Traveる

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4-13 悪魔の子

 サアヤ。私はコーキュの街という割と裕福な家庭の多い所に産まれた。そして私は……

 出産と同時に母親の命を奪った。

 噂によれば、私は母親の産道を放電しながら出てきたという。私は産まれてきた時からもう既に最強の力を持っており、いわゆる原石という魔法能力値の極めて高い存在だった。原石にもいろいろな種類があるが、産まれた時からこれ程強大な魔力を持っているのは歴史上類を見ない、まさに異例の存在だった。

 なので周りの人々は私を悪魔の子と呼んだ。

 当然といえば当然のことだろう。この世に産まれてきた時から私は殺人犯だから。その事もあり、そこにいた医者や周りにいたほかの人達、全ての人から恐ろしい存在と批難されてきた。でも、父親だけは私を怖がらなかった。この子は悪くないと必死に自分に言い聞かせ、育ててくれた。しかし、そんな父親でさえ

 私は殺してしまった。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 それは物心が着いてきた時に私が風邪を引いた時だった。体調不良で暴走した私の魔力が世界を襲った。体が楽になって目を覚ますと家は跡形もなく吹っ飛んでいた。周りにパチパチと焦げた音が鳴り響いており、すぐに自分のせいだとわかった。そして、あぁ……終わったなって思った。自分に絶望するとかそんな次元の話ではない。私はこの世界で誰かと関われば、どんなに好意を抱いても、抱かれても殺してしまう。こんな私に生きる価値はあるのか、そう思い自殺を考えた。しかしそんな勇気も出ず、だらだらと時間が立っていく。時間が経てばお腹が空く。もうあの時のように父親に頼ることもできない。

 幼く、無垢な私は決死の覚悟で盗みを働いた。

 そうするしか生きることは出来なかった。たとえ死にたいと思っても、生きたいという傲慢な欲が勝ってしまうのだ。幸い力だけは無駄にあるので、盗むこと自体はそれほど難しいことではなかった。しかし、盗みを働くたび心がどんどん傷んでいくような感覚に見舞われる。それが本当に辛かった。

 それからリカに会うまで私はただの盗賊だった。人から何かを盗むことでしか物を手に入れられない社会不適合者。

 私がそうだったから初めてあった時のヒナが酷く自分に被ったのだろう。屋根の上を飛び渡っている途中、盗みを働くヒナを見つけ幼い頃を思い出す。

「……ごめん……なさい……ごめんなさいっ……!!でもこうするしか」

 ……私も力がなければああなっていたのだろうか。私としてはそっちの方が良かった。早く捕まって死にたいと思ったこともある。だが、その後の盗まれた店側の人が言った言葉に問題があった。

「知るかよ!そうなったのもどーせてめぇがなんかやらかしたら何じゃねぇのかよ!!甘えてんじゃねぇぞゴラァ!!」

 それを見て私はリカに伝える。

「ねぇ、あの子助けましょう」

 リカは急にどうしたの?という不思議な目をしたが、言っても収まらないと悟ったのかすぐに行動に移してくれた。勝負はあっという間に決着がつく。持っていた薔薇を店側の人の首元へ押し付ける。

 そしてトドメを指すとき言ってやった。

「あと、自分の力だけじゃどうにもならない人もいるってこと。ちゃんと知りなさい。分かった?」

 自然と怒りが顔に出ていたのか、店側の人が泡を吹いて倒れてしまった。幼い自分を見ているようでつい感情が高まってしまう。

 そしてその後、ヒナを私とリカで作った薔薇の盗賊団ローズシーフに迎え入れた。ヒナにはこれからの人生を私と同じようには送って欲しくないと思ったからだ。だから、私はそこでありったけの愛情をヒナに注いでやった。そして一緒に笑って、泣いて、戦って、いろいろな事を共有した、とても充実した日々だった。そして何より、ヒナが笑ってくれると昔の私が楽しく笑っていように思えた。




 このことをサアヤは物凄く簡潔にヒナに伝える。

「だ……から、お願い……。私が貴方を……殺してしまったら、私はもう……立ち、直れなくなる……。貴方は私の希望そのものなの……だから、私の分も……生きっ……ぐっ……ああああああっ」
「……っサアヤ!!」

 またもサアヤの体から電撃が流れてくる。しかしヒナはそれをしっかりと受け止め、サアヤの体を離さない。

「お願い……ヒナ」

 しかしそんなことヒナに出来るはずがない。最愛の人を殺すなど自分が死ぬより数億倍辛い。

「……嫌だよ」

 ヒナの目に涙が積もる。今にも溢れだしてしまいそうなほどに揺れていた。

「やっと……やっと、再会出来たのに……また失うなんて……」

 しかし、サアヤはそんなヒナの言葉も無視して言い通す。

「今……貴方が、躊躇えば……私だけじゃない……。貴方の新しい仲間、友達をも、失うのよっ!!」

 その言葉にハッとし、ヒナはハルカとアツシの方を見る。ハルカはもうハヤトにさえ弄ばれている状態だ。今のサアヤに襲われれば瞬きする間もなく首を跳ねられるだろう。アツシも魔人と戦い、力を使い果たすだろう。つまり、この場にサアヤを止められる者はヒナ以外に存在しない。ここで止めなければ奥にいるであろう享介と穂乃香、外で戦っている友恵、城に残っているアオイとハルキ。皆の命が危ない。

「うっ……」

 ヒナは自分の置かれている状況に気づく。私情だけで諦めてしまったら自分だけでなく、みんなも死んでしまう。

「お願い……もう、体が……持たない……。私は貴方を気づつけたくない!!理性を保てる内に……早くっ!!!!うっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

 バリバリバリッと一際大きな電撃が二人を襲った。もう時間はない。サアヤが最後に一つあるものを差し出す。

「ヒナ……これ、覚えてる?」

 差し出した物はオレンジ色の薔薇の花だった。

「……もちろんだよ」
「花にはね……それぞれ、花言葉って言うのがあるの……そして、このオレンジ色の薔薇の意味は【友情】よ……貴方が持っている限り……私は……ずっと隣にいるから……絶対に一人に……し、ない……から……ヒナ……私を……」


  「……殺して」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ヒナが魔法を発動する。それは氷の刃。サアヤに教えて貰って一番最初に出来た技だった気がする。その刃で目を思いっきり瞑りながら無造作に斬り裂いた……

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