Traveる

Nowttel

5-8 大魔道士の噂

「それで、城のみんなの様子はどう?」

 穂乃香と王女二人の三人が王国のとあるお店で食事を撮っている最中に、サヨリが天空城の住民の様態をたずねる。

「アツシは……ごめん、お姉ちゃん。まだ意識が戻らなくてはっきりとしたことは……」
「あなたのせいじゃないわ。あなたのおかげで救われた命もある。だからそんなに気を落とさないで」

 サヨリは自分の指揮に戸惑いをもってるハルカを励ます。

「そ、それにアツシだけじゃなくて他のみんなのことも教えてよ」
「え?てっきり私はアツシのことだけ聞いてたのかと」
「私の事……どんなふうに見てるの?」

 正直、ハルカにとってサヨリの印象といえば……悲しいことに、政治をしている姿と街に繰り出している姿、それとアツシとイチャイチャしていることぐらいしかない。

「ちょっとハルカぁぁっ!!」
「へへへっ」

 そんな姉妹のイチャイチャを穂乃香は微笑ましく見ていた。

「ああっもう!!ハルカと話してると話が進まないよ!穂乃香ちゃん、どう?」

 なんとなく話が振られる気がしたので心の中でまとめていたことを言う。

「友恵ちゃんはとりあえず大丈夫そうです。あと一週間もすれば完全に良くなるってアオイちゃんが言ってました。でも、ハルキ君とアツシさんとサアヤさんは……回復の目処が立っていません」

 なかなかに酷い惨状に三人の顔が沈む。

「ですが、亨介君は……大丈夫そうです。記憶が無くなっちゃっただけで、……それ以外は……特に……異常もない……みたいで。そ、それに!ヒナちゃんなんてあんな大怪我だったのにもうピンピンしてて、やっぱり凄いなって」
「因みにお姉ちゃん。穂乃香は亨介との思い出が無くなっちゃって凄く病んでます」
「ちょっと、ハルカちゃん!!」

 少し真剣な目でサヨリが答える。

「……絶望的ね。アオイちゃんでどうしようもないならこの街の医学でもどうにもならなさそうだし……でも、私に何か出来ることがあったらなんでも言ってね。国を上げて支援するよ」
「ありがとうお姉ちゃん」

 なぜだか最後のサヨリの言葉にハルカは少し安心してしまった。

「はぁぁ……穂乃香が暴走せずに魔法が使えたら、万事解決なんだけどなぁ……」

 ハルカがそんなことを軽くつぶやく。確かに穂乃香の魔法には癒しの魔力が込められていた。

「え?どういうこと?」

 その時いなかったサヨリが尋ねる。

「え?穂乃香の魔法の属性が……なんか、回復魔法っぽくてさ。それさえ使えばみんな回復出来るんじゃないかなってね……ないよなぁそんな都合のいい話」

 サヨリは想像で話す。

「魔法を使うと亨介君のように記憶が無くなっちゃうかもしれないから……?」

 それもあるけど、と付け足してハルカは続ける。

「今度は記憶喪失だけで済むとは限らない。もしかしたらそれ以上のことが起こるかもしれない」
「それに記憶喪失を唯一治せる穂乃香ちゃんが記憶喪失になっちゃったら今度こそ本当にどうしようも無くなっちゃっうもんね」

 結局駄目か、とばかりに三人が俯く。しかし、サヨリは言う。

「でも、逆に言えば穂乃香ちゃんが暴走せずに魔法を試行出来れば全てが丸く収まるってことだよね」
「そうだね。でもそんな上手い話あるわけないよなぁ……」

 諦めかけたハルカを遮るかのようにサヨリが呟く。

「師匠なら……」
「えっ……?」

 サヨリの言葉にハルカと穂乃香は疑問の顔を浮かべる。

「私に魔法を教えてくれた師匠なら……何かいい方法を知っているかも……」

 穂乃香とハルカの疑問は驚きに変わる。

「その方は!どこにいるんですか!?」

 食いつくように穂乃香が立ち上がりサヨリに問い詰める。

「どこって言われても難しいけど……あの人ならこと魔法についての知識量、技量は桁を外れてるから。一度相談してみるのもいいかもしれないわね」

 サヨリの師匠。特にそれといった素質があった訳でもないサヨリを、一国の兵士が束になっても勝てない程に成長させた人物。はっきり言って期待値は高い。

「そのお姉ちゃんの師匠を探すのがこれからの目標かぁ……まずは少しでも情報を集めないとね」

 やる気になったハルカは早速今後の目標を次々考える。しかしサヨリが申し訳なくこう言った。

「大丈夫。私が先にアポ取っておいてあげるから」
「繋がりまだあったんかいっ!!」




 ということで城下町の散策から帰ったハルカと穂乃香は天空城にいた。とりあえず重症のアツシ達は皆サヨリに城直属の病院に預かってもらうことにした。

「さぁ!それじゃあ、お姉ちゃんの魔法の先生の所へ行きましょうか!!」

 とりあえず動けるメンツが城のリビングに集まる。ハルカに穂乃香、そしてヒナと友恵。アオイは操縦席にいるのでこの場にはいない。そして、その場には亨介もいた。

「本当に着いてきて大丈夫なの?城でゆっくりしててもいいのに」

 しかし、亨介は否定する。

「いえ、皆さんが僕のために頑張ってくださっているのに……僕が何もしないなんてそんなことできません!」

 セリフに特に問題がある訳では無いが、今までと一人称が変わると違和感を感じる。正直キモイとその場の全員が思った。

「そ。なら、まぁいいっか」

 ハルカが適当に了承する。

「それで?どうやってその人……てか名前も分かってねぇのか?どうやってその人の所に行くんだ?」

 アオイが最もなことを言ってくる。

「その人の名前はマイ先生って言うらしいわ。そして、会う方法はコツがいるらしくてさ」

 ハルカはサヨリから聞いたその方法を皆に話す。

「はぁ?!気絶したまま川下りだぁ?」

 全員の目が凍りつく。

「なんでもその人が作り出した世界にいるらしくてね。゛川に流されているといつの間にか着いている場所゛って言われてるらしいわ」
「じゃあ!俺様たちゃこれから……」
「大丈夫よ。アポは取ってくれてるからこの城ごと川に流せばたどり着けるようにしてくれてるらしいわ」

 あんまりにもあんまりなので皆、お、おう……という顔をする。

「とりあえず川に浮いてればいいんだな。近くの川だと……モノホシ川か。よし、じゃあ出発するぞ」

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