私【悪役令嬢】の婚約者【王子】を目の敵にしているのは私の親友【ヒロイン】です!?

御茅架

【突然の__】

____を見た。

今世ではない世界で、当たり前のように過ごすを見た。小さな田舎町で、地元の高校に通っていて、部活を頑張っていて、過去に軽いいじめにあっていて、それでもを楽しく過ごしている。そんな小さな幸せの中に、はいる。
けれども、その幸せは突然、終わりを告げる。
ある日の帰り道、いつもは乗り物自転車のはずがその日に限って歩きだった。たったそれだけの違いが、私の幸せに終わりを告げた。歩いていた私に、乗り物が突っ込んできた。信号無視の上にスピード違反で警察に追われてて、ハンドルを切り間違えて突っ込んできた。その事故で、私はあっさり死んだ。



「はぁっ、あぁ、あっ」


弾かれたように、起きた。イヤな夢を見た。前世の死んだときの夢。
ネグリジェは汗でぐっしょりと濡れていて、体も汗ばんでいる。呼吸がなかなか戻らない。
いつもと同じ時間にアンナが部屋に入ってくる。

「失礼します、お嬢様。お目覚めの時間です」
「ぁ、アンナ。おはよう」
「おはようございます、お嬢様。って、どうしたんですか!?」
「え?…あ、あぁ。悪い夢を見ただけよ。なんでもないわ。でも、汗をかいたから湯浴みをしたいのだけれど」
「畏まりました。ですが、本当に大丈夫ですか?顔色が悪く見えますが……。」

そう言うアンナにもう一度、「大丈夫よ」と短く答え、モーニングティを用意してもらう。落ち着けるようにとミルクティーにしてくれるアンナは、ホントに優秀な私の侍女だ。
ティーカップを受け取り、お礼を言う。そして、湯浴みの準備をしに、アンナは部屋を出る。

「では、湯浴みの準備をして参ります。何かあったら使用人をお呼びください」
「わかったわ」

部屋から出るアンナを見送り、ベッドの上でティーカップに口をつける。ふわっと香るアールグレイが、私を落ち着かせる。
ゆっくり息を整えながら、について考えた。
上手く喋れない頃によく見ただった。もうずっと見てなかったのに、なんで今更見たのだろう。ちょっと疑問はあるけれど、考えたってしょうがないし、やっと屋敷でゆっくり過ごせる日が来たのだから。

あの、王子もといリリス様との顔合わせから1ヶ月以上(多分あと少しで2ヶ月)がたった今日。やっと、やっっと、屋敷で読書や執筆ができる日が来たのだ。
顔合わせの翌日、なんの前触れもなくリリィが屋敷を訪問。質問攻めという拷問を受けた。もはや質問というより、一方的にしゃべっていただけだけど、リリィが。

「ちょっと!なんで王子と婚約してんの!?なんで!?ホント意味わかんない!する訳ないってティア言ってたじゃん!そんなんなるなら、私の従兄弟と婚約させとけばよかった!!」

私のせいじゃないもん。王家のせいだもん。リリス様のせいだもん、たぶん。というか私、リリィの従兄弟って知らないんだけど。なのに婚約させようとしてたの?

「だって、私の従兄弟と婚約しておけば、ティアがどこの馬の骨とも知らないとこに嫁がないし、私と遠い親戚になる離ればなれにならないでしょ?」

嬉しいけど、私の人権よりリリィの欲だよね、それ。「なっちゃったものはしょうがない。婚約破棄されないようにがんばる」と言ってなんとか説得して、リリィは帰っていった。

それからずぅっと、妃教育と元々家庭教師から習っていた習い事(週5日でやっていたので週4日に凝縮)をしていて、毎日クタクタ。どちらも休みになった日は、お茶会だったり、リリィやリリス様が(大体その日いきなり)来ることがあり、趣味の時間がない!ちなみに、リリィとリリス様が鉢合わせたことはない。なんでだろう?

そしてやっと、ゆっくり過ごせる日が来た。もしかしたら、誰か訪ねてくるかもだけど。主に、リリィとかリリス様とか。
なんて考えてたら、扉のノックが聞こえる。

「お嬢様、湯浴みの準備が整いました」

アンナが部屋に入り、告げる。アンナに連れられ、湯浴みをしに行く。終わると私にドレスやなんかを着付けていく。それも終わると、朝食を食べに食堂へ。

「もうすでに旦那様はお出かけになっております。奥様はまだ食堂にいらっしゃると思われます」
「わかったわ。ありがとう」

扉を開けて、食堂の中に入る。お母様が優雅に食後の紅茶を飲んでいた。その隣に、1人の男の子が立っていた。
誰?お母様が普段と変わらない様子だから、余計にびっくりしたんだけど!あ、目が合った。

「おはようございます、お母様。あの、そちらの方は?」
「おはよう、ティアちゃん。この子は、アラン。我が家の養子になったの」
「そうなのですか。でも、なぜいきなり養子をとったのですか?」
「だってティアちゃん、お嫁に行っちゃうんだもの。侯爵家の跡取りがいなくなっちゃったから、分家からアランくんを養子として迎えたの」

そう言って、隣に立つ男の子を紹介したお母様。軽く会釈をして、名乗ってくれた。

「はじめまして、アランと言います。よろしくお願いします」
「アランくんは9歳だから、ティアちゃんの弟よ」
「ティアーナと申します。これからよろしくお願い致します」

私と同じサファイアの瞳が私を見つめる。軽く微笑むと、お母様の後ろに隠れてしまった。
え、私なんかしちゃった?笑ったつもりが、笑えてなかった?それより、朝ごはんたべてもいいかな!?お腹すいてるんだもん。
私の心の声が聞こえたのか、お母様に「ふふっ」と笑われ、食卓に着くように促される。アランも同様に席に着く。すぐに、テーブルに食事が出され、食べはじめる。本来なら、お母様やお父様が食べ始めてから自分たちが食べ始めるのだが、もうすでにお母様は食べ終わっている。お父様に関しては出かけてしまっていた。

「それでね。あの人ったら、養子にするならティアちゃんと同じの色の子がいいってずっと言っててね」

食事中、お母様はずっとアランについて話し続けていた。同じ話をエンドレスで。私が食べ終わるまでずっと。最後には、

「ティアちゃん今日は、何もないでしょう?アランくんのこと、お願いね」

と言って、食堂を出ていった。
ちょっと待って、お母様!いきなり2人にしないでくださいな!それに今日は、執筆したいと思っていたの!お願いですから行かないでくださいませ、お母様!
という心の声も届かず、食堂に残された私とアラン。私は、まだ朝食を食べているアランを見る。
一言で言うなら、美少年。整った顔に大きな目、色は私と同じなのにツリ目ではなくちょっとタレ目。髪は金髪のサラサラ。つまり、中性的な顔立ちをしている。
ずるい。私なんてリリィに言われるまで知らなかったとはいえ、生まれたときから悪役って決まっててそれっぽい顔立ちしてるのだから。なんでこんなにツリ目の可愛くない顔してるんだろうって思ってたけど、悪役って言われたら納得しちゃったけど。

じっと見すぎたのか、アランが私の視線に気づいた。目が合い、ニコッと軽く微笑んでみる。と同時に、顔をぷいっとそらされる。
またか、そんなに嫌か、私の顔は。
しかし、そんなことは言っていられない。アランもようやく朝食を食べ終えたようなので、お母様に言われたとおり、彼の面倒をみようか。

「アラン。食べ終えたようですので、屋敷を案内しましょうか。嫌なら構わないけれど」
「あ、えっと、あの、その、」

しどろもどろになりながら、視線を泳がせるアラン。私は、静かに答えを待つ。

「いや、では、ないです…」

嫌ではないと、ハッキリ言ってくれた。よかった、嫌われてるわけではなかいのか。最後消えかかってたけど。

「そう、よかったわ。では、行きましょうか!」

アランの手を取り、食堂を出る。びっくりしたのか、一瞬硬直してしまったようだけど、すぐに元に戻った。
手を振り払われなくてよかった。振り払われてたら、泣きかけたかもしれない。そう考えてしまうほどに、私は、彼を、アランを自分の弟だと、すでに思っていた。







ティアちゃん、休日(?)ないですね。。自分だったら、発狂しそう。。

前回からだいぶ時間が過ぎました。本編も、更新も。
次回はこの続きです。

いつも読んでくださり、ありがとうございます!!

コメント

  • ミナ

    楽しく読んでるので、これからも更新頑張ってください!

    0
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