Traveる

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4-3 対面せし異世界人

 一方その頃、穂乃香は目を覚ましていた。薄暗くて場所はどこか分からないが、事務室と研究所を足したようなそんな所だった。

「こ……ここは」

 起き上がろうとしたが、どうやら腕が縄で軽く縛られているらしく、上手く立てない。

「は、やっと起きたみてぇだな」

 どこからか声がする。大人の男の声だった。その声に反応し、穂乃香が少し驚く。

「……勘違いするな。別に俺はお前をどうこうする気は無い」
「えっ……」

 目の前に三十五歳程の男が現れる。穂乃香としてはどこかで見たことがある気がしたが思い出せない。

「俺は内山、お前と同じ異世界人だ。そして裏でハヤトとかいう王族の三下を上手くこき使って王国をめちゃくちゃにした張本人ってとこか」

 自分のことを内山と名乗った男はペラペラと自分の素性をバラしていく。

「そ、そんなあなたが私になんの用?」
「構えるな……。お前をどうこうする気は無いっつってんだろ。お前だけは助けてやるっつってんだよ」

 その言葉に穂乃香は戸惑いを感じる。

「なんで……?」
「……お前を殺したらうるせぇやつがいるからな。特別にお前は助けてやるよ」
「き、享介君やハルカちゃん達は……」
「あ?生かす価値ねぇから殺すよ?」

 助けると聞いて少し安心したが、やはりこの人は殺すことに躊躇がない。自分自身も生かす価値があるから生かしているのだと。もし穂乃香にそのような価値がなければ迷わず殺していただろう。

(この人の言うことを聞いたら駄目……!私だって……ハルカちゃんやみんなのために頑張りたいっ……!!)

 そう考えてからの穂乃香の行動は早かった。

 穂乃香は口から何かを吐き出す。

「ひーちゃん……私を助けてっ!!」

 すると吐き出した小さな欠片が小型のナイフへと変化し、穂乃香を拘束していた縄を切り裂いた。

「オマエ。なんのつもりだ?」

 穂乃香はそのままナイフを右手に持ち構える。

「う、動かないで……」

 穂乃香が脅すが内山と呼ばれる男は全く動じずに面倒くさそうに聞いてくる。

「それは第一王女の手下の武器だろ?確かヒヒイロカネ。伝説の非金属で持ち主の命令しか受け付けない武器のはず。どうしてお前が……」

 ヒヒイロカネを構えながら穂乃香が言う。

「友恵ちゃんが……もしもの時はこれを使って身を守れって欠片を私が使えるように命令して渡しておいてくれたの。今がその時、あなたを倒せばもう誰も傷つかずに済む!」

 手を震わせながらも穂乃香はナイフを内山に向ける。

「は……はっはっはっなんだよ。平和ボケしたてめぇなんかが人をナイフで刺せるわけねぇだろ」

 それもそうだ。今までそういう場面どころか状況すら見たことの無い穂乃香だ。いくら王国の危機がかかっていてもそう易々とできることではない。そんな穂乃香に内山は少しずつ近づいてみせた。

「ひっ……」

 気圧され、穂乃香が一歩たじろぐ。

「図星だな。そう、お前には無理だ。俺は殺せない。理性がそう訴えかけてるんだろ?」

 ともすれば内山は穂乃香の目の前まで来ている。ナイフを少し振れば当たるくらいにだ。

「……な……なんで……こんなことをするの……?」

 穂乃香の震える手がナイフを落とし、そのまま地面に座り込んでしまう。

「ここまでして……あなたは何がしたいの……?」

 そして、目を潤ませながら尋ねていた。

「これだけの力があれば……もっと皆のためになることだってできるはずなのにっ!!」

 しかし、その言葉は内山には届かない。

「はぁ……つまんねぇなぁ……少しは面白くなると思ったのによォ」
「答えてっ……そして、こんな酷いことはもうやめてっ!!」

 しかしそれだけ言うと内山がこちらに思いっきり近づき、穂乃香の腹部を思いっきり殴る。

「ぐっ……はっ」
「うっせぇな……いくら保護対象っつっても殺さねぇだけで優しくするつもりはねぇんだがなァ!……あまり俺を怒らせんなよ」

 穂乃香は、腹部に感じたこともないような痛みをうけ倒れ込んでしまう。

「ちっガキの分際で調子に乗りやがって……」
「あ、あなたは……何か……この世界で……辛いことがあったの……?」

 痛む腹を抑えながら穂乃香が聞く。内山はとある二人の男女を思い浮かべたが気にするのを辞めた。

「お前には関係ねぇ」
「わ……私でよければ……相談にも乗るし……だから……っ!」

 必死に言葉で訴えかける。暴力で解決しては内山と一緒ということに気がついたからだ。朦朧とする意識の中、それでもなんとか説得しようと話しかけ続ける。

「オマエ……中々しつこいな。気乗りはしねぇがもう一発殴っとくか」

 そう呟き、内山はもう一度拳を振りかぶる。しかし大きな扉を開く音がそれを遮る。その扉から差し込む光が穂乃香には希望のように見えた。

「あァ?なんだおめぇ……予定よりはえぇじゃねぇか」

 内山がそうつぶやく先に人影があった。
それはこの二人と同じ異世界人である、享介だった。

「お前……火神さんに何をしたっ!!」

 享介は殺気むき出しで穂乃香に向かって拳を振りかぶる内山に問いかける。

「あ?ウザかったから数発殴っただけだが?はっ、心配すんな……殺す気はねぇからよぉ」

 しかし内山の応答の態度とは裏腹に享介はブチ切れていた。

「殴った……?なんで……」
「ウザかったからっつってんだろ。何回も言わせんな」

 そんなふうに適当に返事をする。

「お前、お前っ!!」

 そこで享介はハルカから貰った力のポーションを服用し、内山に向かって殴り掛かる。

「……っ!!絶っっっっっ対許さねぇぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

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