異世界で魔法兵になったら、素質がありすぎた。

きのえだ

ワルモノをするのも、今だけで。Ⅰ

「なぁ? 俺、何にもやってないって! いい加減信じて出してくれよー」
 外にいる兵士は、カザトの方を見向きもしない。
 カザトは、鉄格子がはめられた薄暗い一室にいた。つまり牢屋だ。用途も日本と同じ。罪人を閉じ込めておくためのもの。

 罪人、アマミヤ・カザトを……

 ことは、カザトがあの部屋に入れられた時まで遡る。

「おいおい、なんで俺にそんなのがむけられてるわけ? 理由を聞きたいんだけど」
 中に入ったカザトには、複数の兵士から槍やら、杖やら、いろいろなものがむけられていた。

「被告人、アマミヤ・カザト。早く席へ」
 カザトたちより、少し高い位置に座っている老人が、沈黙を破る。そして、その老人の右には、若い女性が、左には、30代後半ぐらいに見える女性が座っていた。

「被告人って、俺の事? 俺、何もしてないよ?」
「被告人、早く」
 そう言って、老人が一人の兵士に目配せする。
 すると、その合図を受けた兵士が、カザトに近寄り、背中に鋭利を突きつけてつぶやく。
「早く歩け」
「ちょっ! シャレになってねーよ……」
 カザトは、言われるがままに椅子に座る。

「うむ、では、始めようか」
「はい。では、これより、罪人アマミヤ・カザトの臨時裁判を開始します」
 老人の合図で、右の方の女性が、開始の号令をかける。
「なっ! 俺が罪人? どいうことだよ! なんもやってねーぞ」
「被告人、静粛に。えー、罪状を読みあげようかの。不正入国、及び魔族の疑いあり、か。では、これについて、魔法兵団、第二部隊班長のカルガス殿、証言を」
「はっ。かしこまりました」
 さっきまで、姿を見せなかったカルガスが、人ごみの中から前へと出てくる。

「では、経緯から説明させていただきます。まず、カザトのいた場所ですが、王都門に近い場所でした。そこで、一人の女性と一緒に、ここでは見られないはずのモンスター、デスグレアルラに襲われておりました。そこに我々が駆けつけ、そのモンスターを駆除しました。そこでは、魔族のような素振りはありませんでしたが、王都へ案内してくれと要求してきました。我々は、その要求を受け、王都門へと案内しました」

 カルガスが、老人に向けて淡々と言葉をつずっていく。カルガスが言っていることは、全て正しいのだが、カザトに対して、敵対視していたような口ぶりだ。先程とは、明らかに様子が変わっていた。
「そこで、おかしい点が二つ……と?」
「はい。一つが、普通のマナを全く感じない事と。そして、微かながら、魔の魔力を感じました。二つ目は、平原にいるはずなのに、王都門への道を知らない事。王都からしか行けない平原にいるのに、王都のことを知らないこともおかしいのです。以上の証拠から、我々、魔法兵団は、カザトが魔族の関係者と目測を立てました」

 それを聞いたカザトが、前にある台を拳で叩きつける。
「おい! さっきからなんなんだよ! 人を魔族だの何だのって、俺は人間だ!」
 さすがにカザトも黙って聞いていられなかった。怒りを爆発させて反論する。そして、もっと文句を言ってやろうと、椅子から立ち上がったとき
「静粛にと言ったがずじゃが?」
 老人がカザトを睨んで、冷たい声で言い放つ。カザトの背中に悪寒が走る。
 そこで、カザトは気づいた。体が全く動かないことに。かろうじて、目の玉だけは動く。しかし、それ以外は微動だにしない。

「────っ!」
 声もでなくなる。何も言えない、動けない。
「そうじゃな。それだけでも十分だが、これで、裏ずけられるだろう。主、これに見覚えはあるか? ん?」
 そう言って、老人が手元から出していたのは、カザトの通学カバンだった。しかし、何故かとても汚れていた。カザトは、質問に答えることができず、目だけを泳がす。
「おぉ、そうじゃ、そうじゃ。どれ、口だけ開放してやろうかの」
 そう言って、老人が指を鳴らす。すると、カザトの口だけが自由になった。これも、この世界の魔法というものの力だろう。

「かはっ! ────それは、俺のものだ。なんであんたが持っているかは知らねーけど、それは俺のもんだ」
「なんと!」
 カザトの回答に、部屋全体がザワザワしだす。
「やはりか……」「どうして、王都に?」「今すぐ処刑した方が良いのでは?」様々な言葉が飛び交う中、
「静粛に! これで、決まりじゃ。罪人アマミヤ・カザトを牢へ連れてゆけ。これで、裁判は終わりじゃ!」
 早くこの場を立ち去りたいという、ワガママが丸見えな態度で老人が叫ぶ。

「では、これでアマミヤ・カザトの裁判を終了します。一同、解散」
「俺……何も証言できねぇーじゃん」
 カザトは、異世界の理不尽さに心を折れられる寸前まで差し掛かった。


 ここから、この裁判の日から、俺の異世界での物語が始まった────

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