魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第81陣潜む闇
色々な事が起きた翌日の昼、早速桜の特訓を始める事になった。
「って言っても、何から教えればいいのやら」
「もう挫折? 情けないわね」
「別にそうじゃないんだよ。ただ一つ昨日忘れていたことがあってな」
「なになに、何かあったの?」
「いやいやお前の事だからな」
そういえばこいつ、ノブナガさんの前で何も出来ない丸々初心者だとか言っていた気がするけど、すっかり忘れていたことが一つあった。
「お前剣道得意だったよな」
「うん。時間があったら最近でも大会に出たりしているよ」
「じゃあ竹刀じゃなくても剣とかは振れるよな?」
「うん」
「俺教えることなくないか?」
実は桜は巷で有名なくらいの実力を持っている剣道の有段者だった。しかも全国大会の経験だってある。つまり彼女はかなり運動神経が良い。
「折角だから翡翠の腕前を一度見てみたいのよ。それに私の剣道は本物の戦場では役に立たないと思うの」
「何でそう思うんだ?」
「最近でも剣道やっているって言ったけど、どうも最近うまくいかなくて。だから翡翠に鍛え直してもらいたいの」
「そこまで俺も実力ないけど、お前がそう言うなら分かったよ」
(スランプにでもなったのかな、桜)
今まで順調に剣道の腕前を上げていたはずなのに、どうして今になってうまくいかなくなってしまったのだろうか? そんな話を彼女から一度も聞いたことがなかったので、俺は少しだけ驚いたのであった。
「じゃあ最初は基礎的な事なんだけど……」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
特訓は夕方まで続き、二人ともすっかり疲れてしまったので今日はこの辺にする事になった。
「あー疲れた」
ヘトヘトになりながら肩を並べて城へ戻っていく俺と桜。なぜか教える側である俺の方が疲れているような気がするのは、気のせいかな。
「もう、教える側が疲れてどうするのよ」
「どうするも何も、お前全然腕前を衰えてないじゃないか。これのどこが調子よくないんだよ」
「分かってないなぁ翡翠は。この程度じゃ県大会レベルなのよ」
「いやいや、それでも俺は充分すごいと思うけど」
すっかり青春系な雰囲気になりながら城に戻ると、入口でヒデヨシが待っていた。
「あ、おかえり二人とも」
「おう、ただいま。というか一人で何やっているんだこんな所で」
「ちょっとね。私は後から戻るから先に入ってていいよ」
「分かった」
ヒデヨシを入口において、俺と桜はそれぞれの部屋へと戻っていった。
(あいつが一人で何かするなんて、珍しいな)
一息ついた後に、先程のヒデヨシを思い出した。今までヒデヨシがああして一人になる事は珍しいので、少しだけ不思議だった。何か特別な用事があったのだろうか。
(まあ、ヒデヨシも色々あるんだろう)
とりあえず気にし過ぎてもあれなので、そのまま夜になるのを待つことにした。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
異変が起きたのは一年前ヒッシーに助けてもらってからだったと思う。誰にも話せないでいるけど、今は特に大きな事は起きていないので心配ないと思っていた。
だけど一昨日、
『あなたは一度闇に囚われたもの。いずれ私の物になる』
その声は突然聞こえた。丁度ヒッシー達のパーティを行っている頃だった。最初は全く気にしていなかったのだけれど、それがハッキリしたのはノブナガ様が怪我をしたとの知らせが入った頃。
『無視しても無駄ですよ。あなたにはもうハッキリと聞こえているはずです、私の声が』
二度目の声が聞こえた時、私は恐怖を覚えて部屋に逃げ出した。ノブナガ様やヒッシーに申し訳なかったけど、とにかく怖くて、私は翌日にノブナガ様に呼ばれるまで、で外へ出られなかった。
(本当はあの時に声を出して助けを求めればよかったんだ。だけどそれすらも私は怖くて……)
気がついたら日付が変わり、気がつけば夕方になっていた。そしてついさっき、
『外へ出てきてください。他の方に手出しをされたくなければ、今すぐに一人で』
私は声に誘われるがまま外へ出た。そして今に至る。
「誰なの? ずっと私に囁いているのは! 出てきて」
ヒッシーが城の中に消えたのを見計らって、私は声を出した。
『まあまあ、そんなに怒る必要はありませんよ。私はちゃんとここにいますから』
「どこなの?!」
辺りを見回すが姿は見えない。もしかしてからかわれているのだろうか?
『見えませんか? ここですよ』
再び声がしたのでそこに目を移す。そこにあったのは、私の影。
まさか……。
「私の影の中に」
『正確にはあなたの身体に潜んでいる闇の中からあなたに語りかけています』
「私の中の闇?」
もしかして一年前に私がかかった闇触の事を示しているのかな。あれはヒッシーが完治してくれたって、
『何を勘違いしているか分かりませんが、決して闇触は完全に消し去ることはできないんです。だから今こうしてあなたの影として、私の一部を置かさせてもらっています』
「これで一部、なの?」
だったら本体のマルガーテは、もっと強い。ノブナガ様が負けてしまうくらい。そんなの相手に私はどうすれば……。
『私が怖いですか? 自分の一部に私がいるのは確かに怖いでしょ。でもそれを振り払う方法は一つだけあります』
「振り払う……方法?」
『あなたが私の物になればいいのですよ、羽柴秀吉さん』
「って言っても、何から教えればいいのやら」
「もう挫折? 情けないわね」
「別にそうじゃないんだよ。ただ一つ昨日忘れていたことがあってな」
「なになに、何かあったの?」
「いやいやお前の事だからな」
そういえばこいつ、ノブナガさんの前で何も出来ない丸々初心者だとか言っていた気がするけど、すっかり忘れていたことが一つあった。
「お前剣道得意だったよな」
「うん。時間があったら最近でも大会に出たりしているよ」
「じゃあ竹刀じゃなくても剣とかは振れるよな?」
「うん」
「俺教えることなくないか?」
実は桜は巷で有名なくらいの実力を持っている剣道の有段者だった。しかも全国大会の経験だってある。つまり彼女はかなり運動神経が良い。
「折角だから翡翠の腕前を一度見てみたいのよ。それに私の剣道は本物の戦場では役に立たないと思うの」
「何でそう思うんだ?」
「最近でも剣道やっているって言ったけど、どうも最近うまくいかなくて。だから翡翠に鍛え直してもらいたいの」
「そこまで俺も実力ないけど、お前がそう言うなら分かったよ」
(スランプにでもなったのかな、桜)
今まで順調に剣道の腕前を上げていたはずなのに、どうして今になってうまくいかなくなってしまったのだろうか? そんな話を彼女から一度も聞いたことがなかったので、俺は少しだけ驚いたのであった。
「じゃあ最初は基礎的な事なんだけど……」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
特訓は夕方まで続き、二人ともすっかり疲れてしまったので今日はこの辺にする事になった。
「あー疲れた」
ヘトヘトになりながら肩を並べて城へ戻っていく俺と桜。なぜか教える側である俺の方が疲れているような気がするのは、気のせいかな。
「もう、教える側が疲れてどうするのよ」
「どうするも何も、お前全然腕前を衰えてないじゃないか。これのどこが調子よくないんだよ」
「分かってないなぁ翡翠は。この程度じゃ県大会レベルなのよ」
「いやいや、それでも俺は充分すごいと思うけど」
すっかり青春系な雰囲気になりながら城に戻ると、入口でヒデヨシが待っていた。
「あ、おかえり二人とも」
「おう、ただいま。というか一人で何やっているんだこんな所で」
「ちょっとね。私は後から戻るから先に入ってていいよ」
「分かった」
ヒデヨシを入口において、俺と桜はそれぞれの部屋へと戻っていった。
(あいつが一人で何かするなんて、珍しいな)
一息ついた後に、先程のヒデヨシを思い出した。今までヒデヨシがああして一人になる事は珍しいので、少しだけ不思議だった。何か特別な用事があったのだろうか。
(まあ、ヒデヨシも色々あるんだろう)
とりあえず気にし過ぎてもあれなので、そのまま夜になるのを待つことにした。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
異変が起きたのは一年前ヒッシーに助けてもらってからだったと思う。誰にも話せないでいるけど、今は特に大きな事は起きていないので心配ないと思っていた。
だけど一昨日、
『あなたは一度闇に囚われたもの。いずれ私の物になる』
その声は突然聞こえた。丁度ヒッシー達のパーティを行っている頃だった。最初は全く気にしていなかったのだけれど、それがハッキリしたのはノブナガ様が怪我をしたとの知らせが入った頃。
『無視しても無駄ですよ。あなたにはもうハッキリと聞こえているはずです、私の声が』
二度目の声が聞こえた時、私は恐怖を覚えて部屋に逃げ出した。ノブナガ様やヒッシーに申し訳なかったけど、とにかく怖くて、私は翌日にノブナガ様に呼ばれるまで、で外へ出られなかった。
(本当はあの時に声を出して助けを求めればよかったんだ。だけどそれすらも私は怖くて……)
気がついたら日付が変わり、気がつけば夕方になっていた。そしてついさっき、
『外へ出てきてください。他の方に手出しをされたくなければ、今すぐに一人で』
私は声に誘われるがまま外へ出た。そして今に至る。
「誰なの? ずっと私に囁いているのは! 出てきて」
ヒッシーが城の中に消えたのを見計らって、私は声を出した。
『まあまあ、そんなに怒る必要はありませんよ。私はちゃんとここにいますから』
「どこなの?!」
辺りを見回すが姿は見えない。もしかしてからかわれているのだろうか?
『見えませんか? ここですよ』
再び声がしたのでそこに目を移す。そこにあったのは、私の影。
まさか……。
「私の影の中に」
『正確にはあなたの身体に潜んでいる闇の中からあなたに語りかけています』
「私の中の闇?」
もしかして一年前に私がかかった闇触の事を示しているのかな。あれはヒッシーが完治してくれたって、
『何を勘違いしているか分かりませんが、決して闇触は完全に消し去ることはできないんです。だから今こうしてあなたの影として、私の一部を置かさせてもらっています』
「これで一部、なの?」
だったら本体のマルガーテは、もっと強い。ノブナガ様が負けてしまうくらい。そんなの相手に私はどうすれば……。
『私が怖いですか? 自分の一部に私がいるのは確かに怖いでしょ。でもそれを振り払う方法は一つだけあります』
「振り払う……方法?」
『あなたが私の物になればいいのですよ、羽柴秀吉さん』
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