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4-10 負けられない戦い

「俺は穂乃香ちゃんに救われた……そして、穂乃香ちゃんにきちんとあの時の事を«ありがとう»と伝える。それが俺の穂乃香ちゃんへの想いだっ!!」

 より一層享介の魔法が強くなる。

(そう言えば……享介って名前……あの時の……!?確かにみずきに「あの子、難しい顔してるから少しでも元気な顔にしてあげたいから協力して」って耳打ちした……ような)

 穂乃香はこんな時と分かっていても、ついそっちに気を取られてしまう。

「さぁ……第二ラウンドだ……」

 享介が告げる。それに対して内山は微かに笑っていた。

「は……ははっ……そうだよなァ、そんな簡単に終わっちまったら詰まんねぇよなぁ!?サービス精神旺盛で助かるぜぃ!!こちとら、これまでのテメェらにゃムカつきっ放しだったんだ。殺す前に拳でたっぷりと沈めてやる!!」

 それだけ告げ、享介に向かって殴り掛かる。

「おぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 魔法の力を得た享介の拳が放たれる。それが内山の顔にクリーンヒットした。

「ぐっ……響かねぇぞこのクソ野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 内山も負けじと拳で返す。

「は、魔法の力を得ても所詮はその程度かよ。オラァもっと楽しませてくれよぉぉぉぉ!!」

 内山の拳が何発も享介に直撃する。そしてその反動で享介はまた、吹っ飛ばされる。

「所詮は付け刃。その程度の力で勝てるとでも思ってんのかァ!?」

 しかし、どれだけ痛めつけても享介は立ち上がってくる。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「しつけぇなァ!オゥラッ!!」

 腰の回転もフルに使った重い一撃が直撃する。これには流石の享介もなかなか立てない。

「よォし……今のは効いただろ……」

 しかし、それでも。

「俺は……負けない……負けるわけには……いかないんだっ!!俺は穂乃香ちゃんを!!助けるっ!!!!」

 もう声すら枯れかけた享介が自分を鼓舞して立ち上がり、想いを強める。すると更に魔法の力が強くなっていく。

(駄目……これ以上やったら……体が持たない……あの時みたいになる……)

「享介!!やめて!取り返しのつかないことになる!」

 どんどんと強まる魔法に心配したのか凛が止めにかかる。しかし享介には一切止める気はない。

「凛……お前は離れとけ……お前の体の魔力まで吸い取ってしまいそうだ……」
「……っ!?」

 そう、凛は魔法でできた魔素の集合体のようなものだ。このまま享介に憑依していれば享介の魔法に変換され、消えてしまうだろう。

 享介の体から凛の霊圧が消える。

 そして、なんの心配もなくなった享介に更なるパフがかかる。そして享介自身もどんどんと異様な姿になってゆく。その姿に流石の内山も恐怖する。そして、現れる。

「あ……ああっ!?どうなってんだよ、その背中から生えてる真っ赤な翼はァあああ!?」

 翼というよりも、噴射に近かった。何よりも赤く全てを浄化するかのような、正体不明の噴射の羽。

(こ、この野郎……)

 そして僅かに享介がつぶやく。

「もう、これで全部終わってもいい……」

 その全魔力が右腕に集まる。

「だから……ありったけを!!」

 そして内山の頭蓋骨を思いっきり掴み、全魔力を解き放つ。

「は、はは」

 もはや内山には、手足をダラりと下げて、静かに笑うことしか出来ない。

 そして享介の全魔力が解き放たれた。内山の体が享介の手を離れ、恐るべき速度で城を壊しながら空の彼方へ放り出され、そのまま燃え尽きていった。生死など、わざわざ確認するまでもない。




 享介の戦いは終わった。全力の攻撃を内山に御見舞し、そのまま享介は地面にぶっ倒れた。




 その享介の魔法は他の皆にも伝わった。

城の門の前で戦う友恵と天空城で戦況を見ているアオイはその光を見て。城内にいるハルカ、アツシは城が壊れるような振動を受けて……それぞれが不安にかられていた。

「まさか……享介になにが……」

 しかしハヤトがそれを許さない。

「おいおい。他人の心配とは随分余裕だなァ?」
「ちっ!!」

(どうか……享介、穂乃香……無事でいてっ……)

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