Traveる
4-14 逆襲
サアヤの腹部をクロスに描いた傷口から真っ赤な血が溢れ、そのまま床に倒れ込む。ヒナもそれにつられ、一緒にたおれる。
「は?なんだそれ……つまんねぇなぁ。もっとどろどろに殺しあってくれりゃあこっちも楽だったのによォ」
サアヤが予想以上にヒナを傷つけずに事を終え、ハヤトは拍子抜けしていた。
「ハヤト……貴方、本当に屑ね。同じ血を分けてるって事が腹立たしく感じるわ」
ハヤトのとても人とは思えない行いにハルカがキレる。
「あ?んだよ。お前なんか殺ろうとおもえばいつでも殺れんだよ。お前は俺に生かされている、それが分かんねぇのか?頼りのアツシ、ヒナを失った今のお前はもう抵抗できる手段はない」
ハルカは周りを軽く見渡す。アツシはなんだかんだ大丈夫そうだ。魔人を倒しきるまではいきそうだ。ヒナはもう完全に戦闘不能だろう。最愛の人を失ってすぐ立ち直ることなど出来るはずがない。
「お前も俺と同じ出来損ないだ!人に助けてもらわないと何も出来ない!!だから俺はこの力をもらった時出来ると思った!姉みたいに何でもなァ!!」
ハルカは黙る。確かに私たちは姉より優れている点は全くといっていいほどない。確かに嫉妬しかけた時もあった。それでも……
「団長は……違うよ……」
そんなことを思っていた時、背後から声が聞こえてきた。とても弱々しい声だった。
「団長は……どんな時でも、みんなのこと……しっかり見て……今、どうすればいいか、必死に、必死に……考えてくれていた」
その声は確かにヒナのものだった。ハルカは恐る恐る振り返る。
「享介だって、穂乃香ちゃん助けるために頑張ってた……、サアヤだって……サアヤだって!周りの人が傷つかないように頑張ってた!!私だって!!強く……なりたくて、必死だった……」
しかし振り返って見たヒナの様子がおかしい。体のあちこちから氷が生えてきており、服の一部を貫通している。このままでは本人が氷像と化しそうな、そんな状態だった。それともう一つ、目が真っ赤に染まっている。
「それなのに……あんたは……何の努力もしてない!他人からもらった力を自分の力と思って振り回してるだけ!!そんな奴に……努力した人達を……馬鹿にしないで」
その目は悲しみに目を潤ませながらも懸命にハヤトを睨んでいた。
(そんな馬鹿な……最愛の人を失って……こんなすぐに立ち直れるはずがない!!それにあの姿は一体?!)
「……最低限の努力もしない奴に、努力した人を羨む資格なんてない!!」
言葉と同時にヒナは飛び出す。
(速いっ!!)
秒とままならない時間でハヤトに詰める。そしてヒナは手に生み出した氷の細剣を振り回す。
この一連の動作を理解する者はいなかった。そして、気づいた時には
ハヤトの左腕は空に飛んでいた。
「!?」
ハヤトは突如消えた左腕の方を見つめ、触ってみる。ない。今の一撃で絶対的位置にいたハヤトは一瞬のうちに崩れ落ちた。
「が、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
痛みに苦しむ。しかし、ヒナはそんな暇さえ与えず、次の攻撃を繰り出そうとする。
「ひっ……くっそおおぉぉ……お前ら揃いも揃って侮辱しやがってぇぇぇぇっ!!」
負けじとハヤトも闇の力を蓄え、全力でヒナにぶつける。
「エクスダークネスレイ!!」
(当たった……!今のをくらえばいくら奴でも……)
しかし、爆風が消えて見えたヒナは五体満足で立っていた。
「そ……んな、馬鹿な……」
言い終わる前に攻撃が襲いかかる。ハヤトはお腹に熱い感触が伝わった。それも、一撃ではない。二度三度、いやもっとだ。
「ぐふぁっ!?」
ヒナは返り血を浴び、目だけでなく所々の氷まで赤く染っていく。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あまりに酷い惨状だった。ハヤトの体はどんどんと崩れていく。肉が裂かれる音がした。骨が削れる音がした。隣で見ているハルカは息を呑む。ハルカとしては確かにこうなるべきことをこの男はしたと、分かっていても止めたくなるほどだった。
薄れる意識の中、ハヤトは思った。これが言う走馬灯のようなものが見えたということだろうか。
(何故、俺はこんな目に会っているんだ……。俺はただ……姉貴に……いいや、姉貴だけでなく皆に、俺だってやれるってことを知って欲しかった。証明したかった……だけなのに……)
(どこで道を間違えたのだろう……)
依然としてヒナの強力な一撃一撃がハヤトを襲う。
(そうだ……あの時からだ……)
「は?なんだそれ……つまんねぇなぁ。もっとどろどろに殺しあってくれりゃあこっちも楽だったのによォ」
サアヤが予想以上にヒナを傷つけずに事を終え、ハヤトは拍子抜けしていた。
「ハヤト……貴方、本当に屑ね。同じ血を分けてるって事が腹立たしく感じるわ」
ハヤトのとても人とは思えない行いにハルカがキレる。
「あ?んだよ。お前なんか殺ろうとおもえばいつでも殺れんだよ。お前は俺に生かされている、それが分かんねぇのか?頼りのアツシ、ヒナを失った今のお前はもう抵抗できる手段はない」
ハルカは周りを軽く見渡す。アツシはなんだかんだ大丈夫そうだ。魔人を倒しきるまではいきそうだ。ヒナはもう完全に戦闘不能だろう。最愛の人を失ってすぐ立ち直ることなど出来るはずがない。
「お前も俺と同じ出来損ないだ!人に助けてもらわないと何も出来ない!!だから俺はこの力をもらった時出来ると思った!姉みたいに何でもなァ!!」
ハルカは黙る。確かに私たちは姉より優れている点は全くといっていいほどない。確かに嫉妬しかけた時もあった。それでも……
「団長は……違うよ……」
そんなことを思っていた時、背後から声が聞こえてきた。とても弱々しい声だった。
「団長は……どんな時でも、みんなのこと……しっかり見て……今、どうすればいいか、必死に、必死に……考えてくれていた」
その声は確かにヒナのものだった。ハルカは恐る恐る振り返る。
「享介だって、穂乃香ちゃん助けるために頑張ってた……、サアヤだって……サアヤだって!周りの人が傷つかないように頑張ってた!!私だって!!強く……なりたくて、必死だった……」
しかし振り返って見たヒナの様子がおかしい。体のあちこちから氷が生えてきており、服の一部を貫通している。このままでは本人が氷像と化しそうな、そんな状態だった。それともう一つ、目が真っ赤に染まっている。
「それなのに……あんたは……何の努力もしてない!他人からもらった力を自分の力と思って振り回してるだけ!!そんな奴に……努力した人達を……馬鹿にしないで」
その目は悲しみに目を潤ませながらも懸命にハヤトを睨んでいた。
(そんな馬鹿な……最愛の人を失って……こんなすぐに立ち直れるはずがない!!それにあの姿は一体?!)
「……最低限の努力もしない奴に、努力した人を羨む資格なんてない!!」
言葉と同時にヒナは飛び出す。
(速いっ!!)
秒とままならない時間でハヤトに詰める。そしてヒナは手に生み出した氷の細剣を振り回す。
この一連の動作を理解する者はいなかった。そして、気づいた時には
ハヤトの左腕は空に飛んでいた。
「!?」
ハヤトは突如消えた左腕の方を見つめ、触ってみる。ない。今の一撃で絶対的位置にいたハヤトは一瞬のうちに崩れ落ちた。
「が、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
痛みに苦しむ。しかし、ヒナはそんな暇さえ与えず、次の攻撃を繰り出そうとする。
「ひっ……くっそおおぉぉ……お前ら揃いも揃って侮辱しやがってぇぇぇぇっ!!」
負けじとハヤトも闇の力を蓄え、全力でヒナにぶつける。
「エクスダークネスレイ!!」
(当たった……!今のをくらえばいくら奴でも……)
しかし、爆風が消えて見えたヒナは五体満足で立っていた。
「そ……んな、馬鹿な……」
言い終わる前に攻撃が襲いかかる。ハヤトはお腹に熱い感触が伝わった。それも、一撃ではない。二度三度、いやもっとだ。
「ぐふぁっ!?」
ヒナは返り血を浴び、目だけでなく所々の氷まで赤く染っていく。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あまりに酷い惨状だった。ハヤトの体はどんどんと崩れていく。肉が裂かれる音がした。骨が削れる音がした。隣で見ているハルカは息を呑む。ハルカとしては確かにこうなるべきことをこの男はしたと、分かっていても止めたくなるほどだった。
薄れる意識の中、ハヤトは思った。これが言う走馬灯のようなものが見えたということだろうか。
(何故、俺はこんな目に会っているんだ……。俺はただ……姉貴に……いいや、姉貴だけでなく皆に、俺だってやれるってことを知って欲しかった。証明したかった……だけなのに……)
(どこで道を間違えたのだろう……)
依然としてヒナの強力な一撃一撃がハヤトを襲う。
(そうだ……あの時からだ……)
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