ただもう一人、ヒスイ様だけは事情が違った。彼は魔力の使いすぎによって倒れ、ここ数日起きる様子も見せない。その理由はノアルさん曰く、魔法のない世界で無理して魔法を使った結果だという。だから彼女は私にこう告げたのだ。

『ヒスイの命は、もう限られてきています。だから彼を元の世界へと帰してあげてほしいんです』

 彼の魔法という力に、今まで何度も助けられてきた。だがその代償は私にとって、いやこの織田軍にとってあまりに大きすぎるものだった。

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 やはり先に目を覚ましたのはヒデヨシさんだった。もうすぐ一週間が経とうというのに、一向にヒスイ様が目を覚ます気配がない。

「そんな……ヒッシーが私の為に……」

 その話を聞いたヒデヨシさんはショックを受けていた。当たり前だ、自分の為に彼は命を賭けたのだから。

「ヒデヨシさん、悲観しているだけじゃだめですよ。彼の意識が戻るのを信じて待ちましょう」

 そんな彼女に私は、励ましの言葉をかける以外何もできなかった。私だって本当は辛い。だけどそんなので挫けていたって、彼は戻ってこない。だから信じて待つことにした。

「でも……ヒッシーずっと無理していたし……。ミツヒデさんの時だって、怪我を負っていますよ」

「だからって諦めるんですか? どんな危ない時だって彼はちゃんと目を覚ましてくれたじゃないですか。だから今回だってきっと」

「そんなに心配なさらなくてと大丈夫ですよ、二人共」

 更にマイナス思考になるヒデヨシさんに、ノアルさんが言葉をかけてくれる。私もヒデヨシさんと同じように不安に何度も陥入りそうになったけど、彼女がかけてくれた言葉は何度も私の力になってくれた。

「あなたはヒッシーの師匠の……」

「ノアルです。ヒスイがようやく目を覚ましたので、お二人を呼びに来ました」

『本当ですか?!』

「はい。他の方も既にお呼びしたので、来てください」

 ヒスイ様がやっと目を覚ました。その言葉を聞いた私は心から喜んだ。だけど、それと同時に、

『ヒスイの命は、もう限られてきています。だから彼を元の世界へと帰してあげてほしいんです』

 別れが少しずつ近づいているという現実に、私は悲しくてたまらなかった。

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 どれだけ俺は暗い闇の中にいたのだろうか。ヒデヨシを助けて、マルガーテも倒して一安心した後、何かの糸が切れたかのように俺は意識を失った。

 それから俺はどれくらい眠っていたのだろうか。

「ヒスイ様!」

「ヒッシー!」

 いつの間にか目を覚ましていたヒデヨシと、最後まで俺を支えてくれたノブナガさんの姿をもう一度見たら、そんな事どうでもよくなっていた。

「ネネもリキュウさんも……。俺の事を心配してくれていたんですね」

「当たり前じゃないですかぁ。あんないい場面で帰ったことを正直後悔しているくらいですからぁ」

「お姉様が助かって、あんたがいないなんてなったら、お姉様が悲しむのでさっさと目を覚まして欲しかっただけですよ」

「ははっ」

 相変わらずネネはヒデヨシ一筋だけど心配してくれていただけでも嬉しかった。だからなのかもしれない、すぐにこんな言葉が出てきたのは。

「皆ありがとう」

 今までなかなか言えなかった言葉が、今ようやく言えた。本当はもっと感謝しなきゃいけない事が沢山あるをだけどな。

「ヒスイ」

 そして少しした後に、ノアル師匠が俺の名前を呼ぶ。未だに何故彼女がここにいるのかは謎のままだけど、またこうして再会できただけでもすごく嬉しかった。

「師匠、俺なんとか帰ってこれました」

「おかえりなさい」

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