Traveる

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3-11 穂乃香の思い

 食料を探すことになった一行はそれぞれ別行動をしていた。

「この辺りのお魚って食べれるのかな……」

 そんな不安を持ちつつも、穂乃香は海辺の岩場まで来ていた。その辺にあった木の棒に蔦をうまく使って釣竿を作り、釣りをしようと試みていた。ちなみに餌はその辺の木の実で代用している。

「お前も釣りか?」

 そんなことを考えていると横から話しかけられる。

「ハルキ君も?」
「まぁな。動かなくて済むし栄養価も高いし」

 言ってるだけあり、もう既に数匹釣り上げている。とても脂がのっていて美味しそうだ。

「ほらよ」

 ハルキがこちらに何か渡してくる。

「お前も釣りするんだろ。この入れ食いの実ホイホイフルーツを使えよ。これさえあれば多少下手でも充分取れるから」
「あ……ありがとう」

 ハルキの近くに座って穂乃香も釣りを開始する。

「……それにしても珍しいな……。お前が他の奴らと絡まずに一人でいるなんて」

 ハルキが聞いたが、穂乃香はどこか遠いところを見ている。

「なぁ。肝試しの時になんかあったのか?」

 しかしその一言で穂乃香が我に返る。

「ええっ!?べ……別に……そんな、なにもな……かったけど……」
「あったんだな……」

 わかりやすいなとハルキは微笑む。

「なんだ?ま、俺でよけりゃ相談に乗るけど……」

 小っ恥ずかしそうにハルキが言う。

「……実は……」

 穂乃香はお化けがどうこうということを伏せて、昨日の肝試しの時の出来事を話した。

「なるほどな。享介はお前のことが好きだと。まぁ見てりゃそれくらい普通に分かるけどなぁ。てかお前も何となくそんな気はしてたんじゃないか?」

 なんか普通すぎて寧ろつまらないと言った表情で見てくる。

「でも、私と享介君は……これまでそんなに関わったことも無かったし……そんな要素……ないと思うの」

 そういえばハルカから聞いた話だと一目惚れが嫌いとか言ってたな。

「純粋に可愛かったからとかじゃないのか?貧乳だし」

 まだお子様のハルキには好きになるということがあまり分かっていなく、そんなことしか言えない。

「それは多分ないの。享介君の周りには亜沙花乃さんっていう街でも有名になるくらい可愛い子がいたから。私はてっきりその人と付き合ってるのかと思ってたくらいだし」
「はぁ。なるほど」

 それだけ言ってお互いに黙り込んでしまう。お互いあまり喋る仲でないのが原因か。そんな沈黙の中、ハルキが一匹の魚を釣る。

「ま、あいつにもなんかあったんだろ。あんだけお前のこと思ってんだ。生半可な気持ちじゃねぇって」

 そういってハルキは立ち上がり魚を針から取る。

「そう……かな。そうだと……いいな」

 そんなたわいの無い会話を続けていたが、ここでハルキの様子が変わる。

「どうしたの?」

 聞き返すと物凄く真剣な表情で言う。

「なにか……来る」

 それだけ言ってハルキは魔法を唱える体制に入る。

「ガキ。やめておけ。お前に用はない」

 その言葉は二人の前から聞こえた。

「……そこの異世界人。お前を拉致しろとの命令が出た。何をするつもりか分からないが大人しくついてきてもらうぞ」

 その人物はハルキには見覚えがあった。

「お前……王国の……団長の弟だな……」

 そのハルキの言葉に穂乃香が驚愕する。ハルカの弟、ハヤト。王国を滅茶苦茶にした張本人であり、恐らくこの事件の黒幕だ。

「そんなお前がこいつに何の用だ?」
「いちいちお前ごとき雑兵に話すことではない。失せろ」

 いうと、ハヤトは三体の黒い巨大な化け物を召喚する。これも昔見たことがあった。数年前、アツシが討伐した王国を危機へと導いた謎の巨大生物。それが三体……

「……何もんなんだ……こいつ」

 勝てるわけがないと踏んだハルキは全魔力を腕に込める。

「お前ごときに何が出来る。やれ」

 ハヤトの命令で巨大生物の腕の一体が神速の攻撃を放つ。しかしその前にハルキの魔法が解き放たれた。瞬間、大きな爆発が起きる。

「うわっ……」

 しかしハルキの魔法は巨大生物に放たれたものでは無い。それよりもっと上空空高くへと魔法を放っていた。そのせいで、ハルキは獣の攻撃をもろに食らってしまった。

「……!?ハルキ君!!」

 穂乃香が慌てて近づく。見ると、爪で引っ掻かれ、血にまみれた痛々しい大きな傷が上半身に出来ていた。

「……!?」
「邪魔者は排除した。もうお前を助ける奴はいない。大人しく拘束されろ」




 そのころほかの場所で食料探しをしていたヒナとアツシがハルキの魔法を確認していた。いや、それ以前から何かしら大変なことになっているだろうという気はしていた。アツシはこの感覚をよく覚えている。過去に王国を危機に追いやった黒い巨大生物、あの化け物が現れた時の感覚と同じだ。

「アツシ!あそこよ!」

 森を抜けるところでヒナが叫ぶ。

「遅かったな。反逆の実力者たちよ」

 その声ははるか頭上から聞こえてくる。

「ハヤト……っ!お前……っ」

 見るとハヤトは腕に穂乃香を抱えている。

「あんた。穂乃香ちゃんに何するつもり?場合によっちゃ殺すだけじゃ許さないけど」

 ヒナが怒りをあらわにして問いかける。しかしそれをハヤトは余裕の表情で見下す。

「俺を殺す?はっはっはっそれは完全に王国に反逆したと見なされるぜ?お前のお仲間のようになっ!」

 その言葉でヒナの怒りの沸点を大幅に超えた。

「やめとけヒナ。状況が悪すぎる」

 このままでは相手の思うつぼだと思ったアツシが止めにかかる。

「……ちっ」
「はっはっ。話がわかるじゃねぇか。とりあえず今回の命令はこいつの回収だけだから特別に見逃してやるよ。まぁこいつがどうなるか知ったこっちゃねぇけどな。拘束やれて犯されて奴隷にでもされるんじゃねぇか!?はっははははははははははははははっ!!」

 そういってハヤトは闇に消えていった。その場の緊張感が一気に緩む。

「おい、ハルキ!大丈夫か!?」

 安全を確認してからアツシがハルキの安否を確認する。

「……とりあえず息はある。だが、このままでは……」

 ハルキの傷は相当ひどいものだった。爪のようなもので強引に皮膚を破られ、骨を傷つけられた跡だ。

「とりあえず止血だ。布は俺の服を使う。お前は……」
「いや、全て俺様がやろう」

 アツシがそこまで言いかけると一人の少女が言葉を遮った。

「あ……アオイちゃん!」
「後は任せろ。他の奴らも城に転移させてある。お前らも早く行くぞ」

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