プロローグ

真っ暗な部屋で輝きを放つ四角い箱の前で彼は言った。
「つまらん。全くもってつまらん。」
何が彼の機嫌を損ねて居るのかは箱の中身を見れば一目瞭然であった。
無数の星と共に百戦錬磨の如く築き上げた戦歴が並んでいた。
考えてみて欲しい。
スポーツ、ゲーム、勉学に於いて対等な相手が居ない行為を暇潰し以外の何になるのかと。
彼はFPSと呼ばれる三次元シューティングゲームのプロであった。
目を瞑った状態であるにも関わらず聴覚と言う人の持つ武器を駆使し白星を挙げた彼を考えてみて欲しい。
もう一度言おう。
暇つぶし以外の何になるのかと。
「ん？何だこれ？」
刹那今までプレイして居たゲームを閉じるとメールが届いている事に彼は気付いた。

拝啓熊野楓様

防衛省まで任意同行を求める。

「...?なんで名前を知ってる...?防衛省に任意同行はないだろ...」
そう彼はゲームに於いてヒノマルと言う日本を連想できる名前をハンドルネームにしている。
彼は....否、熊野楓は名前など明かして居ないにも関わらず本名と呼ばれる物がメールには書かれている。
丁度いい暇つぶしになると思い彼は返信をする

俺になにか用ですか？
政府とは関わりのないネット民なんですけどねぇww

稚拙とも煽りとも取れるそのメールは送信され返信を待つことにした。
ピコン...。と言う音ともに返信が来た。
『そちらまで迎えに行く』
短い文章であった。
「家の場所も知らないで来れるのかよ...イタズラか？」
1人呟きまた彼はゲームを始める。
これが全ての悪夢の始まりとも知らず....。