Traveる

Nowttel

4-6 別れ

 二人を逃がしてから数秒後、背後から声が聞こえた。

「あいつらを逃がしたのはいい考えだったな。彼女らではこいつらにかなうはずがない」

 その姿にサアヤは見覚えがあった。

「やっぱりあんただったのね。謎の黒い巨大生物を王国に襲わさせたのは」

 サヨリとハルカの弟である青年、ハヤトだった。彼の後ろには見たことの無いおぞましい生物が三十匹ほどいる。

「あぁ、そうだ。こいつは魔人。魔素の災薬を過剰に取らせた人間の成れの果てだ」

 見ると、ハヤトからも全身からどす黒いオーラを放っている。

「……闇の力ね。そういえば貴方も私と同じ«原石»だったわよね。それも選べるタイプの非常に珍しい人物」

 原石。世界に数人しかいないと言われている魔法のスペシャリスト。魔法の五属性の特殊の中の特殊。その中でも特殊な、生まれてから自分の能力を決められるという異例中の異例、それがハヤトだった。

「だが、僕には素質以外何も無かった。才能もカリスマ性も何もかも姉であるサヨねぇの方が圧倒的に高かった」

「だから、あんたはサヨリにない闇の力を得て自己満足に浸っているわけね」

「皮肉か?はっ、こんな苦しみはお前には分からない。産まれてすぐに最強と謳われたお前には!!お前もサヨねぇと一緒だ!!死ぬまでこき使ってやる!!」

 その言葉にサアヤの何かが切れる。

「ねぇ、私もさ」

 ふらふらと安定しない歩きで、それでも確実にハヤトに近づきながらサアヤは呟く。

「生まれつき持ってていい思い出ないのよね」

 それに、と話を続ける。


「最低限の努力もしねぇ奴が成功した奴を羨んでんじゃねぇよ」

 そう言い放った瞬間、サアヤは首にかけていたネックレスを思いっきり遠くへ投げ飛ばす。すると、辺りに電撃波が走った。ビリビリとサアヤの怒りが遠く遠くまで響く。この電撃の影響で近くの村の住人が全員感電死していたほどだ。

「黙れよ。お前に分かるわけがねぇだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 魔人、ゆうに三十体と魔法を使った全力のサアヤの異次元レベルの戦いが始まった。




 全速力で走った。後ろは振り向かず、ただ前を目指して。もちろんヒナはキョトンとしているだろう。突然サアヤがあんなことを言い出すのだ。不思議でもない。

 そしてサアヤの言う五百メートル地点へとたどり着く。

「ぜぇぜぇぜぇ……ああ……走ったぁ……もうだめ……暫く動けない……」

 ヒナを担いで走っていたリカがその場に倒れ込む。

「ねぇリカ!サアヤはどうしちゃったの?」

 焦るようにヒナが問いかける。

「さぁ?私でも分からないわ。でもわかる範囲で言うならば、これからサアヤは魔法を使うってことくらいかな」

 魔法を使うだけで何故こんなにも離れないといけないのだろうか。

「ヒナ。あなたの前でサアヤが魔法を使った所、見たことある?」
「そう言えば……」

 よく考えてみれば見たことがない。全て剣での攻撃で戦いを終わられせていた。

「私も幼い頃にサアヤに聞いたんだけどね。あの子は«原石»なの。そして魔法の属性は雷」

 聞きなれない言葉にヒナはキョトンとする。

「そして、昔から«原石»と呼ばれる子供が雷属性を持っていたら災厄が起こるっていう噂があるの」
「……っ!?」

 そのリカの言葉にヒナは衝撃を受ける。

「あの子の……サアヤの魔法は強すぎる。その魔法のせいで、彼女は親を死に追いやっている」
「それってどう言う……」
「サアヤが母親の産道を通っている間に魔法が暴走し、母親が亡くなった。そして五年後、熱がでて魔法が暴走し、看病していた父が死亡」
「……なに……それ」

 あまりにいきなりの爆弾発言にヒナは衝撃を受ける。

「あの子はね。常に周りに電気をばらまいているの。そのせいで近くにいる人は彼女に怯え、ある人は体調を崩す。あるアイテムのおかげでその影響はある程度抑えているけど……その性でサアヤは私と貴方以外とは極力近づかないのよ」

 そういえば確かに初めてあった時、言葉では言い表せないような悪寒を感じた。

「だから、本気で魔法を使うとなるとサアヤの半径二百メートルに渡って強大な電撃波が生じるわ。並の兵士……いや、私たちでも黒焦げになりかねない……そんな威力ね」
「だから私たちの前では一切魔法を使わなかったってこと……?」

 何か秘密を隠されてたようで少し腹が立つようなヒナだったが、いってもしょうがない。

「とりあえず今からどうする?」
「まぁ、あの状態になったサアヤならこの世界を二度はぶっ壊せるらしいし、ほっといて後で迎えに行きましょう」

 そう結論づけて二人が近くの街まで歩こうとしたその時、二人は体に違和感を覚える。全身が麻痺したような焼けるような痛みを感じた。どこから攻撃されたのか……それすら分からなかった。

(ま、まさか……サアヤの……電撃波……!?こんな……五百メートル、も離れてるの……に……)

 二人はその場に倒れ込んでしまった。

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