Traveる

Nowttel

4-5 笛の依頼

 これは二年前の話。王国で災厄の起きる二日前。伝説の盗賊の薔薇の盗賊団ローズシーフのメンバーであるサアヤ、リカ、ヒナは第一王女であるサヨリに呼び出されていた。

「ハーメルンの笛……?」

 聞き覚えのない物にサアヤが聞き返す。

「そうですよね。内山さん」

 サヨリは異世界人である内山に確認するように聞く。

「はい、左様でございます。大昔に我々の世界からこの世界へ渡ったとされる伝説の楽器です」
「楽器ねぇ……」

 リカはなんでそんなものを私たちに頼むのか怪しむ。

「この笛はただ美しい音色を奏でるだけではないの。決まった音程を奏でれば様々な魔法を唱えられる霊装にもなるのよ!ね、内山さん!」
「はい。こちらの世界ではその魔法を使い、動物を操ったり子供達を空間移動テレーポートで連れ去ったりする伝説が残っています」

 異世界人の内山は話を振られ、答える。

「それで?王女サマはなぜ急にそんな物が欲しくなったの?」

 相手が王女でも普段と変わらずタメ口で話すヒナ。サヨリもよく分かっているので最初から何も言っていない。

「この前……謎の巨大生物がこの王国を襲った話をしたわよね……」

 実は一度目の黒い巨大生物が現れたとき、薔薇の盗賊団ローズシーフはほかの仕事で遠出をしており、王国を守ることができなかった。

「その説は本当にごめんなさい」
「いいえ。あなた方が謝ることではありません」

 それで、その巨大生物と今回の件の繋がりをリカが聞く。

「私はあの戦いで自分の無力さに気づきました……そして力のみの正義が無力なのと同じく、力なき正義もまた無力というものを感じました……」

 そこでリカが察する。

「まさか王女様自身が戦場に立つつもり!?」

 そんなことは許さないだろう。主にサヨリにベッタリなアツシなんか特に。

「私はあの人を送り出すことしか出来ませんでした。なので今度は一緒に戦いたいっ!やっぱり、上からただ戦場を見ているだけなんて私にはできない……」

 確かに王女であるサヨリは炎の魔法が得意で、サシの勝負なら一般の兵士にも楽々勝てるのだが、相手が謎の巨大生物となれば話は別だ。

「つまり……戦ってるアツシを少しでも手助けしたいってことね?それで転移から何から様々な応用の効くこの笛が欲しいってわけね。はぁ……恋する乙女は大変ねぇ」

 そう呟きながらサアヤが重い腰をゆっくりと上げる。

「分かったわ。その笛、必ず探し出してくるわ!」

 サアヤが力強くそう言った。それに続き、かっこいいの目線をサアヤに向けるヒナと、やれやれといった表情のリカも立ち上がる。

「場所はある程度分かっています。内山さん、詳しい話をよろしくお願いします」
「はい……」

 そう返事をした内山は誰にも見えない角度で静かに微笑んだ。




 そして一行が向かったのは荒野にポツリと空いた一つの小さな洞穴だった。最初は疑いを持っていた三人だが奥へ進むにつれて道は広くなり、出てくる獣もそれは強いものとなっていった。しかし、相手は伝説の薔薇の盗賊団ローズシーフ。サアヤの圧倒的パワー、ヒナの防御力、そしてリカのサポートがあれば勝てないものはいない。いくら敵が強くなろうと全く動じずに奥へ奥へと進んでいく。

 そして頼まれていた品、ハーメルンの笛を見つけることに成功した。最深部の祭壇のような所の宝箱を開けると見つかった。その笛をサアヤが持ってきたカバンに入れ、引き返す。こんな所に長居する理由はない。

……そして。

「はぁ……なんか拍子抜けしちゃったね」

 通の間では世界七強の洞窟とも謳われる洞窟から帰還したにも関わらず、そんなことを言い出すヒナ。強くなりすぎてしまった模様。

「そうね。もっと大変なことになるかと思ったけど。さぁ!サアヤ。これからどうする?」

 大きな目標をささっとクリアしてしまって力が有り余る二人を見て、サアヤは考え込む。

「でも、言っても仕方が無いしねぇ。もう王国に帰ってたらふく褒美を貰いましょ」

 サアヤは妥当な判断をする。無闇に戦う必要は無い。この集団は盗賊であって戦闘狂ではないのだから。

 しかし、そう思いって全員が洞窟から背を向けた時、三人のうちサアヤだけがなにか違和感を感じる。

「……?」
「どうしたの?」

 急に立ち止まるサアヤを心配してヒナが尋ねる。

「……気のせいかしら」

 そうサアヤが呟いたと思ったら彼女がいきなり震え出す。

「ちょっ!サアヤ!?どうしたの?大丈夫?」

 どうやらリカでさえも何が起こったのか分かっていないらしい。ヒナに不安が募る。そしてサアヤがヒナに一輪の花を渡す。

「これ、私の大好きな花、薔薇よ。辛くなったらこれを私だと思って」
「……っなにいって!?」

 そしてリカにも告げる。

「リカ。ヒナを連れてここからすぐに逃げて」
「は?ちょっどういうことよ」

 言ったっきりリカの反論も何も聞かずに話を続ける。

「今から三十秒で五百メートル、方向は南。たどり着けなかったら……」

 そこで皆が息を呑む。

「死を覚悟した方がいい……」

 サアヤは今まで見たことの無いような焦りと怒りを合わせたような顔をする。

「っ……なん」
「お願い!!リカ!!」

 どうやら本当に猶予はないらしい。

「……分かった」

 と、それだけ言葉を残してリカはヒナを担いで全速力で走る。数秒でサアヤから見えないとこらまで行ってしまった。

「ありがと。リカ……」

「Traveる」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く