魔術学園に響かせよ

Raise

9話 学園入学④

試験がその次の日のイドラはと言うと、あきらかに昨日とは目の色が違った。

その様子にイルトは思わず声を掛けずにはいられなかった。

「イドラ、別に五つも上の人に負けたからってそんなに悔しがるなよ。仕方の無い事だ。経験と培ってきたものが違うんだ。」
「それは分かっていますが...」
「分かって居るなら良いが、あまり変な事を考えるなよ」
「はい...」

と言う会話をしながらもイドラの目は据わっていたのでイルトはとにかく変な事を言い出さないか心配になっていた。

その話があった後、イドラは王立の図書館に来ていた。

とにかく今は知識を貪りたい欲求に駆られて仕方がなかった。

受付の人に場所を聞いてひたすらに魔術の書や剣術の書を読み漁った。
どうやらイドラの記憶力は人より少し良いらしく、意味を理解するのに苦労しながらも少しずつ理解し、記憶していった。

そんな日々を一週間ほど続けた後、合格発表の日が訪れた。



イルトは試験の人は打って変わって全くソワソワしていないイドラに対し、少し首を傾げながらも、この一週間に何かがあったのだと考え、あまり深くは詮索しないことにした。
そのくらい今のイドラは落ち着いていた。

ちなみに、合格発表はボードに各クラスの合格者の番号が書かれてあり、そこに番号の記されていたものだけが入学を許されると言うものだ。
クラス分けは上からS•A•B•Cだ。
例えCクラスと言えど、この学院に入学できる時点で同世代の全人口の上位1%に入ると言われている。
Sクラスとなれば学年に5人居るか居ないかである。

合格発表の掲示板の前で静謐の何たるかを示すかのように佇むイドラの目はただただ、目の前のボードに向いていた。

そして、運命の時が訪れた。

ボードに掛けられていた幕が下され結果発表となった。

自らの番号を落ち着いて探すイドラ。

ついに、Bクラスに彼は自らの受験番号を見つけた。

自らの番号を見つけた彼は一瞬、顔をパァっと明るくさせたが、それも一瞬。
次の瞬間には先ほど同様の落ち着き払った顔へと戻り、そのままイルトの元へと向かってきた。
イルトは分かりきっていたが一応、本人の口から結果を聞くこととした。

「イドラ、どうだった?」
「はい、無事にBクラスに合格しました」
「良かったじゃないか。その割に随分と静かだな。」

そんな父の言葉にイドラはイルトの目を見据えて答えた。

「先日の試験で自分の至らなさを身をもって痛感しました。合格などで浮かれている暇は無いと考えました。」

本当にこの一週間で何を感じたのだろうか。
イドラの顔つきはまるで別人になっており、イルトはこの顔を見られただけでもこの試験を受けさせた意味があったのだと強く感じた。
それと同時にこのモチベーションがあれば息子がどこまで伸びていくのか楽しみで仕方がなくなっていた。

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