魔術学園に響かせよ

Raise

7話 学園入学②

学園を受験することを決め、はや1ヶ月弱。
ついに出発の日となった。
イドラは成人の儀の時とは違う意味でソワソワながら日課の素振りをしていた。

しかし、この半年ほどイドラは二刀流で素振りをしていた。
理由としては剣と剣を合わせた時に発する音を使うのが効率が良いと考えたからである。

そして素振りをしているとイルトが出てきた。

「イドラ、馬車が到着したからそろそろ出るぞ」
「は、はい!」
「どうした?」
「いや、その、父上。やはりこういう時はソワソワするものですね。」
「お前ももう少し落ち着きを持てたらなぁ。」
「そんなことを言っても多少は緊張するのですよ。」
「そうか。まぁ、焦らずにしっかり臨めば大丈夫だろう。受験は実技のみだからな。お前ならどうにかなるだろう。」
「そうですね...はい!」
「おし、じゃあ行くか。」
「はい!」

こうしてイドラは人生二度目の王都フリンへ向かった。



王都に着いたのは受験の当日の2日前であった。
王都に着くとイルトはイドラを伴って武器屋へ行った。
武器屋へ入ると、いかにも屈強そうな大男が出てきて

「おぉ!よく来たな、イルト!」
「よぉ!ドナーテ!」
「父上、この方は?」
「こいつは俺のこの剣を作ってくれたドナーテだ。この剣の前に使っていた剣もドナーテに作ってもらっていた。」
「へぇ〜そうなんですね!」
「で、イルト。このボウズが?」
「あぁ、俺の息子のイドラだ。」
「初めまして。」
「おうおう、よろしくな。」

軽く挨拶を済ませた後、イルトは少しだけニヤリとしながら

「で、ドナーテ。頼んでたものは出来てるのか?」
「おう!勿論だ。今持ってくら。ちょいと待ってな。」

と言い残してドナーテは奥へ入っていった

「父上、新しい剣を作ったのですか?その剣もまだまだ現役で使えるのに。」

すると、イルトは少し笑みを強めた。
それと同時にドナーテが奥から布に包まれた剣を持って出てきた。
それを机の上に置いて布を解いた。

「コイツだな。」

そこには二振りの黒い剣があった。

「父上...もしかしてこれは...!?」
「おう、お前の剣だ。」
「‼︎」

ドナーテはニヤリとしながら

「抜いてみな。」

と言った。
その言葉に従い、イドラはゆっくりと鞘から剣を抜いた。
真っ黒の鞘から姿を現したのは真っ黒を超えて漆黒と呼ぶべきような黒さを持ち、通常剣より若干短い剣だ。
何より、凄まじく軽い。
木剣くらいの重さしかないのではないだろうか。
一度振ってみると、ポーン、というような小気味良い音がした。

「父上、この音はまさか...?」
黒鋼クロガネだ。」
「でも、黒鋼って稀に楽器などに使われる程度で武器には使われないと聞いていますが...?」

するとドナーテが口を開いた。

「確かに黒鋼は加工も難しいしほとんど使われない。だが、強度がメチャクチャ高い上に軽いという意味では、本来武器に最も最適な材質のハズだったんだ。」
「ではなぜ、ほとんど使われていないのですか?」

ドナーテは笑みを深くし、こう答えた。

「そう!そこだ。ボウズも知っていただろうが黒鋼は振動を与えるたびに特有の音を発する。そのせいで剣撃のタイミングなどが見切られちまうんだ。」
「音...なら!」
「そうだ。イルトから音を操れる能力だと聞いた瞬間コイツが使えると考えた訳だ...しっかし、黒鋼で武器を作る日が来ようとはな!人生何があるかわからんものよ!」

そう言うとドナーテは豪快に笑った。

ひとしきり笑うとドナーテは次に

「さて、ボウズ。折角だからお前の能力でどんな感じになるか見せてくれや。」
「はい!」

そう言ってイドラが「ラウドネス」で音を消しながら剣を振ってみると、当然だが何も音がしない。

「ほう!こいつぁスゲェ!正直、音が鳴らねぇなら黒鋼は武器としては最強だからな。コイツが扱えるとはボウズ、その能力は思っている以上に強力かも知れんぞ?」
「イドラの能力はすでに結構なんだがな...」
「ハハハ!イルト、テメェが息子に抜かされるのもそう遠くないかも知れねぇな!」
「父親としては嬉しい限りだが、戦士としては複雑なものではあるな。」

こうしてこの後も少し話をした後店を出た。
それから宿に入り、宿の庭でイドラは目を輝かせながら、日が暮れるまで素振りをしていた。

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