Traveる
4-17 傷跡
何はともあれ、戦いは終わった。ハルカは享介と穂乃香、友恵を城に帰し、自分のやることを全うする。まず、国民にサヨリが操られていたという事実を知らせ、犯人はハヤトだと宣言した。そして裏に異世界人の陰謀があったこと、でも今回この事件を解決するのに他の異世界人が助けてくれたので決して異世界人を恨んで欲しくないということも伝えた。これに対しハルカは国民からの反感意見がどんどん来ると思っていたが、あまりそういうことも無かった。国民もなにかおかしなことになっていると心のどこかで思っていたらしい。演説が終わり、王国の城に戻ると、沢山の兵士に謝られた。
「ハルカ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!疑ってすみませんでしたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「どうか哀れな我々を許してください!!!!!!!!」
なんとなくこうなるだろうな、とは思っていたが思ったよりめんどくさい。
「いや別にそこまで責めてないから……」
その後、いろいろな雑務を終わらせてから、天空の方の城へと戻る。
「アオイ、状況は?」
看病等は全てアオイが引き受けていた。王国奪還を果たしたのでもう操縦室に閉じこもることも無いからだ。
「こりゃひでぇな。俺様もお手上げだ」
城の一室をまるごと病室に変えて怪我人を介護していたが、まともに動けるのはアオイと穂乃香だけだった。これではとても手が回らない。
「とりあえず一応ハルキは回復の方向へ向かっている。サヨリもこのままいけば一週間も経てばいつも通りだろう。友恵の怪我もほかの奴らと比べれば大分マシだ」
だが、と付け足してアオイは告げる。
「ヒナとアツシは相当やべぇな。ヒナに至っては氷が生えていた所の皮膚が全て破れてしまっている。そんでもって血が圧倒的に足りない。かなり深刻な状況だ」
ハルカは、ぼろぼろにやられてしまったなと頭を抱え込む。
「私の判断……正しかったのかな」
完璧に勝つことはもう少し時間を置けばできる事だった。
「……そんな事ねぇよ。それで助かった命もある。穂乃香だけでなく、サヨリもだ」
「お姉ちゃん?」
「あぁ。彼女は魔素の災薬に侵されていた。もう少し突撃が遅ければこうも上手く事は進まなかっただろう。結果論だけどな」
「サアヤさんはどう?」
「駄目だ。薬の後遺症がでかすぎる。それに彼女は薬に抗いすぎた。もう体は死んでいると言っても過言ではない」
ハルカはその現実に辛い顔をする。
「それから、ハヤトだが……。一応処置は施しているが、まぁ助からないと見ていい。体の大部分が失われちゃどうしようもない」
分かってはいたがやはりハヤトはもうだめだった。あんなやつだったが、ハルカにとっては弟だったし、一緒に魔法の特訓をした中なので悲しいことには変わりない。
「アオイちゃん!氷持ってきたよ!!」
と、そこにバケツいっぱいの氷を持ってきた穂乃香がたどり着く。
「よし、助かった。ありがとな、お前も少し休め」
「でも……」
「お前もこの戦いで疲れてるんだ。あまり無理すんな」
「……そうですね。分かりました」
納得したのか部屋を出ていく。
「穂乃香はどう?」
「少し張り切りすぎだな。恐らく、今回の戦いが起こったのを自分のせいだと思い込んでるってとこか」
「……そう、それじゃあ……享介は?」
ハルカはここが一番心配だった。
「享介なら今は自室で寝ている。特に体への外傷は少ない。殴られた跡くらいだ。だが、あいつは今記憶喪失ってやつになってやがるな」
なんとなくそんな気はしたがやはりそうだった。
「健忘症候群ってとこか。色々話しかけてみたら分かったんだが、ある程度の意味記憶は大丈夫みたいだ。だが、エピソード記憶に関しては一切の救いようがない。脳の一部が完全に焼ききれている。治療魔法……それも超高度なものでなければ絶対に治ることは無いだろう」
「そんな……一体何故?」
ふむ、と少し考えてからアオイは告げる。
「恐らく異世界人でありながら魔法を使ったから、だろうな。あくまで俺様の推測に過ぎないがな」
「魔法?」
「穂乃香の話を聞く限りこいつと対峙したやつは«想いの力»が享介に魔法を使わせたと言っていたらしい」
なるほど、とハルカが頷く。
「確かに俺様たちにとっても魔法はイメージが大事だ」
「そうよ。それが上手く掴めないから私はずっと他の応用が使えないもんね」
そうそう、とハルカも賛成する。
「そんな自慢げに言うことではないと思うが……。まぁいい、話を続けるぞ。それで調べてみた。どうもこの世界の住人と異世界人では脳の回路が違うらしい」
「脳の回路?」
そうだ、と付け足してアオイは説明を続ける。
「我々こちらの世界の住人は異世界人よりイメージが少なくても魔法が使える。だが、異世界人は魔法という文化がないから、あるいは魔素という存在のない世界に住んでいたためか、我々に比べて魔法を施行するために必要なイメージが数億倍は必要のようだ。それこそ、脳が焼ききれる程のな」
「そんな……」
ということは享介もそれほどのイメージを抱いた、ということだろうか
「恐らく、穂乃香がどうにかなりそうってとこで覚醒したんだろうな。ま、その代償としてこんなことになっちまったけど」
ハルカは考えても無駄だと悟り、思う気持ちを押し殺して前を向く。
「とりあえず、私たちにできることを探す。そして、みんなを助ける術を探しましょう」
「ハルカ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!疑ってすみませんでしたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「どうか哀れな我々を許してください!!!!!!!!」
なんとなくこうなるだろうな、とは思っていたが思ったよりめんどくさい。
「いや別にそこまで責めてないから……」
その後、いろいろな雑務を終わらせてから、天空の方の城へと戻る。
「アオイ、状況は?」
看病等は全てアオイが引き受けていた。王国奪還を果たしたのでもう操縦室に閉じこもることも無いからだ。
「こりゃひでぇな。俺様もお手上げだ」
城の一室をまるごと病室に変えて怪我人を介護していたが、まともに動けるのはアオイと穂乃香だけだった。これではとても手が回らない。
「とりあえず一応ハルキは回復の方向へ向かっている。サヨリもこのままいけば一週間も経てばいつも通りだろう。友恵の怪我もほかの奴らと比べれば大分マシだ」
だが、と付け足してアオイは告げる。
「ヒナとアツシは相当やべぇな。ヒナに至っては氷が生えていた所の皮膚が全て破れてしまっている。そんでもって血が圧倒的に足りない。かなり深刻な状況だ」
ハルカは、ぼろぼろにやられてしまったなと頭を抱え込む。
「私の判断……正しかったのかな」
完璧に勝つことはもう少し時間を置けばできる事だった。
「……そんな事ねぇよ。それで助かった命もある。穂乃香だけでなく、サヨリもだ」
「お姉ちゃん?」
「あぁ。彼女は魔素の災薬に侵されていた。もう少し突撃が遅ければこうも上手く事は進まなかっただろう。結果論だけどな」
「サアヤさんはどう?」
「駄目だ。薬の後遺症がでかすぎる。それに彼女は薬に抗いすぎた。もう体は死んでいると言っても過言ではない」
ハルカはその現実に辛い顔をする。
「それから、ハヤトだが……。一応処置は施しているが、まぁ助からないと見ていい。体の大部分が失われちゃどうしようもない」
分かってはいたがやはりハヤトはもうだめだった。あんなやつだったが、ハルカにとっては弟だったし、一緒に魔法の特訓をした中なので悲しいことには変わりない。
「アオイちゃん!氷持ってきたよ!!」
と、そこにバケツいっぱいの氷を持ってきた穂乃香がたどり着く。
「よし、助かった。ありがとな、お前も少し休め」
「でも……」
「お前もこの戦いで疲れてるんだ。あまり無理すんな」
「……そうですね。分かりました」
納得したのか部屋を出ていく。
「穂乃香はどう?」
「少し張り切りすぎだな。恐らく、今回の戦いが起こったのを自分のせいだと思い込んでるってとこか」
「……そう、それじゃあ……享介は?」
ハルカはここが一番心配だった。
「享介なら今は自室で寝ている。特に体への外傷は少ない。殴られた跡くらいだ。だが、あいつは今記憶喪失ってやつになってやがるな」
なんとなくそんな気はしたがやはりそうだった。
「健忘症候群ってとこか。色々話しかけてみたら分かったんだが、ある程度の意味記憶は大丈夫みたいだ。だが、エピソード記憶に関しては一切の救いようがない。脳の一部が完全に焼ききれている。治療魔法……それも超高度なものでなければ絶対に治ることは無いだろう」
「そんな……一体何故?」
ふむ、と少し考えてからアオイは告げる。
「恐らく異世界人でありながら魔法を使ったから、だろうな。あくまで俺様の推測に過ぎないがな」
「魔法?」
「穂乃香の話を聞く限りこいつと対峙したやつは«想いの力»が享介に魔法を使わせたと言っていたらしい」
なるほど、とハルカが頷く。
「確かに俺様たちにとっても魔法はイメージが大事だ」
「そうよ。それが上手く掴めないから私はずっと他の応用が使えないもんね」
そうそう、とハルカも賛成する。
「そんな自慢げに言うことではないと思うが……。まぁいい、話を続けるぞ。それで調べてみた。どうもこの世界の住人と異世界人では脳の回路が違うらしい」
「脳の回路?」
そうだ、と付け足してアオイは説明を続ける。
「我々こちらの世界の住人は異世界人よりイメージが少なくても魔法が使える。だが、異世界人は魔法という文化がないから、あるいは魔素という存在のない世界に住んでいたためか、我々に比べて魔法を施行するために必要なイメージが数億倍は必要のようだ。それこそ、脳が焼ききれる程のな」
「そんな……」
ということは享介もそれほどのイメージを抱いた、ということだろうか
「恐らく、穂乃香がどうにかなりそうってとこで覚醒したんだろうな。ま、その代償としてこんなことになっちまったけど」
ハルカは考えても無駄だと悟り、思う気持ちを押し殺して前を向く。
「とりあえず、私たちにできることを探す。そして、みんなを助ける術を探しましょう」
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