魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第65陣いつか見た星空の下で 中編
その日の夕刻、俺達はある場所へと向かっていた。
「この山って確か」
「ヒッシーが初めて戦った場所だよ。懐かしいね」
「二ヶ月前の出来事なのにな。今思うとあの時から義元はマルガーテだったんだな」
「そうなりますね。戦を仕掛けてきたのも、そういう意味も含んでいたのかもしれませんし」
「そうですね」
この山に来た時点で、ヒデヨシが行こうとしている場所に気付いた。そこはまだ来たばかりの頃に皆で一緒に星空を見た場所。そこに今回は三人だけで行こうという事らしい。
「あれから振り返ると、色々あったよね」
「そうだな。二ヶ月の間に色々あったものな。ヒデヨシに結婚を申し込まれたりしたし」
「もう何でそこだけピックアップするの? 他にも色々あったでしょ」
「あれは私も吃驚しましたよ。しかもその直後に色々ありましたからね」
「そ、そうだよヒッシーだって、皆に迷惑かけたし。私の事を言えないよ」
「あ、あの時は少し気が動転していたんだよ。勿論二人に悪いことをしたなって思っているし、あの時はまだサクラの事を引きずってたから」
道中思い出話(?)に花を咲かせる俺達。二ヶ月俺はこの世界で暮らして、何度も戦いを経験して、何度も挫けそうなことが起きた日もあった。
特にサクラの事に関しては、本当に謝りたい。
乗り越えられるまで何度も皆に迷惑をかけていたし、ヒデヨシやノブナガさんを傷つけてしまった事だってあった。でもその間誰も俺を見捨てないでいてくれた。
「ヒスイ様がここを飛び出したと聞いた時は、私も気が動転してしまいましたけど、私にも責任があったんですよね」
「ノブナガさんは悪くないですよ。むしろ見捨てないでくれた事に俺は感謝しています。だから改めてお礼を言わせてください。ありがとうございました」
「そんな、まるでもう会えないみたいな言い方をしないでくださいよ」
ノブナガさんがそう言った直後、俺は足を止める。
(こんな会話していると、この世界を去るみたいな感じだけど、それは……)
本当になるかもしれない事なんだよな。どちらを選んだとしても長くはこの世界にいられない。本当はもっと一緒にいたいけど、それも叶わない。だとしたら俺はどちらを選ぶべきなのだろうか?
一生会えなくなるか、もしくは僅かでも可能性を残して別れるか。そんなの勿論後者に決まっている。たとえゼロに等しくても、僅かでも希望を残してもいいのではないか?
「ヒスイ様?」
「ヒッシー?」
突然足を止めた俺に、二人は不思議そうに尋ねる。
「あ、ごめん。ちょっと疲れて休んだだけだから、さあ行こう」
だとしたら俺が出す答えは一つしかない。でもそれを、二人は、いや皆は本当に受け入れてくれるのだろうか?
この来るべき別れを。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
山を登ること十分弱、目的地へと到着。まだ日が沈みきっていないからか、あの星空は見えない。
「ちょっと来るの早かったんじゃないか?」
「そう思って、軽い食事を私が用意してきました」
俺がその事を言うと、ノブナガさんはそれが分かっていたと言わんばかりに、軽食を取り出す。とりあえず夜になるまで、お腹を満たしながら待つことにした。
(もしあの話をするなら、今しかないのかな)
「あのさ二人とも……」
今しがた俺の中で固まった決意を二人に話そうと思い、俺は口を開こうとする。だけどその話を切り出したのは、意外にも
「ヒスイ様、私達に話す事があるんじゃないですか?」
ノブナガさんだった。
「え? えっと……」
「ヒデヨシさんがお昼頃に私達を誘ったのも、ここへ連れてきたのも何かの意味があると私は思ったんです。そらがヒスイ様の意志でないにしろ、話すことは話すべきではないじゃないですか?」
「ノブナガ様、私は別にそんな意図はなかったんですけど」
「ヒデヨシさんは少しだけ黙っていてください。私先程ヒスイ様に私の意見は話しましたが、ヒスイ様自身の答えは聞けていません」
ヒデヨシの制止を振り切り、話を続けるノブナガさん。さっきは中途半端に終わってしまったが、今回はそうはいかないらしい。
「キツイ言い方になってしまいますが、選ぶ時間はそんなに残されていません。決めたなら決めたで話す、悩んでいるなら私達に相談してみてはいかがですか?」
「ノブナガ様の言っていることは正しいよヒッシー。私も今ヒッシーがどう思っているか聞きたいな」
お前には朝少し言っただろと思いながらも、それは言葉にしない。もしかしたらノブナガさんは、俺がさっき立ち止まった別の意味を、感じたのかもしれない。だから助け舟を出してくれた。俺はそれに答えるべきなのかもしれない。
「一日中あの事をずっと考え続けていたんだけど、さっき俺は答えを見つけたんです」
「やはりそうでしたか。じゃあその答えを私達に話してくれますか?」
「はい。でもその前に一ついいですか?」
「何でしょうか」
俺はそこで一旦話を止めて、後ろを振り返る。
「そこにいる二人にも、聞いてもらいたいんです」
一本の木に向けてそう言うと、影が二つそこから現れた。
「気配を消せていると思ったんですけど……」
「お姉様ー」
その影の正体は師匠とネネ。山を登り始めた頃から、二人が付いてきていたのを、俺はとっくに見破っていた。
「ちょっ、ネネ。いきなり……きゃっ」
「盗み聞きするなら、最初からついてくればよかったのに」
という事で改めて四人が揃ったところで、俺は改めて話を切り出させてもらった。
「ノブナガさん、ヒデヨシ、ネネ、師匠。俺は決めました」
全員の名を呼んで、一旦間を空ける。そしてら俺は。自分の言葉でしっかりと、自分の答えを示した。
「俺は師匠と一緒に、この世界を去ろうと思います」
「この山って確か」
「ヒッシーが初めて戦った場所だよ。懐かしいね」
「二ヶ月前の出来事なのにな。今思うとあの時から義元はマルガーテだったんだな」
「そうなりますね。戦を仕掛けてきたのも、そういう意味も含んでいたのかもしれませんし」
「そうですね」
この山に来た時点で、ヒデヨシが行こうとしている場所に気付いた。そこはまだ来たばかりの頃に皆で一緒に星空を見た場所。そこに今回は三人だけで行こうという事らしい。
「あれから振り返ると、色々あったよね」
「そうだな。二ヶ月の間に色々あったものな。ヒデヨシに結婚を申し込まれたりしたし」
「もう何でそこだけピックアップするの? 他にも色々あったでしょ」
「あれは私も吃驚しましたよ。しかもその直後に色々ありましたからね」
「そ、そうだよヒッシーだって、皆に迷惑かけたし。私の事を言えないよ」
「あ、あの時は少し気が動転していたんだよ。勿論二人に悪いことをしたなって思っているし、あの時はまだサクラの事を引きずってたから」
道中思い出話(?)に花を咲かせる俺達。二ヶ月俺はこの世界で暮らして、何度も戦いを経験して、何度も挫けそうなことが起きた日もあった。
特にサクラの事に関しては、本当に謝りたい。
乗り越えられるまで何度も皆に迷惑をかけていたし、ヒデヨシやノブナガさんを傷つけてしまった事だってあった。でもその間誰も俺を見捨てないでいてくれた。
「ヒスイ様がここを飛び出したと聞いた時は、私も気が動転してしまいましたけど、私にも責任があったんですよね」
「ノブナガさんは悪くないですよ。むしろ見捨てないでくれた事に俺は感謝しています。だから改めてお礼を言わせてください。ありがとうございました」
「そんな、まるでもう会えないみたいな言い方をしないでくださいよ」
ノブナガさんがそう言った直後、俺は足を止める。
(こんな会話していると、この世界を去るみたいな感じだけど、それは……)
本当になるかもしれない事なんだよな。どちらを選んだとしても長くはこの世界にいられない。本当はもっと一緒にいたいけど、それも叶わない。だとしたら俺はどちらを選ぶべきなのだろうか?
一生会えなくなるか、もしくは僅かでも可能性を残して別れるか。そんなの勿論後者に決まっている。たとえゼロに等しくても、僅かでも希望を残してもいいのではないか?
「ヒスイ様?」
「ヒッシー?」
突然足を止めた俺に、二人は不思議そうに尋ねる。
「あ、ごめん。ちょっと疲れて休んだだけだから、さあ行こう」
だとしたら俺が出す答えは一つしかない。でもそれを、二人は、いや皆は本当に受け入れてくれるのだろうか?
この来るべき別れを。
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山を登ること十分弱、目的地へと到着。まだ日が沈みきっていないからか、あの星空は見えない。
「ちょっと来るの早かったんじゃないか?」
「そう思って、軽い食事を私が用意してきました」
俺がその事を言うと、ノブナガさんはそれが分かっていたと言わんばかりに、軽食を取り出す。とりあえず夜になるまで、お腹を満たしながら待つことにした。
(もしあの話をするなら、今しかないのかな)
「あのさ二人とも……」
今しがた俺の中で固まった決意を二人に話そうと思い、俺は口を開こうとする。だけどその話を切り出したのは、意外にも
「ヒスイ様、私達に話す事があるんじゃないですか?」
ノブナガさんだった。
「え? えっと……」
「ヒデヨシさんがお昼頃に私達を誘ったのも、ここへ連れてきたのも何かの意味があると私は思ったんです。そらがヒスイ様の意志でないにしろ、話すことは話すべきではないじゃないですか?」
「ノブナガ様、私は別にそんな意図はなかったんですけど」
「ヒデヨシさんは少しだけ黙っていてください。私先程ヒスイ様に私の意見は話しましたが、ヒスイ様自身の答えは聞けていません」
ヒデヨシの制止を振り切り、話を続けるノブナガさん。さっきは中途半端に終わってしまったが、今回はそうはいかないらしい。
「キツイ言い方になってしまいますが、選ぶ時間はそんなに残されていません。決めたなら決めたで話す、悩んでいるなら私達に相談してみてはいかがですか?」
「ノブナガ様の言っていることは正しいよヒッシー。私も今ヒッシーがどう思っているか聞きたいな」
お前には朝少し言っただろと思いながらも、それは言葉にしない。もしかしたらノブナガさんは、俺がさっき立ち止まった別の意味を、感じたのかもしれない。だから助け舟を出してくれた。俺はそれに答えるべきなのかもしれない。
「一日中あの事をずっと考え続けていたんだけど、さっき俺は答えを見つけたんです」
「やはりそうでしたか。じゃあその答えを私達に話してくれますか?」
「はい。でもその前に一ついいですか?」
「何でしょうか」
俺はそこで一旦話を止めて、後ろを振り返る。
「そこにいる二人にも、聞いてもらいたいんです」
一本の木に向けてそう言うと、影が二つそこから現れた。
「気配を消せていると思ったんですけど……」
「お姉様ー」
その影の正体は師匠とネネ。山を登り始めた頃から、二人が付いてきていたのを、俺はとっくに見破っていた。
「ちょっ、ネネ。いきなり……きゃっ」
「盗み聞きするなら、最初からついてくればよかったのに」
という事で改めて四人が揃ったところで、俺は改めて話を切り出させてもらった。
「ノブナガさん、ヒデヨシ、ネネ、師匠。俺は決めました」
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