Traveる

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4-11 因縁の戦い

 その頃、城の外では友恵の戦いが続いていた。いくら友恵といえどヒヒイロカネを封じられた状態で王国の精鋭をこの人数相手にするのは厳しい。はっきり言って無謀だった。だが、

「なんであんたはこんな芸当ができるのかしら?」

 半ば怒りを含むサヨリの声が聞こえてくる。それもそのはず、あれだけいたはずの兵士が半分以上倒されていたからだ。しかも揃いも揃って誰も殺されていない。

「どうやら……私のことを……甘く見ていたみたいですね。穂乃香のためだったら……私はまだ……戦える」

 しかし友恵の体力も限界が近い。右手は既に言うことを聞かず、足もガクガクと震えており立っているのが限界のように見える。だがまだ安心はできない。

「皆、正直このままではあの子を倒すことが出来ない。どうやらあの子にもあの子なりの信念があるみたいね」

 サヨリは友恵の方を向きながら優しい口調で兵士たちに伝える。そしてこれからの策を兵士に伝えた。

「……っ!?本当に……やるんですか……」

 その作戦に兵士が意外そうな顔を見せる。なにか戸惑ったような顔をしていたが、迷いを振り払ってこちらに数人の兵士が武器を捨てて向かってくる。

(……っ!玉砕覚悟の攻撃か!?……何をしでかしてくるか分からないっ)

 友恵が動けずにいるとその数人の兵士が全方向から突撃してくる。友恵は迷わずに近いものから蹴り飛ばす。しかし全方向からこられると、流石に捌ききれない。兵士の一人が友恵を捕らえる。背後を取られたのだ。息を止めるように首を抑える。

「くっ……」

 友恵もなんとか手足を使って振りほどこうとしたが、疲れからか上手く力が入らない。

「よくやったわ。褒美に一緒に燃やしてくれる!!」

(まさか……この兵士ごと、私を!?)

 周りにはさっきなぎ倒した兵士も沢山転がっている。今サヨリが魔法を使えば全員仲良く丸焦げだろう。

炎の鎮魂歌フレイムレクイエム!!」
「……っ!!」

 サヨリの本気の魔法が放たれる。その仲間を諸共としない攻撃に周りの兵士が戸惑う。

「ははっ。燃えた燃えたっ!!はぁ……いい気味だわ」

 サヨリは勝利を確信していた。先程の魔法による爆煙で死体は確認出来ないが、あれだけ消耗していて耐えることなど不可能と踏んでいたからだ。

「なる……ほどな……」
「……!?」

 しかし、その爆煙から声が聞こえてきた。

「確かに第一王女様は仲間を犠牲にする作戦など絶対にしない……第二王女の言っていた通り……か」

 その声は男のものだった。だが、犠牲にした兵士の声でもない。

「オマエ……ナニモンダ?」

 煙が晴れ、その姿が顕になる。二十歳ほどの青年がいた。そしてその後には沢山の部下が連なっていた。

「かつて、この王国で兵士をしていた……フレア城のホムラだ!!」

 友恵はその言葉により呆気に取られていた兵士を振りほどき、戦いの準備を整える。

「あー。二年前にそんな奴がいたっけなぁ……なんのつもり?」

 面倒くさそうにサヨリが尋ねる。

「話は聞いている。第一王女、貴方が異世界人に操られているってことはな」

 そのホムラの言葉に兵士が動揺する。

「はっ、そんなどこの誰だか分からないあんたの言葉に皆が惑わされるとでも思ってるの?」
「そんなことは分かっている。その事実さえ合っていれば俺のすることは変わらない」

 そうとだけ呟いて、ホムラとその配下の部下が王国の兵士に戦いを挑む。突然の助っ人に少し安堵した友恵だったが、その安心はすぐに消え去った。

「実力が違いすぎる……」

 かのホムラ達も弱い訳では無い。だが、対峙する相手は一国を支える兵士だ。とても適う相手ではない。それは見ただけでもわかる。魔力の差が圧倒的なのだ。しかも、かのホムラという人物は先程友恵をかばった時、攻撃を受け止めきれなかった。とてもではないが無謀だ。

「だ、大丈夫……です!わ、わわわ私が、さぽーと?しますの……で!!」

 そんなことを考えていると、友恵のすぐ隣にふわりと着地するようにもう一人、知らない女の子が現れていた。

「え……?」

 姿はまだ十二歳程とも思えるくらいに幼かった。髪の色は友恵と同じ金髪で、ストレートの友恵に対しこの女の子は二つに結んでいた。友恵は、この女の子をどこがで見たことがあるような感覚に襲われる。しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。

「ええっと……、そのままお伝えしますね。『お前の素性は調べた。お前は私の大切な第一王女を救ってくれ。他の何よりも、お前自身のために』だそうです!!って、ええっ!?わ、私が……えっ?駄目ですか??ええええっでも」

 その女の子は誰かと電話しているような口調で、そう伝えてきた。言われなくても分かっている。

「……最初からそのつもりだったので、大丈夫です」
「は、はわわっ!!……分かりました……!ピンチになったらすぐに言ってくださいね」

 そう言って、その女の子はホムラと呼ばれる青年と共に兵士と対峙し始める。

「はぁ……なに?タイマンなら私に勝てるとでも思ってるのかしら??」

 話に置いてけぼりにされたサヨリが怒り混じりにそう言ってくる。しかし友恵の勝利条件は一概に勝つだけとは言いきれない。倒せればそれに越したことはないが、穂乃香を助ける、その時間さえ稼げれば。……そう思っていた。しかし、先程の女の子の言葉に感化され、友恵は勝つ気満々になっていた。

「……そういえば……貴方、私の魔法の属性って知っていますか?」

 その友恵の一言にサヨリが少し動揺する。

「何を今更……」
「やっぱり知らないようですか。それならまだ私にも勝機はありそうですね」

 サヨリが身構えるように構える。確かに今までヒヒイロカネに頼った武器による攻撃と素手による武術以外で友恵が戦っている姿は見たことがない。

「私の魔法は元々人を傷つけることしかできないものでした。でも……穂乃香や、みんなと過ごして使い用によってはそれ以外にも使えるって思った!!」

 そういって友恵は震える右手を左手で支えながら、両の腕の人差し指をサヨリに向ける。そして、一気に魔力を解き放つ。

(ここで勝って……私は、過去の行いを清算する)

 こんなことで、全ての罪が清算されるとは友恵も思っていない。しかし、友恵にとってサヨリを倒すことは一つのケジメなのだ。痛む体を滾らせ、全力で戦いに挑む。

「っ……!!」

 友恵の合わさった両の差し指から光弾が放たれる。しかしその攻撃はサヨリには当たらない。ギリギリの所をかわされてしまった。しかし、ギリギリで避けたため結果的に一瞬サヨリは、友恵を視界から外すこととなる。友恵はこの一瞬を逃さなかった。背後に回り込み、脳を揺らすため頭部に蹴りを入れようとしていた。

「っ!!空間移動の円舞曲テレポートワルツ!!」

 なんとかギリギリで空間移動魔法を使い、友恵の後ろに回るよう移動した。しかし、それを見越したかのように友恵がこちらに人差し指を向けている。

「!っ……」

 友恵は躊躇わずに打ち放つ。狙うは武器の笛。サヨリも角度的に武器で受け止めるしか身を守る方法はない。

「普通の弾丸程度なら防げる!!」

 しかし、その弾は普通ではなかった。

炸裂の光弾トルネードレイ

 武器が抉られるような衝撃がサヨリを襲う。あまりの激しさに武器を離してしまった。その隙に友恵はサヨリの脳天を押し、そのまま地面に倒す。

「この技は私のトラウマ。初めて人を殺めてしまった禁断の技。あの日この技を使って"誰か”を殺してしまった。どんどん肉を引きちぎり、苦しませながら殺す最悪の技。でも、それでも……今の私なら殺し以外にも使える!!」

 サヨリに覆いかぶさるようにのしかかり、人差し指をサヨリに向ける。

「……あなたの負けです」

 サヨリのすぐ近くで光弾を爆発させ、サヨリの意識を奪った。

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