序列16位の魔法教師
不真面目な新人教師
(おいおい……どうなってんだよ)
カイトはイラついていた。それもそうだろう。今日から念願の魔法の授業が始まるというのに肝心の教師がまだ来ていない。もうすでに授業開始のチャイムから30分が経とうとしているのに
「先生なんで来ないんだろうねー、寝坊かなぁ?」
「エルザ、流石にそれはないと思うぞ。やっぱり魔法序列16位だから忙しいんじゃないか?」
隣の席の少女、エルザに話しかけられたのでテキトーにそう答えておく。実際、みんなが不満を口には出さないのはその教師が魔法序列16位だからだ。高ランカーは忙しいのが世の常だ。だから仕方がないと自分に言い聞かせながらも、やはりみんな待ちきれないのか…そこらかしこで噂話が飛び交う
噂好きのクラスの女子が調べたのか、まぁ知らないがどうやら16位の魔法師は【円環の理】と呼ばれているらしい。かの有名な5位の魔法師【無尽蔵】と呼ばれているヴォルガ・クラリスの弟子らしいが、そんな人物ならもう少し有名でもいいと思うけどな。実際ヴォルガ・クラリスは国内だけでなく少しでも魔法に興味のある人間は誰もが知ってるほど有名だ。そんな人の弟子なのに、データベースにも二つ名しか載ってないとか……
その時、ついに教室の前のドアが開く
騒がしかった教室が静かになり、そのドラから出てくる人物を見ようと視線が集中する……が、ドアから出て来たのは……
「ケイ先生?」
クラスの担任教師であるケイだった
「せんせー!16位の人はー?」
女子生徒の1人がみんなの疑問をケイ先生に投げかけた
「あ……あはは、先程到着されましたよ。少し理事長とお話ししてますから、あと少しだけ待っていてください」
(なんの苦笑いだそれは……)
30分以上の遅刻、理事長とお話し、ケイ先生の苦笑い、カイトの心中はもうすでに嫌な予感で埋め尽くされていた
(元軍人で序列16位が教師になる……もしかして老衰して引退した爺さんが後進育成とか?…耄碌してるとか無いよな)
「ボケたじじいなんてオチじゃねぇだろうな」
奇遇にもカイトと同じ事を考えていたクラスメイトがいたようだ
その時、教室のドアが勢いよく乱暴に開かれる。そこには女性にしては長身のスーツの女が立っていた。顔は美人だが、やる気が微塵も感じられない死んだ目やボサボサの白髪が顔の美しさを台無しにした容姿だ
「誰がじじいだ!ゴラァ!」
女性の怒号が学校中に響き渡った
◇◇◇
「じゃあ先生、自己紹介をお願いします……」
誰かの発言により登場した時から不機嫌な魔法実技の教師だったが、ケイ先生がなんとか宥め自己紹介へと移る
「あー、今日から1年生の………なんでしたっけ?」
「魔法実技ですよ!」
「あーはいはい魔法実技ね……魔法実技を担当することになりましたスカル・デスギアです……よろしく」
(こんな真面目さのかけらも無いような女が教師?本当に魔法序列16位の元軍人なのか?何かの間違いじゃ……)
クラスの誰もが微妙な雰囲気を醸し出している。中には明らかに不満を顔に出してる者もいる
「おい、お前ら…なんだその反応は?不服か?」
「不服っていうか……先生って本当に魔法序列16位なの?」
エルザがスカルに問う。最初からこのようでは当然の疑問だろう
「あぁ、一応な……私としては教師なんて絶対にやりたく無いんだけど、やむを得ない事情が絡んでるから仕方なくこんな事やってんだよ……特に教える事思いつかないし、今日は自習してて」
その発言にクラスの全員が驚愕した。国立魔法学院はエリート校だ。国に一つしかない故に競争率が高く、さらに設備や人員も最高峰である事で有名な学校だ。その誇り高き学院の教師としてはあまりに相応しくないその態度……
「おい!ふざけてんじゃねぇよ!お前みたいな奴が16位?嘘ついてんじゃねぇよ」
怒るのも無理はない。待ちに待った魔法の最初の授業で自習などと言われたのだ。普通の反応だろう
「お前……名前は?」
スカルはなんでもないような態度のままで怒る男子生徒の名前を聞く
「レッド・ノーデクスだ!」
「………ノーデクスねぇ…クリム少将の息子さん?ライセンスはもう貰ったか?順位は?」
スカルはノーデクスと聞いて、軍人の知り合いであるクリム少将を思い出していた。
そして生徒たちは今朝すでにライセンスを貰った。ここにいる者はほとんどがまだ魔法を使った事がないのでNo.unknownと表示されているが
「14560位……」
「あの人頑張ったな……学生の時点でもう5桁か…よし、実技の授業なんだよな?訓練場行くぞ。ハンデは付けてやるから試合だ」
スカルはクリム少将が案外子供の教育に熱心だと知り、どうでもいいと思っていたと同時に学生の時点でもうすでに5桁の半分を超えていることに驚いていた。まぁそれもどうでもいいかと思いながら訓練場へと向かった行く
(マジか………無口な奴だと思ってたけど、もう魔法序列がある奴だったなんて……しかも5桁…いや、それより重要なのは試合か…なんにしろ16位の戦いが見れるんだ。そもそもあいつが16位かどうか怪しいけど、それも試合で分かるだろ)
カイトは半信半疑の状態でスカルたちを追いかけ、訓練場へ向かった
◇◇◇
「レッド、今使える魔法で1番、位が高いのは?」
「上位魔法だ」
(何が16位だ。親父は1246位だが、こんな女なんかよりも覇気がある。そもそも16位という上位にいながらデータベースに二つ名しか載ってないなんて、情報操作としか思えない。俺が化けの皮を剥がしてやる)
「あー、じゃあ私は初級魔法の【防御】しか使わない。お前は私に一撃でも入れられたら勝ちでいいよ」
「……舐めてんじゃねぇぞ!」
その発言にさらに怒りを覚えたレッドは本気で魔法を発動する。魔法は便利な物だが、使い方を間違えれば人を簡単に殺せる。今のレッドなら人を殺しかねないだろう
「【身体強化】」
生徒たちのほとんどはレッドの動きを完璧に捉えることは出来ないだろう。【身体強化】は中位魔法だ。その名の通り、使用者の身体能力を強化する。人間の出せる速度ではあるだろうが、相当鍛えられたような速度だ。戦い自体に慣れてない生徒ではまともに見ることも難しい
「【衝撃波】」
達人のような動き、速度に発動地点から前方に強力な衝撃を放つ上位魔法が合わさりスカルはなんの抵抗も出来ずに正面からくらってしまう。周囲に砂塵が舞い上がる
「ハッ!やっぱ16位とか嘘じゃねぇか」
レッドは勝利を確信した。【衝撃波】はコンクリートくらいの硬さなら容易に破壊する威力がある。それがモロに入ったのだ。ただでは済まないだろう
「どうした?続けていいぞ?」
だが、土煙が晴れた時……そこには無傷のスカルが飄々として立っていた。まるで何もなかったかのように
カイトはイラついていた。それもそうだろう。今日から念願の魔法の授業が始まるというのに肝心の教師がまだ来ていない。もうすでに授業開始のチャイムから30分が経とうとしているのに
「先生なんで来ないんだろうねー、寝坊かなぁ?」
「エルザ、流石にそれはないと思うぞ。やっぱり魔法序列16位だから忙しいんじゃないか?」
隣の席の少女、エルザに話しかけられたのでテキトーにそう答えておく。実際、みんなが不満を口には出さないのはその教師が魔法序列16位だからだ。高ランカーは忙しいのが世の常だ。だから仕方がないと自分に言い聞かせながらも、やはりみんな待ちきれないのか…そこらかしこで噂話が飛び交う
噂好きのクラスの女子が調べたのか、まぁ知らないがどうやら16位の魔法師は【円環の理】と呼ばれているらしい。かの有名な5位の魔法師【無尽蔵】と呼ばれているヴォルガ・クラリスの弟子らしいが、そんな人物ならもう少し有名でもいいと思うけどな。実際ヴォルガ・クラリスは国内だけでなく少しでも魔法に興味のある人間は誰もが知ってるほど有名だ。そんな人の弟子なのに、データベースにも二つ名しか載ってないとか……
その時、ついに教室の前のドアが開く
騒がしかった教室が静かになり、そのドラから出てくる人物を見ようと視線が集中する……が、ドアから出て来たのは……
「ケイ先生?」
クラスの担任教師であるケイだった
「せんせー!16位の人はー?」
女子生徒の1人がみんなの疑問をケイ先生に投げかけた
「あ……あはは、先程到着されましたよ。少し理事長とお話ししてますから、あと少しだけ待っていてください」
(なんの苦笑いだそれは……)
30分以上の遅刻、理事長とお話し、ケイ先生の苦笑い、カイトの心中はもうすでに嫌な予感で埋め尽くされていた
(元軍人で序列16位が教師になる……もしかして老衰して引退した爺さんが後進育成とか?…耄碌してるとか無いよな)
「ボケたじじいなんてオチじゃねぇだろうな」
奇遇にもカイトと同じ事を考えていたクラスメイトがいたようだ
その時、教室のドアが勢いよく乱暴に開かれる。そこには女性にしては長身のスーツの女が立っていた。顔は美人だが、やる気が微塵も感じられない死んだ目やボサボサの白髪が顔の美しさを台無しにした容姿だ
「誰がじじいだ!ゴラァ!」
女性の怒号が学校中に響き渡った
◇◇◇
「じゃあ先生、自己紹介をお願いします……」
誰かの発言により登場した時から不機嫌な魔法実技の教師だったが、ケイ先生がなんとか宥め自己紹介へと移る
「あー、今日から1年生の………なんでしたっけ?」
「魔法実技ですよ!」
「あーはいはい魔法実技ね……魔法実技を担当することになりましたスカル・デスギアです……よろしく」
(こんな真面目さのかけらも無いような女が教師?本当に魔法序列16位の元軍人なのか?何かの間違いじゃ……)
クラスの誰もが微妙な雰囲気を醸し出している。中には明らかに不満を顔に出してる者もいる
「おい、お前ら…なんだその反応は?不服か?」
「不服っていうか……先生って本当に魔法序列16位なの?」
エルザがスカルに問う。最初からこのようでは当然の疑問だろう
「あぁ、一応な……私としては教師なんて絶対にやりたく無いんだけど、やむを得ない事情が絡んでるから仕方なくこんな事やってんだよ……特に教える事思いつかないし、今日は自習してて」
その発言にクラスの全員が驚愕した。国立魔法学院はエリート校だ。国に一つしかない故に競争率が高く、さらに設備や人員も最高峰である事で有名な学校だ。その誇り高き学院の教師としてはあまりに相応しくないその態度……
「おい!ふざけてんじゃねぇよ!お前みたいな奴が16位?嘘ついてんじゃねぇよ」
怒るのも無理はない。待ちに待った魔法の最初の授業で自習などと言われたのだ。普通の反応だろう
「お前……名前は?」
スカルはなんでもないような態度のままで怒る男子生徒の名前を聞く
「レッド・ノーデクスだ!」
「………ノーデクスねぇ…クリム少将の息子さん?ライセンスはもう貰ったか?順位は?」
スカルはノーデクスと聞いて、軍人の知り合いであるクリム少将を思い出していた。
そして生徒たちは今朝すでにライセンスを貰った。ここにいる者はほとんどがまだ魔法を使った事がないのでNo.unknownと表示されているが
「14560位……」
「あの人頑張ったな……学生の時点でもう5桁か…よし、実技の授業なんだよな?訓練場行くぞ。ハンデは付けてやるから試合だ」
スカルはクリム少将が案外子供の教育に熱心だと知り、どうでもいいと思っていたと同時に学生の時点でもうすでに5桁の半分を超えていることに驚いていた。まぁそれもどうでもいいかと思いながら訓練場へと向かった行く
(マジか………無口な奴だと思ってたけど、もう魔法序列がある奴だったなんて……しかも5桁…いや、それより重要なのは試合か…なんにしろ16位の戦いが見れるんだ。そもそもあいつが16位かどうか怪しいけど、それも試合で分かるだろ)
カイトは半信半疑の状態でスカルたちを追いかけ、訓練場へ向かった
◇◇◇
「レッド、今使える魔法で1番、位が高いのは?」
「上位魔法だ」
(何が16位だ。親父は1246位だが、こんな女なんかよりも覇気がある。そもそも16位という上位にいながらデータベースに二つ名しか載ってないなんて、情報操作としか思えない。俺が化けの皮を剥がしてやる)
「あー、じゃあ私は初級魔法の【防御】しか使わない。お前は私に一撃でも入れられたら勝ちでいいよ」
「……舐めてんじゃねぇぞ!」
その発言にさらに怒りを覚えたレッドは本気で魔法を発動する。魔法は便利な物だが、使い方を間違えれば人を簡単に殺せる。今のレッドなら人を殺しかねないだろう
「【身体強化】」
生徒たちのほとんどはレッドの動きを完璧に捉えることは出来ないだろう。【身体強化】は中位魔法だ。その名の通り、使用者の身体能力を強化する。人間の出せる速度ではあるだろうが、相当鍛えられたような速度だ。戦い自体に慣れてない生徒ではまともに見ることも難しい
「【衝撃波】」
達人のような動き、速度に発動地点から前方に強力な衝撃を放つ上位魔法が合わさりスカルはなんの抵抗も出来ずに正面からくらってしまう。周囲に砂塵が舞い上がる
「ハッ!やっぱ16位とか嘘じゃねぇか」
レッドは勝利を確信した。【衝撃波】はコンクリートくらいの硬さなら容易に破壊する威力がある。それがモロに入ったのだ。ただでは済まないだろう
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