魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第114陣少女に託されし力とその想い
リアラを亡くした後で色々あったが、何よりも心配だったのがヒデヨシだった。あれから二日経ってヒデヨシが目を覚めしたとの事で、彼女の元を訪ねたのだが、
「ごめんヒッシー、今私誰にも会いたくないの……」
部屋の前で門前払いされてしまった。本当は何か言葉をかけてあげたかったのだが、到底話もできそうになかったので、この日は諦める事に。
「ヒデヨシさん、やはり駄目そうですか」
「しばらくは話す事もできないかもしれないですね。多分」
「どうしてこんな事に……」
「俺も分からないです。でも、あの時マルガーテがヒデヨシを襲わなければ、こうはならなかったかもしれませんけど」
「そうすればリアラさんだって……」
暗い雰囲気だけが漂う。ヒデヨシやノブナガさんもそうかもしれないが、リアラの死は誰よりも俺が一番ショックを受けていた。もしあの場に俺が間に合っていれば、あの惨劇を回避できたかもしれない。その考えばかりが俺の頭の中を回り続けている。
(そもそもリアラは、戦闘より補助の方だったから……)
ろくに戦えない。それを分かっていても彼女はヒデヨシの窮地を救い、その命を散らした。ヒデヨシにその力を託して。
(リアラが託した力って、一体何なんだ)
それも気になっているが、ヒデヨシがあれではどうにもならない。もしマルガーテに対抗できる大きな力を託しているなら、ヒデヨシに立ち直ってもらわなければならない。それを支える事ができるのは……。
「ノブナガさん、俺やっぱりヒデヨシと話してきます」
「え? でもヒデヨシさんは……」
「リアラの件は俺にも責任があるんです。だからヒデヨシの傷を癒すのは俺しかいないんです」
「あ、ヒスイ様!」
迷いはなかった。ここでヒデヨシを放置するなんて事はできないと思ったから、彼女の元へと向かった。俺も一度、いや二度大切な人を失っているから、その痛みは理解できる。だから……。
「ヒデヨシ!」
「ヒッシー……どうして? 私は誰にも会いたくないって……」
「そんなの関係ない。ただ俺は」
ヒデヨシにはこれを乗り越えて、前を向いてもらいたい。
「ヒデヨシに立ち直ってもらいたいんだ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
目覚めは最悪だった。何度も何度もあの夢ばかりを見て、何度も何度もリアラちゃんが死ぬのを繰り返して、吐きそうになってしまった。
(あれ、私……どうして……)
どうして生きているんだろう。
起きて一番最初に考えた事がそれだった。戦いからも逃げて、ノブナガ様やヒッシーからも逃げたくせに、命を張って助けてもらったなんて……。
(生き残る意味がない)
私よりもリアラちゃんの方が優秀だし、ヒッシーと同じくらい強い。その彼女が何でこんな私の為なんかに命を張って助けたのだろうか。
(本当にどうして……)
私なんかに生きる価値あるのかな。
「ごめんヒッシー、今私誰にも会いたくないの」
気がつけばヒッシーが部屋を訪ねてきていた。でもヒッシーの顔を見れない私は、それを拒絶する。
これでいい。
私はもうこれでいいんだ。
ヒッシーの事は今でも好きだけど、これでいい。もう私は……。
「本当にごめん、ヒッシー」
辛い、こんなにも人に会う事が辛く感じるなんて思わなかった。心の中では本当は助けてほしいと願っているのかもしれないけど、それでも私は今は、いやこれから人と会うのは避けたい。
それがたとえノブナガ様でも。
「うぅ……ひっく」
自然と涙が流れてくる。ずっと我慢してきた涙。今はただ泣きたい。誰にも構わず泣き続けて、そして……。
「ヒデヨシ!」
突然扉が開かれてヒッシーが入ってくる。さっき拒んだはずなのに、どうして……。
「そんなの関係ない、俺はただ……」
どうしてヒッシーはそんなに……。
「ヒデヨシに立ち直ってもらいたいんだ」
そんなに私に優しいの?
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「立ち直るなんて、そんなの私できないよヒッシー……」
先程まで泣いていたのか、目を腫らしながらヒデヨシがそう答える。
「できるよ、お前なら」
「そんな勝手な事言わないでよ。ヒッシーは何も分かっていないくせに」
「何も分かってないわけないだろ! 大切な仲間を失くしたのはお前だけじゃないんだよヒデヨシ」
何も分かってない、その言葉に俺は思わず反応してしまった。俺だって同じように悲しいし、ヒデヨシの気持ちは痛いほど分かる。だから、何も分かってないなんて言わないでもらいたかった。
「確かにヒッシーもリアラちゃんを亡くしてショックなのは分かる。だけれど、私だって同じだよ!」
「同じなら……同じなら、それを乗り越えるんだよヒデヨシ! お前はそんなに弱い人間なのか? 違うだろ」
「そんなのヒッシーの思い込みだよ! 私だって弱いところは沢山あるもん」
「そうだろうな。だけどその弱さを乗り越えて人間は強くなれる」
「強くなんてなれなくていい! 私はもう弱いままでいいの」
「だったら、お前に力を託してくれたリアラの想いはどうなるんだ!」
「え? それはどういう意味なの?」
どうやらヒデヨシは理解できていなかったらしい。リアラが最後にヒデヨシに託したある想いを。
「俺もあの時は気づかなかったけど、リアラはマルガーテに呪縛の魔法をかけると同時に、お前にある力を託していたんだよ」
「ある力?」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
実はあの事件の後の昨日、師匠からこんな話を聞いていた。
「え? ヒデヨシから魔力を感じるんですか?」
「はい。治療していて気づいたんですが、いくつかの傷が私の治療ではなくヒデヨシさん自身が消したものがあるんです」
「自分で自分の傷を?」
そういえばリアラは治癒術師でありながら、ある名で呼ばれていた。
「不死鳥、でしたっけ」
「確かリアラさんには自分の傷を自然に癒す能力があったはずです。本来治癒術師は自分の傷は治す事ができないのですが、リアラさんは特殊でした」
「自分の傷を癒せる力、でも命は蘇らない。だからあくまで不死鳥という名はただの噂で留まったんですよね」
「そうです。それをヒデヨシさんが使っているということは……」
「リアラがヒデヨシに力を託したって事ですか」
「そういう事です」
ボロボロだったヒデヨシが、一度立ち上がってマルガーテにトドメを刺そうとしたと聞いたが、もしかしたらそれも関係していたのかもしれない。
「リアラちゃんが私に魔法を……」
「俺も驚いたけど、今ヒデヨシと会って分かった。少しだけどヒデヨシの身体から魔力が感じられる」
「じゃあ私はリアラちゃんの魔法を使って、傷ついた人を治せばいいの?」
「それだけじゃないんだよ。リアラの力は」
「え?」
もしヒデヨシにもう一つ託されているものがあるもしたら、それは確実に今後の戦いの大きな力になる。俺はそれを確信していた。
「癒した傷の分を、敵に与える力?」
「そう。俺も一度しか見た事ないんだけど、戦闘に向かないリアラにとって、たった一つの魔法。それが恐らくヒデヨシに託されたもう一つの力だと思う」
「そんなすごい力が私に……」
「一言で言うなら、今まで傷ついた人達の想いを魔法に込めた力って感じだな。だからその魔法はかなりの蓄積が必要だった。一度使われて以来リアラはまた治療をしているだろうから、今も結構溜まってきている可能性がある」
「じゃあこれがあれば」
「ああ。マルガーテへ敵討ちをする事ができる。たった一度だけだけどな」
今まで傷ついた人達の想いを、リアラはヒデヨシに託した。それがいつ、どのタイミングで行われたのか分からない。けれど、何かのきっかけで彼女を動かしたのかもしれない。命を張ってまでヒデヨシを助けたのと同じように。
「ヒッシー……私できるのかな」
「心配するな、俺達が付いている」
「なら、頑張ってみようかな。それがリアラちゃんが託した想いなら」
どうやらヒデヨシは、何かを決心したらしい。リアラの死を乗り越えられたのかまでは分からないけど、確実に彼女の顔付きが変わった。
「ごめんねヒッシー、さっきは色々言って」
「別に気にするなよ。それよりノブナガさん達のところ行くぞ」
「うん!」
すっかり元気を取り戻したヒデヨシ。これで何とか一件落着。あとは徳川以外の協力を得て、マルガーテを倒すのみ。
そのはずだった。
「え? 今なんて?」
「だから、サクラさんが……」
現実は常に非常である。いつ何が起きるか分からない。そして起きた事を人はすぐには受け入れられない。
そう、今俺の眼の前で起きているこの現実も……。
「ひ……す……い」
「ごめんヒッシー、今私誰にも会いたくないの……」
部屋の前で門前払いされてしまった。本当は何か言葉をかけてあげたかったのだが、到底話もできそうになかったので、この日は諦める事に。
「ヒデヨシさん、やはり駄目そうですか」
「しばらくは話す事もできないかもしれないですね。多分」
「どうしてこんな事に……」
「俺も分からないです。でも、あの時マルガーテがヒデヨシを襲わなければ、こうはならなかったかもしれませんけど」
「そうすればリアラさんだって……」
暗い雰囲気だけが漂う。ヒデヨシやノブナガさんもそうかもしれないが、リアラの死は誰よりも俺が一番ショックを受けていた。もしあの場に俺が間に合っていれば、あの惨劇を回避できたかもしれない。その考えばかりが俺の頭の中を回り続けている。
(そもそもリアラは、戦闘より補助の方だったから……)
ろくに戦えない。それを分かっていても彼女はヒデヨシの窮地を救い、その命を散らした。ヒデヨシにその力を託して。
(リアラが託した力って、一体何なんだ)
それも気になっているが、ヒデヨシがあれではどうにもならない。もしマルガーテに対抗できる大きな力を託しているなら、ヒデヨシに立ち直ってもらわなければならない。それを支える事ができるのは……。
「ノブナガさん、俺やっぱりヒデヨシと話してきます」
「え? でもヒデヨシさんは……」
「リアラの件は俺にも責任があるんです。だからヒデヨシの傷を癒すのは俺しかいないんです」
「あ、ヒスイ様!」
迷いはなかった。ここでヒデヨシを放置するなんて事はできないと思ったから、彼女の元へと向かった。俺も一度、いや二度大切な人を失っているから、その痛みは理解できる。だから……。
「ヒデヨシ!」
「ヒッシー……どうして? 私は誰にも会いたくないって……」
「そんなの関係ない。ただ俺は」
ヒデヨシにはこれを乗り越えて、前を向いてもらいたい。
「ヒデヨシに立ち直ってもらいたいんだ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
目覚めは最悪だった。何度も何度もあの夢ばかりを見て、何度も何度もリアラちゃんが死ぬのを繰り返して、吐きそうになってしまった。
(あれ、私……どうして……)
どうして生きているんだろう。
起きて一番最初に考えた事がそれだった。戦いからも逃げて、ノブナガ様やヒッシーからも逃げたくせに、命を張って助けてもらったなんて……。
(生き残る意味がない)
私よりもリアラちゃんの方が優秀だし、ヒッシーと同じくらい強い。その彼女が何でこんな私の為なんかに命を張って助けたのだろうか。
(本当にどうして……)
私なんかに生きる価値あるのかな。
「ごめんヒッシー、今私誰にも会いたくないの」
気がつけばヒッシーが部屋を訪ねてきていた。でもヒッシーの顔を見れない私は、それを拒絶する。
これでいい。
私はもうこれでいいんだ。
ヒッシーの事は今でも好きだけど、これでいい。もう私は……。
「本当にごめん、ヒッシー」
辛い、こんなにも人に会う事が辛く感じるなんて思わなかった。心の中では本当は助けてほしいと願っているのかもしれないけど、それでも私は今は、いやこれから人と会うのは避けたい。
それがたとえノブナガ様でも。
「うぅ……ひっく」
自然と涙が流れてくる。ずっと我慢してきた涙。今はただ泣きたい。誰にも構わず泣き続けて、そして……。
「ヒデヨシ!」
突然扉が開かれてヒッシーが入ってくる。さっき拒んだはずなのに、どうして……。
「そんなの関係ない、俺はただ……」
どうしてヒッシーはそんなに……。
「ヒデヨシに立ち直ってもらいたいんだ」
そんなに私に優しいの?
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「立ち直るなんて、そんなの私できないよヒッシー……」
先程まで泣いていたのか、目を腫らしながらヒデヨシがそう答える。
「できるよ、お前なら」
「そんな勝手な事言わないでよ。ヒッシーは何も分かっていないくせに」
「何も分かってないわけないだろ! 大切な仲間を失くしたのはお前だけじゃないんだよヒデヨシ」
何も分かってない、その言葉に俺は思わず反応してしまった。俺だって同じように悲しいし、ヒデヨシの気持ちは痛いほど分かる。だから、何も分かってないなんて言わないでもらいたかった。
「確かにヒッシーもリアラちゃんを亡くしてショックなのは分かる。だけれど、私だって同じだよ!」
「同じなら……同じなら、それを乗り越えるんだよヒデヨシ! お前はそんなに弱い人間なのか? 違うだろ」
「そんなのヒッシーの思い込みだよ! 私だって弱いところは沢山あるもん」
「そうだろうな。だけどその弱さを乗り越えて人間は強くなれる」
「強くなんてなれなくていい! 私はもう弱いままでいいの」
「だったら、お前に力を託してくれたリアラの想いはどうなるんだ!」
「え? それはどういう意味なの?」
どうやらヒデヨシは理解できていなかったらしい。リアラが最後にヒデヨシに託したある想いを。
「俺もあの時は気づかなかったけど、リアラはマルガーテに呪縛の魔法をかけると同時に、お前にある力を託していたんだよ」
「ある力?」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
実はあの事件の後の昨日、師匠からこんな話を聞いていた。
「え? ヒデヨシから魔力を感じるんですか?」
「はい。治療していて気づいたんですが、いくつかの傷が私の治療ではなくヒデヨシさん自身が消したものがあるんです」
「自分で自分の傷を?」
そういえばリアラは治癒術師でありながら、ある名で呼ばれていた。
「不死鳥、でしたっけ」
「確かリアラさんには自分の傷を自然に癒す能力があったはずです。本来治癒術師は自分の傷は治す事ができないのですが、リアラさんは特殊でした」
「自分の傷を癒せる力、でも命は蘇らない。だからあくまで不死鳥という名はただの噂で留まったんですよね」
「そうです。それをヒデヨシさんが使っているということは……」
「リアラがヒデヨシに力を託したって事ですか」
「そういう事です」
ボロボロだったヒデヨシが、一度立ち上がってマルガーテにトドメを刺そうとしたと聞いたが、もしかしたらそれも関係していたのかもしれない。
「リアラちゃんが私に魔法を……」
「俺も驚いたけど、今ヒデヨシと会って分かった。少しだけどヒデヨシの身体から魔力が感じられる」
「じゃあ私はリアラちゃんの魔法を使って、傷ついた人を治せばいいの?」
「それだけじゃないんだよ。リアラの力は」
「え?」
もしヒデヨシにもう一つ託されているものがあるもしたら、それは確実に今後の戦いの大きな力になる。俺はそれを確信していた。
「癒した傷の分を、敵に与える力?」
「そう。俺も一度しか見た事ないんだけど、戦闘に向かないリアラにとって、たった一つの魔法。それが恐らくヒデヨシに託されたもう一つの力だと思う」
「そんなすごい力が私に……」
「一言で言うなら、今まで傷ついた人達の想いを魔法に込めた力って感じだな。だからその魔法はかなりの蓄積が必要だった。一度使われて以来リアラはまた治療をしているだろうから、今も結構溜まってきている可能性がある」
「じゃあこれがあれば」
「ああ。マルガーテへ敵討ちをする事ができる。たった一度だけだけどな」
今まで傷ついた人達の想いを、リアラはヒデヨシに託した。それがいつ、どのタイミングで行われたのか分からない。けれど、何かのきっかけで彼女を動かしたのかもしれない。命を張ってまでヒデヨシを助けたのと同じように。
「ヒッシー……私できるのかな」
「心配するな、俺達が付いている」
「なら、頑張ってみようかな。それがリアラちゃんが託した想いなら」
どうやらヒデヨシは、何かを決心したらしい。リアラの死を乗り越えられたのかまでは分からないけど、確実に彼女の顔付きが変わった。
「ごめんねヒッシー、さっきは色々言って」
「別に気にするなよ。それよりノブナガさん達のところ行くぞ」
「うん!」
すっかり元気を取り戻したヒデヨシ。これで何とか一件落着。あとは徳川以外の協力を得て、マルガーテを倒すのみ。
そのはずだった。
「え? 今なんて?」
「だから、サクラさんが……」
現実は常に非常である。いつ何が起きるか分からない。そして起きた事を人はすぐには受け入れられない。
そう、今俺の眼の前で起きているこの現実も……。
「ひ……す……い」
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