世界最強都市"ヨミ"の魔王

もちあ

第3話 雪斗と超高圧圧縮砲の製作

 お父さんの研究室には、一度だけきたことがあった。
 中学二年生の時、俺は、夏休みの宿題で、伸びる腕スプリングアームを作っていた。その時の最終段階の時に、ここを使った。正直最初に来た時は、興奮した。完璧に整った設備、見たことのない材料、そこは、雪斗が求めていた、絶対空間だった。

「あの隕石に対抗できる機会を作る……」
「できるの…お父さん?」
「出来なくても……出来なくても、このまま死ねるかよ。結局、隕石は来る。お前も色々考えただろうがやはり、衝突を逃れるためには、軌道を変えるのが一番いい」
「………」
「それで、今から作ろうと思ってるのは、」

    「超高圧圧縮砲ゼロヴァニッシュだ」

「……それがあれば、衝突は防げるのか?」
「勿論だ」
「じゃあ…俺も手伝うよ」
「そういうと思ってたよ。それじゃ早速作るぞ。この超高圧圧縮砲ゼロヴァニッシュは、太陽の光や、今ここにある空気、などの俺たちが生きるために必要なエネルギーを圧縮させ、秒速約10000㎞で空にぶっ放すっていう奴だ」
「でも、そんなに速く撃ったら、超高圧圧縮砲ゼロヴァニッシュの方が、壊れちゃうんじゃないか?」
「ああ、だからお前には残りの1週間の間、超高圧圧縮砲ゼロヴァニッシュの製作に専念してくれ、【ツキミ】もいるから、計算の方は、大丈夫だろう」
「おうっ!!…ってあれっ?そういえば、今日は何だか静かだと思ったら、【ツキミ】を家に置いて来たのか?そもそも、【ツキミ】腕時計型会話専用AIを外したことなんてほとんどなかったんだけどな……」
「ん?そういえばそうだな。お前がいつもつけているはずの【ツキミ】腕時計型会話専用AIを今日はつけてなかったんだな」

 そんな会話をしつつ、俺たちは、超高圧圧縮砲ゼロヴァニッシュの製作に取り掛かった。


 その日の夜…
「お父さんは、あのまま研究所に残ったけど…それにしても、【ツキミ】は、どこにいったんだ?こんなこと、これまで一回もなかったのに……それにしても、お父さんならもうちょっといい方法が思い浮かんでいるんだと思ったんだけどな…」

 別にお父さんの計画を否定しているわけではない、ただ、なんだかおかしく感じた。

「考えても仕方がない……か」

 そう考え、俺は、超高圧圧縮砲ゼロヴァニッシュの製作に取り掛かった。

 そうして、5日が過ぎた……

 俺は、お父さんに出来上がった超高圧圧縮砲を見せにいった。この5日間、様々なニュースで隕石のことが語られていた。だいたいお父さんの言っていたことを、言っているだけなので、別にテレビを見る必要はない。しかしそれでも、ふと窓を開けてみれば、親子が抱き合っている姿が見えたり、絶望の顔で空を見ている大人たち、そしてどうせ死ぬなら、と、この頃町では、殺人事件や、窃盗事件が相次いでた。

「チッ…」

 俺は研究所に行く途中、つい舌打ちしてしまった。
 相変わらず、腕にあるはずの【ツキミ】はない。
 こんな時、【ツキミ】なら、違う案が浮かんだんだろうか?
 そんなこんなで研究所についた…

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